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「本3月期決算に係る監査の実施に当たって」の公表!

 

 日本公認会計士協会は、2019年03月27日付けで、「本3月期決算に係る監査の実施に当たって」を公表しました。

 内容は以下のとおりです。
 本3月期決算に係る監査の実施に当たって企業活動の複雑化・グローバル化が加速する中で、企業が作成する財務諸表は、様々な立場の人がその信頼性に注目しています。このため、財務報告の信頼性を担保するための監査の役割は、一層重要性を増しています。加えて、監査基準の改訂によるKAMの導入、通常とは異なる監査意見等に係る対応についての議論など、昨今の監査の信頼性向上への取組からも明らかなように、従来にも増して、ステークホルダーからの監査に対する期待も高まっています。
 一方で、近時においても盛んに報道されているとおり、企業の不正が後を絶ちません。また、海外でも会計不正やその監査を巡る問題を受けて、監査の信頼性を更に向上させるための議論が行われています。
 当協会では、監査業務改善のために、毎年監査業務審査会の審査内容を参考にした『監査提言集』を公表しています。この『監査提言集』では、監査人が心掛けるべき「11の提言」を記載しています。
 3月期決算に係る監査の繁忙期を迎えるに当たり、会員各位には引き続き、「11の提言」も有効に活用し、職業的懐疑心をもって、監査の基準に従いリスク・アプローチに基づく監査の実施に努めるようお願いします。

以 上

 こういう文書を出さないといけない状況であるということ自体、残念な気がしますね。
 ここでは書きませんが、『11の提言』も、こんなこと書く必要があるのか?と思うようなものがいくつか入っています。
 個人的には、不祥事の発生→監査の厳格化→マニュアルなどの強化→職業的懐疑心の低下という悪循環に陥っているのではないかと思います。
 あと、最近、『KAM』(Key Audit Matters)ということばを、日本公認会計士協会が良く使っているような気はしますが、もう少し、一般の方々でもわかりやすいことばにした方が良いのではないかと思うのは、僕だけなのでしょうか?

 「本3月期決算に係る監査の実施に当たって」の公表について、どう思われましたか?


指針変更でわかった「監査法人交代」の理由は結局お金!

 

 12月期決算の上場会社の定時株主総会が終わりました。
 上場会社は決算書を監査法人にチェックしてもらう義務を負っています。
 どの監査法人に監査を依頼するかの決定プロセスは会社によって異なり、会社が候補を決めて総会に諮る場合と、会社自体に決定権があって総会では報告するだけで良い場合があります。
 しかし、いずれにしても総会マターです。
 このため、監査法人の交代は、定時総会開催月の前々月の下旬から当月上旬くらいまでに公表されるのが一般的です。
 2019年も12月期決算企業の監査法人交代の発表が1月下旬から始まりましたが、2019年は例年とは少々趣きが異なっています。
 交代を知らせる各社のリリースに、これまでにはなかったほどしっかりと交代理由が書き込まれているのです。
 逆に言えば、これまではなぜ監査法人が交代するのか、その理由がちゃんと書かれてきませんでした。
 なぜ2019年になって、こうした変化が生じているのでしょうか?
 これに関する記事が、Money Forwardが運営するMONEY PLUSというサイトに書かれています。

 上場会社が監査法人を変える理由はいくつかあります。
 1つは、会計処理の方針で会社側と監査法人の意見が対立したり、その会社の事業特性や業界慣習に対する理解をしてもらえない場合、2つ目が、監査法人の担当者が重大なミスを犯したり、何らかの粗相があって会社側を怒らせた場合、3つ目が、監査報酬で折り合えなかった場合です。
 このほかに、海外子会社が増えて海外の会計事務所とのネットワークがある監査法人に乗り換える場合などがあります。
 かつて、監査法人の変更は、上場会社にとって非常に重大なことでした。
 会社が何か重大なリスクを抱えていて、監査法人に逃げられてしまったのではないか、と市場から疑いの目で見られる可能性があったからです。

