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事務所通信 アーカイブ - 16ページ目 (17ページ中) - 棚卸、事業承継、M&A・組織再編、贈与・相続などのコンサルティングが中心の國村公認会計士事務所・株式会社Your Partner(香川県高松市木太町)
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事務所通信2013年2月

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2013年2月号 『平成25年度税制改正所得税編~』

 平成25年1月24日に、平成25年度税制改正大綱が公表されました。
 基礎控除額の見直し、税率構造の見直し、相続時精算課税制度の適用要件の見直し、小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の見直し、教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置など相続税・贈与税に関する改正に注目が集まっていますが、所得税にもあまり取り上げられていませんが影響の大きい改正があります。
 そこで、今回は、『平成25年度税制改正~所得税編~』について書きたいと思います。

1.所得税の最高税率の見直し(H27/1~)
 現行の所得税の税率構造に加えて、課税所得4,000万円超について45%の税率が設けられます。

 課税所得金額   現行税率   現行控除額   改正案税率   改正案控除額 
 ~195万円   5%   0円   5%   0円 
 195万円~330万円   10%   97,500円   10%   97,500円 
 330万円~695万円   20%   427,500円   20%   427,500円 
 695万円~900万円   23%   636,000円   23%   636,000円 
 900万円~1,800万円   33%   1,536,000円   33%   1,536,000円 
 1,800万円~4,000万円   40%   2,796,000円   40%   2,796,000円 
 4,000万円~   40%   2,796,000円   45%   4,796,000円 

 課税所得金額が4,000万円超の場合、増税となりますが、この影響を受ける方はごく僅かでしょう。

2.株式等に係る譲渡所得等の分離課税の改組
 株式等に係る譲渡所得等の分離課税について、上場株式等に係る譲渡所得等と非上場株式等に係る譲渡所得等を別々の分離課税制度とした上で、
 イ.特定公社債等及び上場株式等に係る譲渡所得等の分離課税
 ロ.一般公社債等及び非上場株式等に係る譲渡所得等の分離課税
とに改組されます。
 M&Aなどの際に、非上場株式の譲渡益(もしくは譲渡損)が生じた場合には、上場株式の譲渡損(もしくは譲渡益)を作って節税するということが行われてきましたが、封じられるようです。

3.非課税口座(日本版ISA)を開設することができる期間の延長
 非課税口座を開設することができる期間を、現行の平成26年1月1日から平成28年12月31日までを、平成26年1月1日から平成35年12月31日までとします。
 3年間だったのが、10年間になります。

4.上場株式等の配当等及び譲渡所得等の軽減税率の廃止
 上場株式等の配当等及び譲渡所得等に係る10%軽減税率(所得税7%、住民税3%)は、平成25年12月31日をもって廃止されます。
 優遇されていましたが、20%となります。金額は限定されますが、一方で、3.の日本版ISAが設けられます。

5.同族会社が発行した社債の利子でその同族会社の役員等が支払を受けるものの改正
 一般公社債等の利子等については、20%源泉分離課税を維持します。
 ただし、同族会社が発行した社債の利子でその同族会社の役員等が支払を受けるものは、総合課税の対象とします。
 貸付金の利息は雑所得として最高50%の税率、私募債の利息は20%の源泉分離課税であることを利用した節税が行われていましたが、封じられます。

6.住宅借入金等の所得税額の特別控除の適用期限の延長
 住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除について適用期限(平成25年12月31日)を平成29年12月31日まで4年延長するとともに、以下の措置を講じます。
イ.一般の住宅の場合

 居住年   借入限度額   控除率   各年の控除限度額   最大控除額 
 平成26年1月~3月   2千万円   1.0%   20万円   200万円 
 平成26年4月~平成29年12月   4千万円   1.0%   40万円   400万円 

ロ.認定住宅の場合

 居住年   借入限度額   控除率   各年の控除限度額   最大控除額 
 平成26年1月~3月   3千万円   1.0%   30万円   300万円 
 平成26年4月~平成29年12月   5千万円   1.0%   50万円   500万円 

