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事務所通信2012年6月

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2012年6月号 『あまり知られていない印紙税

 税務に関して、以前からいくつか疑問に思っていることがあるのですが、そのうちの1つが印紙税です。
 そもそも必要なのかという疑問に加え、先日、ダイエーが税務調査で印紙税に関して多額の追徴課税を受けていましたので、今回は、『あまり知られていない印紙税』について書きたいと思います。

1.印紙税とは?
 皆さんのイメージする印紙税とはどのようなものでしょうか?
 おそらく、何かを買ったり、食べたりした時の領収書に貼られている印紙をイメージする方が多いのではないでしょうか。
 印紙税は、「契約書」「手形」「領収書」など、「印紙税額一覧表」に掲げる文書に対して課される税金です。印紙税は、これらの文書を作成した人が、定められた金額の収入印紙を文書にはり付け、これに消印して納付します。
 一方、その納付すべき印紙税を課税文書の作成の時までに納付しなかった場合には、当初に納付すべき印紙税の額の3倍に相当する過怠税が徴収されることになります。
 ただし、調査を受ける前に自主的に不納付を申し出たときは1.1倍に軽減されます。
 また、「はり付けた」印紙を所定の方法によって消印しなかった場合には、消印されていない印紙の額面に相当する金額の過怠税が徴収されることになります。
 なお、過怠税は、その全額が法人税の損金や所得税の必要経費には算入されません。

2.ダイエーの税務調査
 ダイエーが、大阪国税局の税務調査を受け、2011年9月までの3年間で、計約15万枚分の印紙税約3,000万円の納付漏れを指摘されたようです。
 自転車修理の請負契約の伝票などに印紙を貼っておらず。追徴された過怠税は約3,300万円とみられ、同社は今年2月に全額納付したようです。
 請負に関する契約書の場合、記載された契約金額が1万円以上の場合、印紙を貼る必要があります。例えば、1万円以上100万円以下の場合、200円となります。
 一方、契約金額の記載がない場合、200円印紙を貼る必要があります。
 この件について詳細は分かりませんが、おそらく自転車の修理代金はほとんどが1万円以下であると推測されます。そうであれば、金額を記載しておけば、印紙を貼る必要はありません。
 ダイエーのミスと言われればそれまでかもしれませんが、金額を書いたか書かなかったかで印紙税の金額が変わってくるということ自体おかしいように感じます。

3.印紙税の不平等さ
 印紙税は文書に対して課税されるため、一般的に、電子メールやFAXなどの電子データで送付された電子的契約書に対しては課税されないとされています。
 この点も、文書と電子データで印紙税がかかったり、かからなかったりするのもおかしいように感じます。
 経団連も印紙税廃止を提言しています。

4.最後に
 皆さんは、印紙税のことをあまりご存じでなかったのではないでしょうか。
 金額を書くかどうか、文書か電子データかなどで税額が異なることに対して違和感を感じませんか。

2012年6月11日 國村 年

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事務所通信2012年5月

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2012年5月号 『農地の評価』

 私は香川県に住んでいますが、地方にお住まい場合、農地を所有されている方も多いかと思います。
 固定資産税評価額が低いため、相続税もかからないだろうと考えている方もおられますが、想像以上に相続時における評価額が高くなることがあります。
 そこで、今回は、『農地の評価』について書きたいと思います。

1.農地の評価
 農地については、農地法などにより宅地への転用が制限されており、また、都市計画などにより地価事情も異なるので、これらを考慮し、農地の価額は以下の4種類に区分して評価することになります。

  • 純農地
  • 中間農地
  • 市街地周辺農地
  • 市街地農地

 これは、国税庁の公表している評価倍率表で、どこの地域にあるかを見れば、どれに該当するのかを把握できます。

2.純農地及び中間農地の評価
 純農地及び中間農地の評価は、倍率方式によって評価します。
 倍率方式とは、その農地の固定資産税評価額に、国税局長が定める一定の倍率を乗じて評価する方法をいいます。
 例えば、1.1となっていれば、固定資産税評価額に1.1を乗じたものとなります。