 しかしながら、平成不況が長引く中で、新規に上場する会社の数が激減し、監査法人間でクライアントの奪い合いが発生しました。
 これによって、少しでも監査報酬を安くしたい会社側の思惑とが合致し、4大監査法人(EY新日本、あずさ、トーマツ、PwCあらた)間での変更や、4大監査法人から準大手への変更であれば、投資家も色眼鏡で見ることがなくなったため、監査法人変更のハードルがぐっと下がったのです。
 そして景気が回復すると、今度は監査法人の人手不足が深刻化してきました。
 それまで買いたたかれる一方だった監査法人も、会社に対して原価に見合う報酬を要求するようになり、一転して売り手市場になったのです。
 東芝問題をはじめ、次々と不正会計が発覚したため、より厳格な監査手続が求められるようになったことも、監査法人の人手不足の原因になっています。
 このため、かつては監査先数と売上高で競い合っていた監査法人も、ちゃんと採算が合うだけの報酬を払ってくれて、なおかつ粉飾発覚リスクも低い監査先しか監査を引き受けないという方針に転換し、近年では監査報酬で折り合わなかったために、監査法人が代わるケースが激増しているらしいということは、噂レベルでは出ていたのです。

 ところが、会社側はその本音、つまり「監査報酬で折り合わなかったから監査法人を変えた」という理由を、なぜか交代のリリースに書かないことが一般化していたのです。
 監査を受ける会社の現場の人にとって、監査法人を変えるというのは大変負担が重いものです。
 会社によって業界の慣習は異なり、監査法人に会社のことや会社が手掛けている事業のことをわかってもらうまでには大変な労力がかかります。
 それゆえ、監査法人を変えるというのは、そう簡単なものではないのです。
 ところが、リリースに書かれる前任監査法人の退任理由は「今度の総会で任期が満了するから」となっていたのです。
 後任は「監査を任せられるだけの資質があるから」、あるいは「総合的に判断して」といった、真の理由がわからない書き方であるのが普通で、まるでコピペしたかのように、大半の会社が同じ文言を書き連ねていました。

 その状況が一変したのが2019年1月下旬です。
 理由は、金融庁が有識者を集めて発足させた「会計監査についての情報提供の充実に関する懇談会」が、1月22日に公表した報告書に「監査法人の実質的な交代理由をちゃんと書くべき」と書かれたからなのです。

 効果はてきめんです。
 それ以降、3月8日までに開示された監査法人の交代リリースをまとめてみたところ、19社中18社が明確に交代理由を書き、そのうち9社が監査報酬で折り合えなかったことを理由に挙げています。

 このほか、監査時間を理由にした会社が1社あり、監査報酬は「単価×のべ作業時間」で計算されますので、監査報酬が理由と考えられます。
 この1社も含めれば10社です。

 4月に入ると、3月期決算会社の監査法人交代の発表が出始めます。
 昔に比べれば、監査法人の交代で会社側が風評リスクにさらされる確率は低下したとはいえ、それでも大手から中堅以下の規模の監査法人に交代した場合は、あらぬ噂を立てられるリスクを伴います。
 理由を明示することが常識になれば、会社側は不本意な風評リスクから解放され、それは投資家にとっても歓迎すべきことだと思います。

 僕自身は、監査法人に勤めていた人間なので、監査法人を変えると事業のことをわかるようになるまでかなりの時間を要するので結局高く付くと思っているのですが、そうではないようですね。
 あとは、IPOしそうな企業を探し出して、IPOまではかなり安い報酬で引き受け、上場してから回収していくというのが一般的なのかなぁと思っていたのですが、簡単に監査法人を変更するのが一般的になってくると、IPOまでの期間の報酬もきちんと取るようになる、つまり、監査法人側も選別を強めるような気はします。
 あとは、投資家という立場からすると、考えが古いのかもしれませんが、今後は大手が監査先を絞っていくことになると思いますので、大手が監査しているところに投資しようとは思いますね。

 指針変更でわかった「監査法人交代」の理由は結局お金であることについて、どう思われましたか?


登録政治資金監査人に対する個別の指導・助言の取組について!

 

 政治資金適正化委員会は、政治資金監査の質の確保を図るための取組の一つとして、平成26年分の収支報告書(定期分)に係る政治資金監査から、政治資金監査報告書や収支報告書の記載状況等に不備のあった登録政治資金監査人に対して指導・助言を行う取組を実施しています。
 個別の指導・助言の取組は、都道府県選挙管理委員会及び総務省に対して、政治資金監査報告書の記載状況等について報告を求め、当該報告に基づいて、関係する登録政治資金監査人に対して直接当委員会から個別に指導・助言を行うものです。
 指導・助言の対象となる事例は、以下のとおりです。

(1) 政治資金監査報告書の基本的な構成に係るもの
(2) 収支報告書(支出に係る分に限る。)上に金額の不整合(計算誤り、表間不突合等)があるもの
(3) 政治資金監査を適確に実施していないことが明らかであると考えられ、政治資金監査制度への国民の信頼に影響を及ぼしかねないと認められるもの等

