事務所通信
2026年8月号『残余利益方式(簿価純資産ベース)!』
少し前に、取引相場のない株式の評価について書きましたが、2026年8月20日に国税庁の「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」の第5回会合が開催され、「残余利益方式(簿価純資産ベース)」という方向性が示されました。
そこで今回は、『残余利益方式(簿価純資産ベース)!』について書きたいと思います。
1.残余利益方式(簿価純資産ベース)
残余利益方式は、企業の①保有資産(簿価純資産)と②収益獲得能力から評価額を算出する方式(①+②)とされています。
保有資産(簿価純資産)は、時価ではなく、簿価純資産です。
時価ではなく、売却を前提としない継続企業としての資産価値で、建物・設備等は減価償却後の価額です。
また、時価への洗替不要で簡素な評価で、帳簿の簿価純資産を使用するため、事務負担が軽微されます。
次に、収益獲得能力は、数年分の超過収益(マイナスの場合を含む)です。
数年分の企業の超過収益(=残余利益)を株価へ反映します。
企業の超過収益とは、企業が通常期待される利益を上回る金額(=残余利益)の数年分の現在価値の合計で、過去数年間の平均利益から計算することになります。
ちなみに、数年分が何年分になるかは、まだ決まっていません。
2.株価の計算に必要なもの
株価の計算に必要なものは、a.直前期末の貸借対照表とb.過去数年分の損益計算書等のみとなっています
直前期末の貸借対照表の簿価純資産(準思案合計)、過去数年分の損益計算書の当期純利益を使います。
3.企業収益と株式評価額の水準のイメージ
期待収益率以上の収益率の会社については、簿価純資産価額以上の株式評価額となります。
一方、期待収益率以下または赤字の会社については、簿価純資産価額以下の株式評価額となります。
4.純資産価額方式
現行、いわゆる資産管理会社などについては、原則として純資産価額方式となりますが、原則的評価方式ではなく、「特定の評価会社の株式の評価方式」として位置付けることとされています。
ただし、特定の評価会社の範囲と判定の基準、退職給付引当金等の負債の範囲、評価方法の簡便化、法人が取得した貸付用不動産の評価、法人税額等相当額の控除については、まだ決まっていません。
5.配当還元方式
現行、少数株主などについては、特例的評価方式として、配当還元方式となりますが、特別の例外措置として適用の範囲等を見直した上で存置することとされています。
ただし、適用すべき株主の範囲・基準、適用を受ける株主と適用外の株主における評価額のかい離への対応、固定価格の従業員持株会株式との関係の整理、額面制度が廃止されていることを踏まえて最低配当2.5円とする計算方法をどのように見直すべきかについては、まだ決まっていません。
6.最後に
まだ詳細は決まっていませんが、方向性は示されたので、株価が高くなる場合などは、早めの対応が必要かもしれませんね。
2026年8月31日 國村 年