3.市街地周辺農地の評価
 市街地周辺農地の評価は、その農地が4.の市街地農地であるとした場合の価額の80%に相当する金額によって評価します。

4.市街地農地の評価
 市街地農地の評価は、宅地比準方式または倍率方式により評価します。
 宅地比準方式とは、その農地が宅地であるとした場合の価額からその農地を宅地に転用する場合にかかる造成費に相当する金額を控除した金額により評価する方法をいいます。
 これを算式で示すと次のとおりです。  

(その農地が宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額-1㎡当たりの造成費の金額)

 例えば、前者が30,000円、後者が1,000円ですと、29,000円になります。
 上記算式の「その農地が宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額」は、具体的には、路線価方式により評価する地域の場合にはその路線価により、また、倍率地域の場合には評価しようとする農地に最も近接し、かつ、道路からの位置や形状等が最も類似する宅地の評価額(宅地としての固定資産税評価額×宅地としての評価倍率)を基として計算することになります。
 農地としてではなく、宅地としての固定資産税評価額ですので、ご留意下さい。
 また、「1㎡当たりの造成費の金額」は、整地、土盛りまたは土止めに要する費用の額がおおむね同一と認められる地域ごとに、国税局長が定めています。宅地造成費の金額は、国税庁ホームページで閲覧することができます。

5.最後に
 農地は、相続時には、必ずしも固定資産税評価額によって評価するわけではありません。
 相続時にびっくりすることがないように、一度相続税の試算をしてみてはいかがですか?

2012年5月18日 國村 年

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事務所通信2012年4月

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2012年4月号 『事業承継の必要性』

 事業承継は必要だと感じて入るものの、まだ早いとか、具体的にどうしたらいいか分からないという方が多いかと思います。
 しかしながら、会社にとっては相続のようなものであり、避けては通れないものです。
 そこで、今回は、『事業承継の必要性』について書きたいと思います。

1.事業承継とは?
 事業承継とは、文字どおり、企業の現経営者が後継者に事業を承継させることです。

 事業承継の目的には、事業を継続することと、オーナーの財産を守ることがあります。

 事業承継の方法には、以下の4つがあります。

  • 親族への承継
  • 親族以外の役員・従業員・外部から招いた経営者への承継、
  • M&A
  • 廃業

2.事業承継の現状
 2011年3月に中小企業基盤整備機構が公表した『事業承継実態調査報告書』によると、事業承継をどう考えているかについては、約40%が親族への承継、役員・従業員への承継が約14%、明確に決まっていないが約29%、廃業が約8%となっています。

 また、現在、後継者が決まっているかどうかについては、決まっているが約30%、予定者がいるが約22%、決まっていないが約47%となっています。
 
 この報告書を読むと、事業承継は必要だと感じて入るものの、まだ早いとか、具体的にどうしたらいいか分からないという方が多いのではないかと推測されます。

3.事業承継の対策
 事業承継の対策には、経営承継対策と資産承継対策とがあります。

 経営承継対策は、事業を継続させるためのものです。これには、以下のようなことが重要となってきます。

  • 後継者の誰にするのか
  • 後継者をどうやって育てるのか
  • 後継者をそうやって支援していくのか

 資産承継対策は、オーナーの財産を守るためのものです。これには、以下のようなことが重要となってきます。

  • 財産をどう分けるか
  • 納税資金をどうやって準備するか
  • 相続税をどうやって引き下げるか

 事業承継には、以下の3つのリスクが伴います。

  • 事業を継続できるか
  • 納税できるか
  • 争族にならないか

 これらのリスクを避けるために、後継者を選定し、事業承継計画に基づいて周りの方にバックアップしてもらいながら後継者を育成していく必要があります。
 また、遺言書を作成したり、財産を分けやすいものや換金性の高いものに組み替えたり、生前に贈与を行ったり、自社株の評価額の引き下げを図る必要もあります。

4.最後に
 事業承継は必要だと感じているものの、まだ早いとか、具体的にどうしたらいいか分からないという方が多いかと思います。
 GWで、家族で集まることもあるかと思いますので、一度、事業承継について考えてみてはいかがですか?