 これに基づき、指導・助言の対象とした事例等が公表されています。
 平成29年分の収支報告書(定期分)に係る政治資金監査を対象とした個別の指導・助言の取組において、個別の指導・助言の対象とした主な事例等は、下記のとおりです。
 政治資金監査は、法令及び政治資金監査に関する具体的な指針(政治資金監査マニュアル)に基づき適確に行う必要がありますので、このような事例が生じないよう、この機会に改めて、政治資金監査マニュアル、政治資金監査チェックリスト及び政治資金監査報告書チェックリストをご覧いただき、引き続き適確な政治資金監査の実施に努めていく必要があります。

<指導・助言の対象とした主な事例>
○都道府県選管の最初の受付時に、収支報告書(支出に係る分に限る。以下同じ。)上に金額の不整合(計算誤り、表間不突合等)があった。
○都道府県選管の最初の受付時に、収支報告書と領収書等の写しとで、金額の不整合があった。
※上記事例には以下の事例を含む。
・支出に重複計上があったため、後に重複分を削除した。
・対象年以外の年月日の領収書等の写しを添付していたが、後に当該支出を削除した。
・領収書等の写しのない支出を記載していたが、後に当該支出を削除した。
・収支報告書に計上されていない支出に係る領収書等の写しが添付されており、後に当該支出を追加した。
○都道府県選管の最初の受付時に、収支報告書と領収書等の写しとで、年の不整合があった(領収書等の「年」の記載が誤っていた)。
○その他、収支報告書に計上されている支出について、領収書等との確認を行っていなかった。
○政治資金監査報告書の基本的な構成に不備があった。
○同一の登録政治資金監査人について、2か年連続で同一又は異なる事例の報告があった。
○同一の登録政治資金監査人について、複数事例の報告があった。

<上記以外に都道府県選挙管理委員会等から報告のあった誤りの事例>
1)政治資金監査報告書に関するもの
○「1 監査の概要」(1)で監査対象期間が「平成28年」「平成30年」等となっていた。
○「1 監査の概要」(1)で監査対象期間が「平成○年○月○日から平成○年○月○日まで」と旧記載例で記載されており、かつ、監査の対象となった収支報告書等に係る会計の開始日が誤っていた。
○政治資金監査報告書の本文中で政治団体名の記載不備があった(異なる政治団体の名称が記載されていた)。
○政治資金監査報告書上で矛盾した記載があった(徴難明細書に係る支出があるのに徴難明細書が存在しなかった旨の記載等)。
2)収支報告書に関するもの
○収支報告書上で氏名及び住所の記載不備(記載誤り)があった。
○収支報告書と領収書等の写しとで、月日の不整合があった(収支報告書の月日の記載が誤っていた)。
○収支報告書と領収書等を徴し難かった支出の明細書とで、支出の目的に不整合があった(領収書等を徴し難かった支出の明細書の支出目的の記載が誤っていた)。

 これらを見ると、しょうもないミスが多いですね。
 このようなミスをすると非常に恥ずかしいと思いますが、登録政治資金監査人はこのようなレベルの仕事で大丈夫なのでしょうか?
 こういうレベルのものに、『監査』ということばを使ってほしくない感じですね。

 登録政治資金監査人に対する個別の指導・助言の取組について、どう思われましたか?


内部統制報告書の訂正件数が不適切会計増加で過去最多に!

 

 正しい財務諸表を作成するための社内管理体制が整っていると上場企業が投資家に向けて宣言する文書、「内部統制報告書」を訂正する事例が急増しているようです。
 2018年の訂正件数は106件と、2017年の61件を上回り過去最多になりました。
 不適切な会計処理が発覚したことを受け、報告書の有効性を過去にさかのぼって取り消すケースが目立つそうです。

 内部統制報告書は、2009年3月期から有価証券報告書と併せて金融庁への提出が求められるようになりました。
 不正会計が起きない社内体制作りを促すのが目的で、財務諸表の妥当性を証明するための重要な書類なのです。

 企業は報告書で、財務諸表を作成するための適切な管理体制が整っているかどうかを説明します。
 そのうえで内部統制が「有効」「有効でない」「表明できない」のいずれかを明記します。

 報告書の訂正の理由として目立つのが、内部告発や内部監査などをきっかけに発覚した不適切な会計処理です。
 ジャストシステムは一部従業員が会社に無断で返品条項を付けて販売店に売っていた問題が判明し、2015~2018年の報告書を「有効でない」に訂正しました。
 東建コーポレーションも、不適切会計が発覚し、2013~2017年分を訂正した。