 4年延長され、控除額も大きくなります。

7.相続財産に係る株式をその発行した非上場会社に譲渡した場合のみなし配当課税の特例の適用範囲の拡大(H27/1~)
 相続財産に係る株式をその発行した非上場会社に譲渡した場合のみなし配当課税の特例の適用対象者の範囲に、相続税法等において相続または遺贈により非上場株式を取得したものとみなされる個人を加えます。
 思いもよらず高額となるみなし配当ではなく、20%の税率で済む非上場株式の譲渡所得とされる特例の適用範囲が拡大されるということです。

8.最後に
 新聞や雑誌などでも相続税・贈与税の増税は頻繁に取り上げられていますが、所得税もこっそりと改正されているという感があります。
 特に、2.の上場株式と非上場株式の譲渡益と譲渡損の通算によって節税を図ること、5.の貸付金を私募債に変えることによって所得区分を変え税率差を利用して節税を図ることは、税理士として当然のアドバイスとして行われてきたものです。
 こういった改正が行われたりしますので、税制改正をウォッチし、一度行われた節税対策も定期的に見直す必要がありますね。

2013年2月27日 國村 年

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事務所通信2013年1月

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2013年1月号 『平成25年度税制改正~相続税・贈与税編~』

 平成25年1月24日に、平成25年度税制改正大綱が公表されました。そして、平成25年1月29日に閣議決定されました。
 わが国の経済は、円高・デフレ不況が長引いていますが、これまでのいわば「縮小均衡の分配政策」から、「成長と富の創出の好循環」へと転換させ「強い経済」を取り戻すことに全力で取り組まなければなりません。この断固たる決意のもとに、平成25 年度税制改正においては、従来型の発想にとらわれず、民間投資や雇用を喚起し持続的成長を可能とする成長戦略に基づく、政策税制措置をこれまでになく大胆に講じたようです。
 様々な改正が織り込まれていますが、その中で、相続税・贈与税について興味を持たれている方が多いのではないでしょうか。
 そこで、今回は、『平成25年度税制改正~相続税・贈与税編~』について書きたいと思います。

1.相続税の基礎控除の見直し(H27/1~)

    現 行   改正案 
 定額控除   5,000万円   3,000万円 
 法定相続人比例控除   1,000万円×法定相続人数   600万円×法定相続人数 

 つまり、現行の6割に縮小するため、相続税が課税される方が増加するということです。

2.相続税の税率構造の見直し(H27/1~)

    現行税率   現行控除額   改正案税率   改正案控除額 
 1,000万円以下の金額   10%   ―   10%   ― 
 3,000万円  〃   15%   50万円   15%   50万円 
 5,000万円  〃   20%   200万円   20%   200万円 
 1億円    〃   30%   700万円   30%   700万円 
 2億円    〃   40%   1,700万円   40%   1,700万円 
 3億円    〃   40%   1,700万円   45%   2,700万円 
 6億円    〃   50%   4,700万円   50%   4,200万円 
 6億円超の金額   50%   4,700万円   55%   7,200万円 

 つまり、高額になると増税になるということです。

3.相続時精算課税制度の対象外の贈与財産に係る贈与税の税率構造の見直し(H27/1~)
 以下の2つに分けて適用されます。
 ア.20歳以上の者が直系尊属から贈与を受けた財産
 イ.ア以外の贈与財産

    現  行 
 税 率 
 現  行 
 控除額 
 改正案ア 
 税 率 
 改正案ア 
 控除額 
 改正案イ 
 税 率 
 改正案イ 
 控除額 
 200万円以下の金額   10%   ―   10%   ―   10%   ― 
 300万円〃   15%   10万円   15%   10万円   15%   10万円 
 400万円〃   20%   25万円   15%   10万円   20%   25万円 
 600万円〃   30%   65万円   20%   30万円   30%   65万円 
 1,000万〃   40%   125万円   30%   90万円   40%   125万円 
 1,500万〃   50%   225万円   40%   190万円   45%   175万円 
 3,000万〃   50%   225万円   45%   265万円   50%   250万円 
 4,500万〃   50%   225万円   50%   415万円   55%   400万円 
 4,500万円超の金額    50%   225万円   55%   640万円   55%   400万円 

 つまり、税率が下がるところと上がるところがあるということです。
 分岐点は、アの場合は8,410万円、イの場合は3,610万円となっています。

4.相続時精算課税制度の適用要件の見直し(H27/1~)