2012年4月26日 國村 年

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事務所通信2012年3月

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2012年3月号 『実地棚卸』

 早いもので3月も半分過ぎ、3月決算会社も決算日まであと半月となりました。
 3月決算会社の場合、3月末に実地棚卸を行うと思われます。
 しかしながら、会社によってはそれほど重要視されていません。
 そこで、今回は、『実地棚卸』について書きたいと思います。

1.実地棚卸とは?
 実地棚卸とは、実際の在庫の数量を把握することをいいます。
 実地棚卸は、コントロールシート、棚卸原票、カウント、棚卸集計表、差異分析が非常に重要です。

2.コントロールシート
 コントロールシートとは、棚卸原票の回収など棚卸の作業をコントロールするものです。 会社によって異なりますが、以下のようなものを記載します。

  • 実施日
  • 実施場所
  • エリア
  • 担当者
  • 配布した棚卸原票のNo.及び枚数
  • 回収した棚卸原票のNo.及び枚数

3.棚卸原票
 棚卸原票とは、カウントした数量などを記載する用紙のことです。カウント済みであることを示すものでもあります。
 記載内容は特に決まっていませんが、一般的には、以下のようなものを記載します。

  • 棚卸原票No.
  • 実施日
  • 実施場所
  • エリア
  • 棚番
  • 棚卸担当者
  • 品名コード
  • 品名
  • 数量
  • 単位

4.カウント
 いくら棚卸原票がすべて記入されていたとしても、カウントミス、カウント漏れがあったのでは意味がありません。
 カウントに関する留意点は以下のとおりです。

  • 事前の棚卸除外品との区別
  • 当日は原則として入出庫禁止
  • 2人1組によるカウント
  • 担当者を変えての複数回のカウント
  • カウントのルールの明確化
  • 棚や箱から出してのカウント
  • チャック者の満遍ないテストカウント

5.棚卸集計表
 棚卸集計表とは、品目ごとに数量の集計を行うものです。
 会社によっては単価や在庫金額も記載します。
 会社によって異なり、システム上で集計する会社もありますが、棚卸集計表に記載するのは以下のようなものです。

  • 実施日
  • 実施場所
  • 品名コード
  • 品名
  • 数量
  • 単位

6.差異分析
 差異分析とは、帳簿上の在庫の数量とカウントした在庫の数量を比較して、差異があるものについて原因を分析することです。
 これにより、帳簿上の在庫の数量またはカウントした在庫の数量の間違いなどが発見され、最終的な在庫の数量を確定することになります。
 また、なぜ差異が生じたかが明らかになるため、今後の購買・生産・販売・在庫管理・棚卸などの業務の効率化・適正化に活かすことができます。

7.最後に
 棚卸の精度は決算の数値、税金、生産活動、販売活動に影響を及ぼすため、想像以上に重要な作業です。
 重要性を再認識のうえ、精度の高い棚卸を実施されてみてはいかがですか?

2012年3月14日 國村 年

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事務所通信2012年2月

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2012年2月号 『相続時精算課税』

 2012年3月15日が平成23年度の贈与税の確定申告の期限です。

 贈与に関する課税には、暦年課税と相続時精算課税というものがあり、よく知られた110万円までは贈与税が課されないという暦年課税のほかに、相続時精算課税というものがあり、場合によっては相続税対策として有効なものとなっています。

 そこで、今回は、『相続時精算課税』について書きたいと思います。

1.相続時精算課税とは?
 相続時精算課税とは、特定の贈与者から贈与を受けた財産について、その贈与者から1 年間に贈与を受けた財産(「相続時精算課税適用財産」といいます。)の価額の合計額を基に贈与税額を計算(2,500万円までは税金はかからず、2,500万円を超える額については20%の税率)し、将来その贈与者が亡くなった時にその相続時精算課税適用財産の価額(贈与時の時価)と相続または遺贈を受けた財産の価額(相続時の時価)の合計額を基に計算した相続税額から、既に支払った相続時精算課税適用財産に係る贈与税相当額を控除した金額をもって納付すべき相続税額とする制度です。

 適用対象者は、贈与者は、贈与をした年の1月1日において65歳以上で、かつ、贈与をした時において受贈者の親であること、受贈者は、贈与を受けた年の1月1日において20歳以上で、かつ、贈与を受けた時において贈与者の子である推定相続人であることが必要です。
 なお、推定相続人が亡くなっている場合には20歳以上である孫を含みます。