 まだ実現には至っていませんが、日産自動車も、元会長のカルロス・ゴーン容疑者の報酬過少記載事件を受け、報告書の訂正を検討しているようです。

 訂正の増加に対し、市場関係者からは懸念の声が出ているようです。
 野村総合研究所の大崎貞和フェローは「現状では不正会計の発生リスクを示す役割を果たせていない」と指摘しています。
 「形式的な対応にとどまっている企業が多いのかもしれない」(大和総研の横山淳金融調査部副部長)との見方もあります。

 内部統制報告書が導入されてからもう10年になるんですね。
 今なお不祥事などが多くて内部統制報告書を訂正するケースが増えているということは、内部統制の重要性を認識できていない経営者が多いということなんでしょうね。
 以前から、規模の小さい企業は内部統制報告書の提出を緩和すべきというような意見が出ていますが、僕は反対です。
 基本的に、内部統制がきちんと構築されているからこそ、日々の取引の積み重ねの結果である決算書の数値が信用できるということだと思いますし、規模が小さいほど、人員の問題で属人的になったり、チェック機能が働かない可能性が高まると思いますので、規模が小さいから簡便にするというのは間違っているのでないかと思います。
 もう少し、内部統制の重要性を認識してほしいですね。

 内部統制報告書の訂正件数が不適切会計増加で過去最多になったことについて、どう思われましたか?


報酬値上げで監査法人の交代が相次ぐ!

 

 決算をチェックする監査法人を変更する企業が増えているようです。
 2018年は監査法人の合併など特殊要因を除いた変更件数が125社と2017年を上回り、リーマン・ショック直後の2009年以来、9年ぶりの高水準となりました。
 東芝などの会計不祥事を受けた監査の厳格化で大手を中心に報酬を引き上げる動きが背景にあるようです。
 一方で、監査法人との「なれ合い」を防ごうとして監査法人を変更する企業もあります。

 税務研究会(東京都千代田区)によると2017年の変更件数は123社で、監査人・監査報酬問題研究会によると、上場企業の監査報酬は2017年度で1社平均6,604万円でした。
 2016年度は6,300万円、2015年度は6,152万円で、年々高額化しています。
 企業ごとの差が大きく、協和発酵キリンの直近の監査報酬は1億300万円、日本ペイントホールディングスは1億2,600万円。ニトリホールディングスは4,600万円でした。
 企業規模や子会社数などが関係します。

 2018年に目立ったのは4大監査法人の1つ、僕が以前勤めていたトーマツからの変更のようです。
 40社強が他の監査法人に変更しました。
 中堅以下の企業が多く、「報酬引き上げについていけなかった」(製造業)との声が漏れています。

 東芝の会計不祥事以降、大手監査法人を中心に監査の厳格化を進めています。
 デロイトトーマツグループの永田高士最高経営責任者(CEO)は、「監査の品質を確保するために適正な人員配置をしている」と話しています。
 監査業務に詳しい青山学院大の町田祥弘教授は、「長時間の監査に見合う報酬を払えない企業は、監査法人も業務を引き受けづらいはずだ」と指摘しています。

 監査法人とのなれ合いを防ごうとする動きもあるようです。
 日本ペイントホールディングスは約40年間担当したEY新日本から大手のあずさに変更しました。
 どこまで本当か分かりませんが、日本ペイントホールディングスのIR担当者は、「欧州で義務化されている監査法人のローテーション(強制交代制)を意識した」と言っているそうです。

 課題は情報開示です。
 監査法人を変更する場合、企業の内部管理体制などに問題があり監査法人が業務を引き受けないケースもあります。
 2018年に開かれた会計監査の情報開示に関する金融庁の懇談会でも、監査人交代の理由や経緯は投資家にとって重要なのに、実質的な交代理由が説明されていないなどの指摘があったようです。

 現状は「任期満了」といった簡単な説明にとどまる企業が大半です。
 大和総研の吉井一洋氏は、「情報開示に納得していない投資家は多い」と指摘しています。
 決算の信頼性を高める上でも、監査法人との関係性を投資家に開示する姿勢が求められています。
 個人的には、監査契約の期間は契約書上1年だと思いますが、実質的には自動更新だと思いますので、交代したときに任期満了というのはどうなのかなぁと感じます。
 あとは、働き方改革も影響しているんでしょうね。
 よって、交代の場合は、企業と監査法人双方がコメントするようにすればいいのではないかと思います。

 報酬値上げで監査法人の交代が相次いでいることについて、どう思われましたか?


監査法人選任はJAの実態に合わせて慎重に(会計監査人評価のポイント)!