  • 受贈者の範囲に、20 歳以上である孫(現行 推定相続人のみ)が追加されます。
  • 贈与者の年齢要件を60 歳以上(現行 65 歳以上)に引き下げます。

 つまり、要件が緩和されるということです。

5.小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の見直し(アとイはH27/1~、ウとエはH26/1~)
 ア.特定居住用宅地等に係る特例の適用対象面積を330 ㎡(現行 240 ㎡)までの部分に拡充します。
 イ.特例の対象として選択する宅地等のすべてが特定事業用等宅地等及び特定居住用宅地等である場合には、それぞれの適用対象面積まで適用可能とします。なお、貸付事業用宅地等を選択する場合における適用対象面積の計算については、現行どおり、調整を行うこととします。
 ウ.一棟の二世帯住宅で構造上区分のあるものについて、被相続人及びその親族が各独立部分に居住していた場合には、その親族が相続または遺贈により取得したその敷地の用に供されていた宅地等のうち、被相続人及びその親族が居住していた部分に対応する部分を特例の対象とします。
 エ.老人ホームに入所したことにより被相続人の居住の用に供されなくなった家屋の敷地の用に供されていた宅地等は、以下の要件が満たされる場合に限り、相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていたものとして特例を適用します。

  • 被相続人に介護が必要なため入所したものであること。
  • 当該家屋が貸付け等の用途に供されていないこと。

 つまり、面積が拡充され、併用が可能になり、一棟の二世帯住宅の被相続人の居住していた部分だけではなくその親族が居住していた部分も対象となり、老人ホームに入所していても一定の要件を満たせば適用できるということです。

6.教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置(H25/4/1~H27/12/31)
 受贈者(30歳未満の者に限る。)の教育資金に充てるためにその直系尊属が金銭等を拠出し、金融機関(信託会社(信託銀行を含む。)、銀行及び金融商品取引業者(第一種金融商品取引業を行う者に限る。)をいう。)に信託等をした場合には、信託受益権の価額または拠出された金銭等の額のうち受贈者1人につき1,500万円(学校等以外の者に支払われる金銭については、500万円を限度とする。)までの金額に相当する部分の価額については、平成25年4月1日から平成27年12月31日までの間に拠出されるものに限り、贈与税を課さないこととします。
 なお、教育資金とは、文部科学大臣が定める以下の金銭をいいます。

  • 学校等に支払われる入学金その他の金銭
  • 学校等以外の者に支払われる金銭のうち一定のもの

 つまり、従来も授業料などの贈与については贈与税は非課税でしたが、一括して贈与しても贈与税が非課税となるということです。

7.最後に
 改正されなかった平成23年度税制改正大綱に取り上げられていたもののうち、今回改正とならなかったものがあります。それは、死亡保険金に係る非課税限度(生計を一にしていた者)です。
 一方、取り上げられていなかったもののうち、今回改正になったものがあります。それは、5. 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の見直しと6. 教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置です。
 税制改正を考慮のうえ、財産等を洗い出したうえ、適用時期を確認し、『争族』とならないような望ましい対応を行うことが必要ですね。

2013年1月30日 國村 年

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事務所通信2012年12月

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2012年12月号 『103万円にこだわる必要はあるのか?』

 皆さんは、『103万円を超えると扶養を外れる。』ということを聞いたことが一度や二度あることでしょう。
 これを超えないように、パートの収入を調整している方も多いことでしょう。
 しかしながら、必ずしも、103万円にこだわる必要はないのです。
 そこで、今回は、『103万円にこだわる必要はあるのか?』について書きたいと思います。

1.103万円ってなぜ半端な金額なのか?
 まず、給与等の収入がある場合、給与所得の計算上、給与等の収入金額に応じて一定の金額を引いてもらえる給与所得控除額というものがあります。この最低額が65万円です。
 また、所得税の計算上、必ず引いてもらえる基礎控除額というものもあります。これが一律38万円です。
 つまり、この2つ(65万円と38万円)を足すと103万円となり、他の所得がなければ、給与等の収入が103万円以下であれば、所得が発生しないことになるのです。