2.相続時精算課税のメリット

 相続時精算課税制度のメリットには、主なものとして以下のものがあります。

  • 2,500万円までは贈与税がかからない
     贈与時には2,500万円までは税金はかかりませんが、相続時には税金がかかることもありますので、ご留意下さい。
  • 贈与財産からの利益を享受できる
     贈与された財産から得られる利益は贈与された方のものになりますので、例えば、収益物件を贈与することにより、相続時の納税資金を貯めることが可能になります。
  • 財産価値の上昇分を享受できる
     相続税の計算上、相続時精算課税適用財産については、相続時の時価ではなく贈与時の時価で計算されますので、将来的に財産価値が上昇すれば上昇分は相続税がかからないことになります。

3.相続時精算課税のデメリット
 
 相続時精算課税制度のデメリットには、主なものとして以下のものがあります。

  • 財産価値の下落は考慮されない
     メリットの逆ですが、財産価値が下落したとしても相続時には、贈与時の時価で計算されます。
  • 一旦選択すると取り消せない
     相続時精算課税は、ご両親それぞれ適用するかどうか選択できますが、一旦選択すると取り消すことはできません。

4.最後に

 争族を避けるためには早めの相続対策が必要です。
 メリットとデメリットを考慮のうえ、一度検討されてみてはいかがですか?

2012年2月28日 國村 年

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2012年1月号 『所得税の青色申告制度』

 2012年3月15日が、平成23年度の所得税の確定申告の期限です。
 所得税には青色申告制度というものがあり、様々なメリットが用意されています。
 そこで、今回は、『所得税の青色申告制度』について書きたいと思います。

1.青色申告とは?
 日本の所得税は、納税者自らが税法に従って所得金額と税額を正しく計算し納税するという申告納税制度を採っています。
 ここで、一定水準の記帳をし、その記帳に基づいて正しい申告をする人については、所得金額の計算などについて有利な取扱いが受けられるというのが青色申告制度です。
 なお、青色申告できるのは、不動産所得・事業所得・山林所得のある人です。

2.青色申告のメリット
 青色申告のメリットには、主なものとして以下のものがあります。
(1)青色申告特別控除
 不動産所得または事業所得を生ずべき事業者は、原則としてこれらの所得を通じて最高65万円を控除できます。
 また、それ以外の青色申告者については、不動産所得・事業所得及び山林所得を通じて最高10万円を控除できます。
(2)青色事業専従者給与
 青色申告者と生計を一にしている配偶者やその他の親族のうち、年齢が15歳以上で、その青色申告者の事業に専ら従事している人に支払った給与は、事前に提出された届出書に記載された金額の範囲内で専従者の労務の対価として適正な金額であれば、必要経費に算入することができます。
 なお、青色事業専従者として給与の支払を受ける人は、控除対象配偶者や扶養親族にはなれませんのでご留意下さい。
(3)貸倒引当金
 事業所得を生ずべき事業者で、その事業の遂行上生じた売掛金・貸付金などの貸金の貸倒れによる損失の見込額として、年末における貸金の帳簿価額の合計額の5.5%以下の金額を貸倒引当金勘定へ繰り入れたときは、その金額を必要経費として認められます。ただし、金融業の場合は 3.3%です(一括評価)。なお、個別評価も可能です。
(4)純損失の繰越しと繰戻し
 事業所得などに損失がある場合で、損益通算の規定を適用してもなお控除しきれない部分の金額が生じたときは、その損失額を翌年以後3年間にわたって繰り越して、各年分の所得金額から控除できます。
 また、前年も青色申告をしている場合は、純損失の繰越しに代えて、その損失額を生じた年の前年に繰り戻して、前年分の所得税の還付を受けることもできます。

3.青色申告の申請
 新たに青色申告の申請をする人は、原則として、その年の3月15日までに青色申告承認申請書」を納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。
 なお、その年の1月16日以後に新規開業した場合は業務を開始した日から2か月以内となります。

4.最後に
 青色申告は難しいものだと感じられている方も多いかもしれません。
 しかしながら、収入や経費の日々の取引を記帳し、取引関係の書類を保存しておけば可能ですので、メリットを考慮のうえ、検討されてはいかがですか?