 

 農業協同組合新聞に、会計監査人評価のポイントが載っていました。
 戸津禎介有限責任監査法人トーマツJA支援室の講演を、新世紀JA研究会の責任でまとめたものです。

 農協法の改正を受けて平成31年10月1日以降、農協等の会計監査は従来の中央会監査から公認会計士監査に移行されることになりました。公認会計士監査の受監に向けて、いよいよ多くの公認会計士や監査法人(以下監査法人等)から会計監査人を選任することが必要な時期となっています。
 具体的な選任は、日本監査役協会の『会計監査人の評価及び選定基準策定に関する監査役等の実務指針』やJA全国監事協議会の『監事が農協等の会計監査人予定者の選定において留意すべき事項』等が公表されており、これらに従って進めていくことが通例と考えられます。
 選任プロセス自体の説明は、平成29年10月の講演で説明しましたので、本論では、実際に会計監査人選任の場でいただいた質問をもとに、会計監査人の選任を進めるための具体的な留意点を伝えることで、選任に向けての理解の深化や、系統全体に蔓延しているよくある誤解の解消を目指します。
 具体的な話をする前に、改めて農協等の会計監査人の選任にあたっては、透明で的確な選任過程を経ることの必要性を再確認させていただきます。選任にあたっては、透明で的確な選任過程を経ることで、監事、役員の説明責任を果たすことが重要になると考えます。
 具体的には、組合員に対して、監査品質はもとより、組合経営に資する監査法人等を会計監査人として選任したのだと説得的な説明を行い、特に外部(政府、マスコミ等)の目を意識し、現状維持ではなく、自己改革を進めるため適任の監査法人等を選任したことを主張できるような選任をすることが重要と考えます。
 このような透明で的確な選任過程を経ることの重要性は、ここ数か月で急激に高まっており、以下のような背景があるものと考えられます。
◇既定路線に従い会計監査人を選任するとしても、十分な検討をせずに選任してしまうと、農協改革が骨抜きになっているとの批判を受ける恐れがあるとの周知が進んでいる。
◇今後、農協の経営環境が厳しくなることが見込まれる中で、単に財務諸表を批判的に検討するだけでなく、経営課題の解決に向けて示唆を与えてくれるような指導的な機能を発揮する会計監査人に対する期待が高まっている。
◇農林水産省による報酬調査の公表や監査法人等による具体的な提案活動が進んだ結果、監査報酬の水準が想定より高くなる恐れが高まった。
◇会計監査人の選任過程を常例検査の対象にする可能性がでてきている。
◇透明で的確な選任過程を経ることの必要性を十分に認識いただいたところで、実際に会計監査人選任の場で、各農協からよく質問のある8つのポイントに絞って具体的な話をさせていただきます。
ポイント(1)「品質管理」
 品質は監査の根幹をなすものであるため、監査品質の水準は関心が高い領域です。監査の品質は、見た目で良し悪しの判断が難しく、通常、監査法人の提案書には品質管理体制に関する膨大な情報が盛り込まれることから、見極めるべきポイントを絞り込む必要があります。
 審査担当のパートナーの設置や難易度の高い事案の解決をサポートする機能があるか、などの仕組みの有無に加えて、過去の金融庁(公認会計士監査審査会)や公認会計士協会の検査結果を確認することが最低限確認すべきポイントと考えられます。
ポイント(2)「情報セキュリティ」
 監査は多くの秘匿情報を扱いますが、近年、監査法人による情報漏えい事案が少なくありません。そのため監査クライアントは、監査法人に重要情報の管理体制を整備・運用することを求める傾向が強まっています。見極めのためには、情報セキュリティマネジメント規格の取得状況など、情報セキュリティ強化に向けた取り組みを確認することが有用です。
ポイント(3)「業界理解」
 公認会計士監査はリスクアプローチにより行われます。リスクを正しく把握して、リスクに対応する監査手続を立案して対応するわけですが、リスクを把握するためには、総合事業の理解も必要ですし、そもそも株式会社と協同組合の違いを理解しておくことが必要になります。
 今まで一般事業会社ばかり監査していた公認会計士が協同組合や総合事業に対する基本的な理解を持ち合わせていなのではないかとの不安は大きいようです。系統への業務提供等の実績を把握することで、不安が顕在化しないことを確認することが考えられます。
ポイント(4)「非監査業務」
 農協を取り巻く今後の厳しい経営環境に鑑みれば、公認会計士が持つ知見を経営に活用していくことは有用であり、会計監査だけに限られてしまうことは実にもったいないと感じます。多くの農協では、公認会計士からの様々なアドバイスを期待していると思われますが、会計監査人が非監査業務を提供してはいけないとの誤解が蔓延しています。
 まずはこのような誤解を正すことが重要ですが、一方で非監査業務の提供を志向しない公認会計士がいることも事実です。公認会計士の知見を今後の農協経営に活用していくために、非監査業務に対する考え方や知見の有無を確認することをお勧め致します。
ポイント(5)「業務監査」
 これまで業務監査が農協経営の高度化に貢献してきたことから、今後公認会計士監査に移行した場合に業務監査の取り扱いがどのように変化するのかが大きな関心事になっています。公認会計士監査は会計監査を目的としているため、農協から特段の要請を受けない限り業務監査は実施されません。公認会計士の指導的機能の発揮や非監査業務の提供を通じて代替されていくものと考えられます。
ポイント(6)「是正指導」
 監査はJA全国監査機構、指導は中央会という歴史からか、公認会計士監査になったら公認会計士は指導機能を発揮してくれなくなるとの誤解をよく耳にします。公認会計士によって、指導的機能を発揮するための意思・能力に差があることも事実ですが、少なくとも指導機能の発揮は制限されるものではありません。
 どの程度指導機能の発揮が期待されるのかを、意思や能力の点から見極めることを勧めます。せっかく公認会計士監査が導入されるのですから、公認会計士を経営課題の解決に役立つ存在として取り込んだ方がよいことに異論はないと思われます。
ポイント(7)「監査チーム」
 悲しい事実ですが、監査は誰がやっても同じということはなく、監査法人もっと言ってしまうと、だれが担当するかによって監査のスタイルは大きく変わってきます。提案書では通常、監査担当者の氏名や担当者の経歴が記載されますし、プレゼンテーションの場を通じて個性を見極め、自らの組織にあうスタンスの公認会計士であるかを見極めることが重要です。
ポイント(8)「監査報酬」
 監査報酬は、最も関心が高い項目であり、多くの質問が寄せられています。内訳ごとの監査時間の合理性を確認することはもとより、次のような大前提を確認し、実質的な負担を理解することが重要と考えます。
 (1)監査時間及び監査報酬は、概算なのか確定なのか?
 (2)監査時間及び監査報酬は、工数のかさむ初年度を前提にしたものなのか、数年後の安定的な状況を前提にしたものなのか?
 (3)初年度特別価格で、2年目以降報酬が上がる可能性はないのか?
 (4)非監査業務が提供されている場合、監査報酬に取り込まれる部分はどれくらいあるのか?
 以上のように、監査人選任にあたっての具体的な留意点を説明しました。冒頭に申し上げた通り、会計監査人の選任の目的は組合員のために現状維持ではなく、自己改革を進めるため適任の監査法人等を選任することにあります。その目的を忘れることなく、上記の留意点を踏まえ、各農協がベストな会計監査人を選任いただくことを強く祈念致します。