2.130万円の壁
 103万円の壁のほかに、130万円の壁があります。
 給与等の収入が103万円を超えると、配偶者が配偶者控除(一律38万円)を使えなくなりますが、141万円未満であれば、配偶者特別控除というものを使えます。
 配偶者特別控除は、配偶者の所得金額に応じて、一定の金額の所得控除が受けられるものです。
 配偶者特別控除を受けるための要件としては、以下の2つがあります。

  1. 控除を受ける人のその年における合計所得金額が1千万円以下であること
  2. 配偶者が、以下の5つすべてに当てはまること
  • 民法の規定による配偶者であること(内縁関係は該当しない)
  • 納税者と生計を一にしていること
  • 青色申告者の事業専従者としてその年を通じ一度も給与の支払を受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと
  • ほかの人の扶養親族となっていないこと
  • 年間の合計所得金額が38万円超76万円未満であること

 一方、サラリーマンの配偶者の場合、給与等の収入が130万円を超えると、扶養を外れて、社会保険料がかかることになってしまいます。
 しかしながら、社会保険に加入するメリットもあるのです。
 まず、老後の厚生年金が増えます。
 さらに、傷病手当金、出産手当金などももらえます。
 それゆえ、扶養を外れて保険料の負担が増加するのを避けるため労働時間を意図的に抑える方も多いのですが、実際には、保険加入のメリットも考えて判断する必要があるのです。

3.最後に
 世の中にはイメージが先行して、何となくそうしているものの、実際には損をしていることもあります。
 優秀な方が意図的に労働時間を抑えていることが、企業にとってマイナスかもしれませんし、一度、どうするのが有利なのかを検討してみるのも良いかもしれませんね。

2012年12月21日 國村 年

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2012年11月号 『小切手を受け取ったらどうする?』

 皆さんは、『小切手』を受け取ったことがありますか。
 ドラマで好きな金額を書いてくれて構わないと言っているシーンを見たり、海外でトラベラーズチェックを使ったりしたことのある方は多いかもしれません。
 しかしながら、実際に初めて受け取った時は、おそらく、どうしたらよいのか分からないのではないでしょうか。
 そこで、今回は、『小切手を受け取ったらどうする?』について書きたいと思います。

1.小切手とは?
 小切手とは、小切手法に基づき、銀行などの支払場所において、持ち主または名宛人に対し、振出人の預貯金口座から券面に表示された金額の支払いを約束する証券のことです。
 小切手は、以下の記載がないと、効力が生じないことになっています。

  • 小切手であることを示す文字
  • 一定金額の単純な支払委託文句
  • 支払人(金融機関の名称)
  • 支払地(支払人の住所)
  • 振出日
  • 振出地
  • 振出人の署名

2.小切手の種類
 一般的に、以下の2つがあります。
 ①小切手の表面に2本の平行の線が引かれ、その間に、銀行や銀行渡りやBankなどと書かれている小切手(いわゆる一般線引小切手)
 ②線引でない小切手

 ②の線引ではない小切手は、銀行などに持ち込むと誰(例えば、拾った人や盗んだ人)であっても支払われます。
 よって、紛失や盗難を防ぐために、通常は、いったん口座に入金し誰に支払ったかが分かる①の一般線引小切手が用いられます。

3.小切手を受け取ったら?
 線引ではない小切手の場合、銀行などに持ち込めば、すぐに換金できます。
 一般線引小切手の場合、裏面に振出人の署名捺印(いわゆる裏書)をしてもらえれば、小切手に記載された支払場所に持ち込めば、手数料もかからず、すぐに換金できます。
 ただし、この場合には、線引ではない小切手と同様に、紛失や盗難のリスクが生じます。
 裏書のない一般線引小切手の場合、小切手に記載された支払場所以外でも、そこに持ち込めば、口座に入金されます。
 ただし、口座上、残高は増えますが、すぐに引き出せるわけでなく、一般的に2営業日後の午後から引き出しが可能になります。
 また、小切手に記載された支払場所に持ち込んだ場合を除き、手数料がかかります。

4.不渡り
 小切手を銀行などに持ち込んでも振出人の口座に残高がないと、不渡りになります。
 このような場合、当然、口座から引き出すことはできませんので、小切手を受け取ったからといって安心はできないのです。