2012年1月30日 國村 年

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2011年12月号 『平成24 年度税制改正大綱』

 2011年12 月10 日に『平成24 年度税制改正大綱』が閣議決定されました。
 昨年の『平成23年度税制改正大綱』の目玉と言われていて、継続的に審議されていた、相続税の税率の引上げ、基礎控除の引下げなどは今回入っておらず、予想どおり、小さな改正案にとどまっています。
 今回は、『平成24 年度税制改正大綱』のうち、主なものについて書きたいと思います。

1.所得税関連

  • 給与所得控除の上限設定(H25 年分以後の所得税及びH26 年度分以後の個人住民税について適用)
     給与等の収入金額が1,500 万円を超える場合の給与所得控除額については、245 万円の上限を設定する。
  • 役員退職手当等に係る退職所得の課税方法の見直し(H25 年分以後の所得税、個人住民税は、H25 年1 月1 日以後に支払われるべき退職手当等について適用)
     その年中の退職手当等のうち、退職手当等の支払者の役員等(役員等としての勤続年数が5年以下の者に限る)が当該退職手当等の支払者から役員等の勤続年数に対応するものとして支払を受けるものに係る退職所得の課税方法について、退職所得控除額を控除した残額の1/2とする措置を廃止する。

2.法人税関連

  • 試験研究費の増加額に係る税額控除又は平均売上金額の10%を超える試験研究費に係る税額控除を選択適用できる制度の適用期限(所得税、地方税も同様)
     適用期限を2年延長する。
  • 交際費等の損金不算入制度
     適用期限を2年延長するとともに、中小法人に係る損金算入の特例の適用期限を2年延長する。
  • 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例(所得税についても同様)
     適用期限を2年延長する。

3.資産税関連

  • 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置について、次の措置(平成24 年1月1日以後に贈与により取得する住宅取得等資金に係る贈与税について適用)
    イ 非課税限度額(現行1,000 万円)は次のとおり。
    (A)省エネルギー性・耐震性を備えた良質な住宅用家屋の場合
    (a)H24年中に住宅取得等資金の贈与を受けた者 1,500万円
    (b)H25年中に住宅取得等資金の贈与を受けた者 1,200万円
    (c)H26年中に住宅取得等資金の贈与を受けた者 1,000万円
     なお、東日本大震災により住宅用家屋が滅失等をした者(当該住宅用家屋が原発警戒区域内に所在する者を含む。以下ロまでにおいて「東日本大震災の被災者」という)については、非課税限度額を1,500万円とする。
    (B)上記(A)以外の住宅用家屋の場合
    (a)H24年中に住宅取得等資金の贈与を受けた者 1,000万円
    (b)H25年中に住宅取得等資金の贈与を受けた者 700万円
    (c)H26年中に住宅取得等資金の贈与を受けた者 500万円
     なお、東日本大震災の被災者については、非課税限度額を1,000万円とする。
    ロ 適用対象となる住宅用家屋の床面積については、東日本大震災の被災者を除き、240 ㎡以下とする。
    ハ 適用期限を平成26 年12 月31 日までとする。
  • 相続税の連帯納付義務について、次の場合には連帯納付義務を解除(H24 年4月1日以後に申告期限等が到来する相続税について適用。ただし、同日において滞納となっている相続税についても、上記の改正と同様の扱いとする。)
    イ 申告期限等から5年を経過した場合(ただし、申告期限等から5年を経過した時点で連帯納付義務の履行を求めているものについては、その後も継続して履行を求めることができることとする。)
    ロ 納税義務者が延納又は納税猶予の適用を受けた場合

4.国際税務関連

  • 国外財産調書の提出(平成26 年1月1日以後に提出すべき国外財産調書について適用)
    イ その年の12 月31 日において価額の合計額が5千万円を超える国外に所在する財産(以下「国外財産」といいう)を有する居住者は、当該財産の種類、数量及び価額その他必要な事項を記載した調書(以下「国外財産調書」という)を、翌年3月15 日までに、税務署長に提出しなければならない。
    (注)財産の評価については、原則として「時価」。ただし、「見積価額」とすることもできる。
    ロ 国外財産調書に記載した国外財産については、所得税法の規定にかかわらず、財産債務明細書への内容の記載は要しない。
    (注)この場合、運用上、財産債務明細書の備考に「国外財産調書に記載のとおり」と記載する。