 個人的には、非監査業務が監査報酬の中に含まれていて良いのか?という疑問はありますね。
 この記事を読んで、あまりクライアントの方から評価を受けることの少ない監査業務において、過去何度か高く評価していただいたのは、指導業務だったということが思い出されましたが、ここが重要なんでしょうね。
 指導業務が行えるからこそ、クライアントの方も、事前に相談できるようになるのではないかと思います。
 非監査業務との線引は必要だと思いますが、農協に限らず、監査人も指導機能が発揮できるよう日々スキルアップしないといけないですね。

 会計監査人評価のポイントについて、どう思われましたか?


監査法人選任はJAの実態に合わせて慎重に(公認会計士移行の留意点)!

 

 農業協同組合新聞に、公認会計士移行の留意点が載っていました。
 日向彰農水省経営局協同組織課課長の講演を、新世紀JA研究会の責任でまとめたものです。

 農協改革集中推進期間が来年5月に終わります。これが農協改革の第1ステージです。そして334月以降から改正農協法施行に伴う5年後の見直しが始まり、これが第2ステージとなります。そのなかで、農協の理事構成、中央会制度の見直しなどがあります。そのうえで公認会計士監査を導入し、31年度決算から監査が始まります。系統では昨年4月にみのり監査法人をつくりましたが、各農協では監査法人の選定作業に入っているところだと思います。
 3月決算の農協では、来年6月の総会で監査法人を決めて、内部統制の整備、公認会計士監査ということになります。最後に准組合員の利用規制ですが、農水省ではいま、正組合員、准組合員、員外3者の事業利用量を調査しています。平成333月までの予定で、その結果をもとに、いろいろ検討することになっています。
 農協によっては323月には、31年度の財務諸表づくり、来年の春ころから期中監査の結果を踏まえ期末監査となり、会計士が財務諸表の適正さをチェック。326月に監査意見の表明が行われ、通常総会で決算の承認ということになります。
 では、農水省はなにをするかというと、監査コストの引き下げのお手伝いをさせていただきます。公認会計士監査は、農協にとって意義あることだということを理解し、農協経営に活かしてほしい。