5.最後に
 小切手も、知識がないと何か問題が生じることがあります。
 経営者の方などは、色々な知識が必要なので、日々勉強が必要ですね。

2012年11月2日 國村 年

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事務所通信2012年10月

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2012年10月号 『税務調査が変わる』

 皆さんは、『税務調査』を受けたことがありますか。
 初めての時は緊張するでしょうし、何度受けても受けたくない人が大半でしょう。
 この『税務調査』が、平成25年1月から変わるのです。
 そこで、今回は、『税務調査が変わる』について書きたいと思います。

1.税務調査とは?
 所得税法人税・相続税を始めとする国税の多くは、納税者自身が申告を行って税額を確定させ、この税額を自ら納付する申告納税制度が採られています。
 しかし、自身で申告する以上、その内容や税額に誤りが生じたり、虚偽の申告により不当に納税を免れられる恐れがあります。
 よって、誤った申告が横行し、納税者間に課税の不公平感が生じないよう、国税庁及びその管轄組織により、納税義務が適正に果たされていないと認められる納税者に対して、その誤りを正すために行われます。

2.税務調査手続きの改正
 今般、改正が行われますが、基本的には、税務調査が従来と比べて大きく変化することはありません。
 改正の概要は、以下のとおりです。
①税務調査手続の明確化(H25.1.1~)
 税務調査手続について、以下のとおり、現行の運用上の取扱いが法令上明確化されました。

  • 税務調査に先立ち、課税庁が原則として事前通知を行います。ただし、課税の公平確保の観点から、一定の場合には事前通知を行いません。これについては、平成24年10月1日から先行実施しています。
  • 課税庁の説明責任を強化する観点から、調査終了時の手続を整備しました。
  • 納税者から提出された物件の預かりの手続のほか、課税庁が帳簿書類その他の物件の「提示」「提出」を求めることができることを法令上明確化しました。

②更正の請求期間の延長等(H23.12.2~)
 納税者が申告税額の減額を求めることができる「更正の請求」の期間が原則1年から5年に延長されました。
 併せて、課税庁による増額更正の期間が原則3年から5年に延長されました。

③処分の理由附記等(H25.1.1~)
 全ての処分(申請に対する拒否処分及び丌利益処分)について理由附記を実施することとされました。
 ただし、現在記帳・帳簿等保存義務が課されていない個人の白色申告者に対する理由附記については、記帳・帳簿等保存義務の拡大と併せて平成26年1月1日以後に行う処分から実施されます。

3.改正のポイント
 改正の目玉は、事前通知と理由附記です。
 今までも8割以上は事前に通知していましたが、裁量に委ねられていたのが、今後は原則として義務になります。
 また、追徴課税(更正処分)の際に、今までは理由が示されませんでしたが、今後は原則として理由が附記されます。

4.最後に
 従来は、業務に差し支えることもありましたし、今後は、不服がある場合も反論がしやすくなると考えられます。
 今までが裁量に委ねられていたのが不思議ですが、納税者権利憲章は成立しなかった一方、事前通知や理由附記が原則義務化されたことは大きな前進ですね。

2012年10月10日 國村 年

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2012年9月号 『家なき子』

 皆さんは、『家なき子』と聞いて、何を思い浮かべますか。
 安達祐実さんや坂口良子さん主演のテレビドラマを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。
 この『家なき子』ということばが、最近、税務においても使われているのです。
 そこで、今回は、『家なき子』について書きたいと思います。

1.小規模宅地の特例
 個人が相続または遺贈により取得した財産のうち、その相続の開始の直前において被相続人等(被相続人または被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族)の事業の用に供されていた宅地等(土地または土地の上に存する権利で、建物または構築物の敷地の用に供されているもの。ただし、棚卸資産及びこれに準ずる資産に該当しないものに限る。)または被相続人等の居住の用に供されていた宅地等のうち、一定の選択をしたもので限度面積までの部分(以下「小規模宅地等」という。)については、相続税の課税価格に算入すべき価額の計算上、一定の割合を減額できます。
 この特例を小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例といいます。いわゆる「小規模宅地等の特例」です。
 なお、相続開始前3年以内に贈与により取得した宅地等や相続時精算課税に係る贈与により取得した宅地等については、この特例の適用を受けることはできません。