5.最後に
 『平成24 年度税制改正大綱』は小粒な改正にとどまっており、改正案が成立するかどうかも不透明です。
 今後の動向に注目しましょう。

2011年12月28日 國村 年

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2011年11月号 『任意後見制度』

 近年、認知症になられる方も沢山いらっしゃいます。
 そのようなことを考えると、資産家の方などの場合、万が一認知症になってしまうと、ご本人の正確な判断に基づかないまま財産を勝手に処分されてしまったり、遺言書を無理やり書かされてしまうのではないかと心配されることもあるでしょう。
 
 そのようなリスクを回避するためには、『任意後見制度』の利用も選択肢の一つだと思われ、これが今回のテーマです。

1.成年後見制度とは
 認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力の)が不十分な方は、現預金や不動産などの財産を管理したり、身のまわりの世話のために介護などのサービスや施設への入所に関する契約を結んだり、遺産分割の協議をしたりする必要があったりしても、自らこれらをするのが困難なケースがあります。
 また,自分に不利益な契約であっても、正確な判断ができずに契約を結んでしまい、悪徳商法の被害にあう可能性もあります。
 
 このような判断能力の不十分な方を保護し、支援するのが成年後見制度であり、以下の2つがあります。

  • 法定後見制度
  • 任意後見制度

2.任意後見制度とは
 任意後見制度は、将来、判断能力が不十分となった場合に備えて、「誰に」、「どのような支援をしてもらうか」をあらかじめ契約によって決めておくという事前的なものです。
 ちなみに、法定後見制度は事後的なものです。
 
 例えば、認知症となった場合に、誰かにその人の都合の良いような遺言書を書かされたり、勝手に財産を売却するような契約を結ばされたりすることを防ぐことができます。
 
 相続・事業承継の関係の仕事をしていますと、京都の一澤帆布のお家騒動の話しはよく目にします。
 この件は、正確な判断ができない状況で遺言書を書かされたことが原因と言われており、任意後見制度がこの当時あり、用いていれば、お家騒動にならなかったのではないかと思われます。

 手続的には、まず、任意後見人に自分の生活、療養看護や財産管理に関する事務について、代理権を与える契約(任意後見契約)を、公証人の作成する公正証書により結んでおきます。
 なお、任意後見人は身内の方でも、税理士・弁護士などの専門家でも構いません。
 本人の判断能力が低下した場合、本人や配偶者任意後見受任者、四親等以内の親族などが、家庭裁判所に対して任意後見監督人選任の申立てを行います。
 この後、任意後見監督人を家庭裁判所が選任することにより、任意後見の効力が生じます。
 ここから、任意後見人は支援を開始し、任意後見監督人は任意後見人の監督を行うことになります。

3.最後に
 相続・事業承継の失敗により、争族となったり、会社がなくなってしまうことは、皆さまにとっても、皆さまの周りの方々に取っても非常に残念なことです。
 早めの対策を行いましょう。

2011年11月30日 國村 年

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2011年10月号 『内部統制の限界』

 ここ数日、大王製紙の元会長の多額の借入金や、オリンパスの買収時の買収価格・報酬の不透明さが新聞等で取り上げられています。
 ともに、内部統制の限界が露呈した話しです。
 今回は、『内部統制の限界』をテーマに書きたいと思います。

1.『内部統制』とは
 色々定義はありますが、『内部統制』とは、『企業などの組織において、違法行為や不正、ミスやエラーなどが行われることなく、組織が健全かつ効果的・効率的に運営されるように各業務において所定のルールや手続きを定め、それに基づいて管理などを行うこと』をいいます。

2.『内部統制の限界』
 上記の目的を達成するための一連の仕組みを『内部統制システム』といいます。
 当然、会社が仕組みを作ることになりますので、会社の経営者が責任を負って仕組みを作ることになります。
 それゆえ、いくら良いシステムを作ったとしても、経営者が内部統制を無視すると、内部統制が有効に機能しないということになります。
 これが、『内部統制の限界』です。

3.大王製紙
 新聞記事等によりますと、元会長が取締役会等の承認を得ることなく、個人的に子会社から多額の借り入れを行っています。
 多額の貸付けを行う場合、会社法の規定により、取締役会決議が必要となります。
 よって、本来、取締役会決議が必要であり、これにより経営者が勝手に資金を貸し付けたりするのを防ぐことができますが、サラリーマンがオーナーから頼まれると、通常は、おかしいと思っても貸し付けるでしょう。
 また、この取引に気づいた役員等も何ら報告をしなかったということも内部統制が機能していなかったということでしょう。
 これは、明らかに『内部統制の限界』が露呈した1件です。