 公認会計士監査を導入したのは、農協の信用、共済事業の規模が大きいという重い事実があります。信用不安を起こさないため、第三者の意見をしっかりもらって、適正に財務諸表がつくられ、健全に経営されているのだというお墨付きを得ることです。それが組合員、国民の信頼をえることです。信金や労金などにも信用事業を営んでいるところは公認会計士監査が義務つけられています。
 というのは、秋田県のおばこ農協の問題があります。農業白書でも紹介され、輸出や直接販売を行うなど立派な農協でした。しかし会計監査の財務諸表の作り方があまりにもいいかげんだったといわざるを得ない。公認会計士に聞くと、経済受託債務と債権に80100億円もの差があり、おかしいと思わなかったのがおかしいと言っています。
 60数億の赤字で、4%割れはなかったものの、11.11%あった自己資本比率が、あっという間に8%割れを起こしました。この重みを、しっかり受け止め、農水省もそうですが、緊張感を持っていただきたい。世の中の目はきびしくなっています。住専問題をくりかえしてはなりません。法律で公認会計士監査が決まっている以上、しっかり公認会計士とキャッチボールして、役職員にとっても監査を受けたというのは、リスク回避など、農協にとっていいことだという認識をもっていただきたい。

 では農水省は何を支援できるか。監査コストは上がることも下がることもあります。高くなると、国は補填して欲しいという声も多く聞かれました。しかし、医療法人、社会福祉法人などもみんな自腹でやっています。モラルハザードを起こしてはならないと思います。農協だけ支援すると必ず批判が出ます。いろいろな思いがあるのは承知していますが、ご理解いただきたい。JAグループが批判されるようにはなって欲しくはありません。
 その代わり、監査コストを下げるお手伝いをします。本年度、全中やあずさ監査法人と、公認会計士監査のマニュアルづくりに取りかかっています。監査法人選任の一助になれば幸いです。その上で、夏の概算要求で2億円の「監査法人のコストの合理化支援」を要求しています。農協の取り組みに任すといっても、離島の農協や大きな経済事業を展開する農協があります。コストを引き下げるための相談を受けます。その場合、中央会は、これまでの経営指導のノウハウを活かし、内部統制強化にリーダーシップを発揮していただきたい。
 また、農水省、金融庁、全中、公認会計士協会の4者で、農協が監査法人を選ぶにあたっての留意点について「JA常勤監事協議会研究レポート」をまとめました。参考にしていただきたい。農協が監査法人を選ぶ場合は、なぜこの法人を選ぶのかを説明できることが重要です。また監査法人を公募するという農協もありますが、その場合も、公募していることが、ちゃんと分かるようにしていただきたい。それが組合員の農協への信頼を高めることになります。
 お願いになりますが、全中監査機構のこれまでのノウハウの蓄積を新しい監査法人に引き継ぐためのしっかりした仕組みをつくってほしい。また、来年5月、自己改革集中推進期間が終わった時点で、生産資材価格の引き下げ、農産物の有利販売などの自己改革で、農家の所得向上のためどれだけ頑張ったか、いったん総括しなければなりません。そのため、ひとつでも多く取り組み、組合員の評価を高めて、頑張っているよということを組合員に示してほしい。改革を評価するのは組合員です。
 農業者が農協を利用するかどうかが物差しです。その意味でも公認会計士監査は経営改善の一助になるのです。農協はリーダーシップを発揮し、農業者所得増大への高い評価を得て、それを農水省にバックしていただきたい。