2.家なき子
 小規模宅地等の特例のうち、特定居住用宅地(相続開始の直前において被相続人等の居住の用に供されていた宅地等)については、240㎡までその評価額が80%減額されます。
 しかしながら、配偶者以外が取得する場合には、一定の要件があります。

 ①   被相続人と同居していた親族で、相続開始の時から相続税の申告期限まで、引き続きその家屋に居住し、かつ、その宅地等を有している人 
 ②   被相続人と同居していない親族で、被相続人の配偶者または相続開始の直前において被相続人と同居していた一定の親族がいない場合において、被相続人の親族で、相続開始前3年以内に日本国内にある自己または自己の配偶者の所有する家屋に居住したことがなく、かつ、相続開始の時から相続税の申告期限までその宅地等を有している人 
 ③   被相続人と生計を一にしていた親族で、相続開始の直前から相続税の申告期限まで、引き続きその家屋に居住し、かつ、その宅地等を有している人 

 上記の②に該当する方を、税務上、「家なき子」と呼んでいるのです。
 よって、田舎の実家にご両親が住んでいて、都会でお子さんが持ち家に住んでいる場合には、小規模宅地等の特例が使えませんので、小規模宅地等の特例を使うためには、早めに持ち家を売却したり、賃貸住宅として貸す必要があります。

3.最後に
 「家なき子」でなくても、以前は、小規模宅地等の特例は使えていました。
 既に対策済みと考えていたものが、税制改正により使えなくなることもありますので、定期的な点検をお薦めします。

2012年9月20日 國村 年

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2012年8月号 『賞金などには所得税はかかるの?』

 現在、ロンドンオリンピックが開催されており、日本人もたくさんメダルを獲得しています。
 メダルを獲得した場合、財団法人日本オリンピック委員会(いわゆるJOC)から、賞金が支払われます。
 そこで、今回は、『賞金などには所得税はかかるの?』について書きたいと思います。

1.オリンピックの賞金
 メダルを獲得した場合、財団法人日本オリンピック委員会(いわゆるJOC)から、賞金が支払われますが、これについては、所得税は課せられません。
 ちなみに、平成4年に開催されたバルセロナオリンピックにおいて金メダルを獲得した当時中学2年生の岩崎恭子選手に対し支払われたJOCの報奨金が、一時所得に当たるとして課税され、世間の批判を受けたことがきっかけで、平成6年から所得税が課税されないことになったようです。
 なお、所属企業などから支払われた賞金については、賞与などとなり、所得税の対象となりますので、ご留意下さい。

2.ノーベル賞の賞金
 ノーベル基金からノーベル賞として支払われる賞金については、所得税は課税されません。
 よって、物理学賞、化学賞、生理学・医学賞、文学賞、平和賞には、所得税は課税されないのです。
 しかしながら、経済学賞は、正式には、アルフレッド・ノーベル記念経済学スウェーデン国立銀行賞であり、ノーベル基金から支払われるものではないため、所得税が課せられるのです。
 ちなみに、過去に、日本人の経済学賞受賞者はいません。

3.宝くじの当選金
 宝くじ(正式名称は、当せん金付証票)は、『当せん金付証票法』という法律に基づいて発行されています。
 この第13条に「当せん金付証票の当せん金品については、所得税を課さない。」と規定されており、宝くじの当選金については、所得税は課されません。

4.競馬の払戻金
 競馬の払戻金については、一時所得として総合課税の対象となります
 一時所得の計算式については、以下のようになります。  

{(払戻金-当たり馬券の購入費)-50万円}×1/2

 なお、競輪や競艇も、競馬と同じく、払戻金は一時所得となります。

5.パチンコの収入
 これについても、競馬と同様に、一般的には、一時所得となります。
 実際に、申告されている方がどれくらいおられるかは想像もつきませんが、本来、申告すべきものです。

6.最後に
 皆さんは、賞金などの税務上の取り扱いについて、あまりご存じでなかったのではないでしょうか。
 おそらく、どなたかがノーベル経済学賞を受賞した暁には、経済学賞だけが課税されることが話題になり、所得税法が改正されるのでしょうね。
 先に改正しておけば良いと思いますが、ノーベル経済学賞を受賞する方が現れる日を楽しみにしています。