4.オリンパス
 こちらも新聞記事等によりますと、3社を買収する際に、多額の報酬を支払っていること、1年も経たないうちに多額の減損処理を行なっておりそもそもの買収価額が高すぎたのではなかったと言われています。
 当然、どこかの企業を買収する際には、収先を探したり、財務デューデリジェンスを行ったり、株価算定を行ったりしますが、コストはかかります。
 しかしながら、第三者機関に株価算定をするにしろ、あくまで参考資料に過ぎず、会社が検討を行ったうえで最終的な判断は経営者が行うことになります。第三者機関を使えば良いというものではありません。
 今回の株価算定書を見ると、株価算定を1つの方法でしか行なっておらず、内部統制が機能していたとは思えません。

5.最後に
 数年前から、上場会社は、内部統制報告書というものを毎年提出することになっています。
 この報告書を提出する立場にあった方が、内部統制を無視しているようなこれらの件を目にすることは、公認会計士として寂しい限りです。
 もっと、内部統制の重要性のアナウンスが必要なのでしょうね。

2011年10月31日 國村 年

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2011年9月号 『組織再編成に係る行為計算否認』

 近年、合併などの組織再編は頻繁に行われています。
 
 2001年に導入された組織再編税制に関して、行為計算否認規定により否認されたケースはないと言われていましたが、最近は税務調査が厳しくなってきており、否認されたケースもあるようです。

 今回は、『組織再編成に係る行為計算否認』をテーマに書きたいと思います。

1.『行為計算否認』とは
 『行為計算否認』とは、「租税負担を不当に減少させる結果」となる行為計算が行われた場合、課税庁が現実に行われた行為計算を想定される「通常の行為計算に引き直して課税する」ことをいいます。

2.『組織再編成に係る行為計算否認』
 組織再編成に係る行為計算否認は法人税法132条の2に規定されていますが、税務署長は、合併等に係る法人の法人税につき更正又は決定をする場合において、その法人の行為又は計算で、これを容認した場合に、

  • 合併等により移転する資産及び負債の譲渡に係る利益の額の減少又は損失の額の増加
  • 法人税の額から控除する金額の増加
  • 法人の株式(出資を含む。)の譲渡に係る利益の額の減少又は損失の額の増加
  • みなし配当金額の減少
  • その他事由により法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの

があるとき、否認する可能性があります。

 具体的には、立法時の資料に以下のようなものが挙げられています。

  • 繰越欠損金や含み損のある会社を買収し、それらを利用するために組織再編成を行う。
  • 複数の組織再編成を段階的に組み合わせることにより、課税なしに、実質的な法人の資産譲渡や株主の株式譲渡を行う。
  • 相手先の税額控除枠や各種実績率を利用する目的で、組織再編成を行う。
  • 株式評価損を計上したり、株価を下げるために会社分割等を行う。

3.Y社の事例
 Y社が『組織再編成に係る行為計算否認』規定により否認され、提訴しているようですが、時系列は、以下のとおりです。

H20.12 Y社の社長がA社の副社長に就任
H21.2 Y社がA社を100%子会社化
H21.3 Y社がA社を吸収合併

 買収価格に繰越欠損金の引継ぎによる節税効果が織り込まれていたなどの理由で、ヤフーの社長がA社の副社長に就任したのは、繰越欠損金の引継ぎの要件を満たすための形式的なものに過ぎないと、法人税法132の2を適用し、繰越欠損金の引継ぎを否認したようです。

 副社長に就任してから何もしていなかったなど形式的に副社長になったにすぎないのであれば否認されるべきかもしれませんが、実態はどうだったのでしょうか。

4.最後に
 組織再編については、税理士等を交え、慎重な検討がなされ、税制適格の要件は当然満たしていると考えられます。
 
 しかしながら、個々のスキームは問題ないとしても、スキーム全体で考えると、単なる租税回避スキームにすぎない可能性があります。

 木を見て森を見ずにならないようにしたいものです。

2011年9月29日 國村 年