2012年8月8日 國村 年

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事務所通信2012年7月

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2012年7月号 『路線価って?』

 国税庁が、2012年7月2日に平成24年分の路線価を公表しました。4年連続の下落だそうです。
 路線価ということばを聞いたことのある方はたくさんおられると思いますが、そもそも路線価とは何か、路線価はどのような場面で用いるのかということは知らない方もおられるのではないでしょうか。
 そこで、今回は、『路線価って?』について書きたいと思います。

1.路線価とは?
 路線価とは、通常7月に国税庁によって公表されるその年の1月1日における路線(道路)に面する標準的な宅地の1㎡当たりの価額(千円単位で表示)のことです。
 路線価が定められている地域の土地等を評価する場合に用います。

2.一物多価
 土地に関しては、路線価以外にも以下のような価格(評価額)が存在します。
 『一物多価』と言われるゆえんです。

  • 公示価格
    全国からその地域の地価水準を代表する標準地を選び、毎年1月1日時点の地価を国土交通省が3月に公表するものです。公共事業用地を取得する際の価格算定基準や一般の土地取引価格の指標となります。
  • 基準価格
    都道府県の調査による毎年7月1日時点の地価で、9月に公表されるものです。公示価格と似ています。
  • 固定資産税評価額
    各市町村(東京23区は都税事務所)が原則として3年ごとに評価の見直しを行う、毎年1月1日時点の土地、家屋等(固定資産)の評価額です。固定資産税、都市計画税、登録免許税などの算定基準となります。
  • 実勢価格
    実際に売買で用いられる価格です。

 なお、それぞれの価格(評価額)の関係は、一般的に、以下のようだと言われています。

  • 公示価格は、実勢価格に近い。
  • 路線価は、公示価格の約80%
  • 固定資産税評価額は、公示価格の約70%
  • 公示価格と基準価格は、基準日が異なる。

3.路線価を用いる場面
 路線価を用いる場面としては、以下のようなものがあります。
 まず、相続税額の計算のための土地の評価に用います。
 路線価が定められている地域の場合、以下のように計算します。

路線価 × 土地の形状等に応じた各種補正率 × 土地の面積

 
 次に、生前贈与のための土地の評価に用います。
 計算方法は、相続税額の計算と同じになります。
 
 また、相続税がかからない場合でも、相続人間で遺産分割は必要となりますので、この場合にも用います。
 これも、計算方法は同じです。
 
 あとは、土地を売買する際の参考に用います。
 路線価を0.8で割れば実勢価格に近い数値になりますので、土地を売買する際に、いくらで売ったり買ったりするかの参考になります。

4.最後に
 皆さんは、路線価のことをあまりご存じでなかったのではないでしょうか。
 将来的に、相続税の増税が検討されていますので、路線価を用いて相続税額の試算をされてみてはいかがですか?

2012年7月11日 國村 年

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事務所通信2012年6月

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2012年6月号 『あまり知られていない印紙税

 税務に関して、以前からいくつか疑問に思っていることがあるのですが、そのうちの1つが印紙税です。
 そもそも必要なのかという疑問に加え、先日、ダイエーが税務調査で印紙税に関して多額の追徴課税を受けていましたので、今回は、『あまり知られていない印紙税』について書きたいと思います。

1.印紙税とは?
 皆さんのイメージする印紙税とはどのようなものでしょうか?
 おそらく、何かを買ったり、食べたりした時の領収書に貼られている印紙をイメージする方が多いのではないでしょうか。
 印紙税は、「契約書」「手形」「領収書」など、「印紙税額一覧表」に掲げる文書に対して課される税金です。印紙税は、これらの文書を作成した人が、定められた金額の収入印紙を文書にはり付け、これに消印して納付します。
 一方、その納付すべき印紙税を課税文書の作成の時までに納付しなかった場合には、当初に納付すべき印紙税の額の3倍に相当する過怠税が徴収されることになります。
 ただし、調査を受ける前に自主的に不納付を申し出たときは1.1倍に軽減されます。
 また、「はり付けた」印紙を所定の方法によって消印しなかった場合には、消印されていない印紙の額面に相当する金額の過怠税が徴収されることになります。
 なお、過怠税は、その全額が法人税の損金や所得税の必要経費には算入されません。

2.ダイエーの税務調査
 ダイエーが、大阪国税局の税務調査を受け、2011年9月までの3年間で、計約15万枚分の印紙税約3,000万円の納付漏れを指摘されたようです。
 自転車修理の請負契約の伝票などに印紙を貼っておらず。追徴された過怠税は約3,300万円とみられ、同社は今年2月に全額納付したようです。
 請負に関する契約書の場合、記載された契約金額が1万円以上の場合、印紙を貼る必要があります。例えば、1万円以上100万円以下の場合、200円となります。
 一方、契約金額の記載がない場合、200円印紙を貼る必要があります。
 この件について詳細は分かりませんが、おそらく自転車の修理代金はほとんどが1万円以下であると推測されます。そうであれば、金額を記載しておけば、印紙を貼る必要はありません。
 ダイエーのミスと言われればそれまでかもしれませんが、金額を書いたか書かなかったかで印紙税の金額が変わってくるということ自体おかしいように感じます。

3.印紙税の不平等さ
 印紙税は文書に対して課税されるため、一般的に、電子メールやFAXなどの電子データで送付された電子的契約書に対しては課税されないとされています。
 この点も、文書と電子データで印紙税がかかったり、かからなかったりするのもおかしいように感じます。
 経団連も印紙税廃止を提言しています。

4.最後に
 皆さんは、印紙税のことをあまりご存じでなかったのではないでしょうか。
 金額を書くかどうか、文書か電子データかなどで税額が異なることに対して違和感を感じませんか。

2012年6月11日 國村 年

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事務所通信2012年5月

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2012年5月号 『農地の評価』

 私は香川県に住んでいますが、地方にお住まい場合、農地を所有されている方も多いかと思います。
 固定資産税評価額が低いため、相続税もかからないだろうと考えている方もおられますが、想像以上に相続時における評価額が高くなることがあります。
 そこで、今回は、『農地の評価』について書きたいと思います。

1.農地の評価
 農地については、農地法などにより宅地への転用が制限されており、また、都市計画などにより地価事情も異なるので、これらを考慮し、農地の価額は以下の4種類に区分して評価することになります。

  • 純農地
  • 中間農地
  • 市街地周辺農地
  • 市街地農地

 これは、国税庁の公表している評価倍率表で、どこの地域にあるかを見れば、どれに該当するのかを把握できます。

2.純農地及び中間農地の評価
 純農地及び中間農地の評価は、倍率方式によって評価します。
 倍率方式とは、その農地の固定資産税評価額に、国税局長が定める一定の倍率を乗じて評価する方法をいいます。
 例えば、1.1となっていれば、固定資産税評価額に1.1を乗じたものとなります。

3.市街地周辺農地の評価
 市街地周辺農地の評価は、その農地が4.の市街地農地であるとした場合の価額の80%に相当する金額によって評価します。

4.市街地農地の評価
 市街地農地の評価は、宅地比準方式または倍率方式により評価します。
 宅地比準方式とは、その農地が宅地であるとした場合の価額からその農地を宅地に転用する場合にかかる造成費に相当する金額を控除した金額により評価する方法をいいます。
 これを算式で示すと次のとおりです。  

(その農地が宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額-1㎡当たりの造成費の金額)

 例えば、前者が30,000円、後者が1,000円ですと、29,000円になります。
 上記算式の「その農地が宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額」は、具体的には、路線価方式により評価する地域の場合にはその路線価により、また、倍率地域の場合には評価しようとする農地に最も近接し、かつ、道路からの位置や形状等が最も類似する宅地の評価額(宅地としての固定資産税評価額×宅地としての評価倍率)を基として計算することになります。
 農地としてではなく、宅地としての固定資産税評価額ですので、ご留意下さい。
 また、「1㎡当たりの造成費の金額」は、整地、土盛りまたは土止めに要する費用の額がおおむね同一と認められる地域ごとに、国税局長が定めています。宅地造成費の金額は、国税庁ホームページで閲覧することができます。

5.最後に
 農地は、相続時には、必ずしも固定資産税評価額によって評価するわけではありません。
 相続時にびっくりすることがないように、一度相続税の試算をしてみてはいかがですか?

2012年5月18日 國村 年