 『高くなると、国は補填して欲しいという声も多く聞かれました。しかし、医療法人、社会福祉法人などもみんな自腹でやっています。モラルハザードを起こしてはならないと思います。農協だけ支援すると必ず批判が出ます。いろいろな思いがあるのは承知していますが、ご理解いただきたい。JAグループが批判されるようにはなって欲しくはありません。』などというコメントを見ると、まともなことをおっしゃっているなぁと思いました。
 あとは、『その代わり、監査コストを下げるお手伝いをします。本年度、全中やあずさ監査法人と、公認会計士監査のマニュアルづくりに取りかかっています。監査法人選任の一助になれば幸いです。その上で、夏の概算要求で2億円の「監査法人のコストの合理化支援」を要求しています。農協の取り組みに任すといっても、離島の農協や大きな経済事業を展開する農協があります。コストを引き下げるための相談を受けます。』という点については、どうすれば安い金額で契約してくれる監査法人を見つけられるかという誤った解釈の方をなくす努力をしてほしいとは思います。
 監査法人は、当然、見積もりの工数ベースで報酬を提示すると思いますので、監査を受ける側に起因して工数が多くなり、結果として監査報酬が高くなるところもあるでしょうから、監査を受ける側に起因しているものを取り除くためのマニュアルとなってほしいと思います。
 結局は、会計監査をきちんと受け、内部統制などをきちんと整えることが自らの信用を高めることであること、監査報酬は出資者が負担しているものであることなどを認識のうえ、監査法人を選定し、契約してほしいですね。

 公認会計士移行の留意点について、どう思われましたか?


監査不信「10年周期説」に現実味!

 

 企業決算にお墨付きを与える会計監査の世界大手「ビッグ4」に再び批判が高まっているようです。
 欧米で相次ぎ粉飾見落とし騒動が浮上し、リーマン・ショック後10年、エンロン事件からやがて20年というタイミングに、会計不祥事「10年周期説」も現実味を帯びているようです。
 監査という「資本主義のインフラ」を巡るコスト分担が未解決な限り、好況期に緩むマネーの規律が不祥事の種を育て続けるでしょう。

 イギリスの企業会計の監視主体、財務報告評議(FRC)は今、異例のハイペースで、「●●の監査に関する■■への罰金」という監査法人への罰則を発表しています。
 背中を押したのが、イギリス議会による5月の報告書で、「必要レベルの独立した監査をできない、なれ合い集団」と、世界企業の監査を一手に担うビッグ4、KPMG、アーンスト・アンド・ヤング(EY)、デロイトトウシュトーマツ(DTT)、プライスウォーターハウスクーパース(PwC)を厳しく指弾した。

 直接のきっかけが建設2位のカリリオン社の破綻です。
 公共サービスに民間資金を生かす「PFI」発祥の地で、病院や道路などを多く手掛ける大手でした。
 それが突如、15億ポンド(約2,300億円)の負債を抱え清算されたとあって、批判の矛先がKPMGの監査に向かったのです。

 KPMGは南アフリカで銀行の破綻に関連し現地経営陣が総辞職しています。
 アメリカでも米ゼネラル・エレクトリック(GE)の保険部門が巨額損失を計上した件で米証券取引委員会(SEC)が調査中です。
 他の監査法人でも、PwCが「インド版エンロン事件」と呼ばれた件に絡む罰則で、上場企業監査を禁じられるなど、今年に入りニュースが相次いでいます。

 企業が投資家からお金を集め、利益を生み、成長の歯車を回す資本主義で欠かせないのが企業の姿を正しく表す決算書です。
 監査はそれを担保するプロセスです。
 産業革命後の英国を源に、大恐慌を経て上場企業に作成と定期的な開示が義務付けられるようになったのです。

 その欠かせない「インフラ」に「約10年周期でスキャンダルが起きる流れがある」と、大原大学院大学の八田進二教授は指摘しています。
 10年前に、アメリカのリーマン・ブラザーズが破綻し、さらに、その10年前はアメリカのエンロンが簿外に債務を隠し「驚異の利益」を粉飾計上していた頃です。

 「10年」に明確な根拠はありません。
 しかしながら、あるサイクルの存在を歴史が示しています。
 成長率の高い好況時には企業がその前提の下、設備投資やM&A(合併・買収)を実行しますが、監査する側も足元の延長線上で妥当であれば問題視しにくいと言えます。
 ところが、実際には常にバブルがはじけ、資産価格が下がり「時価」へと修正を迫られるという繰り返しです。

 対応し、規制強化は進んでいます。
 エンロン後の2002年、アメリカで企業改革法(SOX法)が成立し、決算の虚偽報告に最長20年の禁錮刑が導入されました。
 日本でもカネボウの粉飾後に「日本版SOX法」が開始し、ヨーロッパでは同じ監査法人が同一企業を担当するのは最長20年となりました。

 それでも絶えぬ不祥事にイギリスでは今、懲罰的ビッグ4解体論も浮上しているようです。
 実際、エンロンの監査担当だったアーサー・アンダーセンは、粉飾を見抜けなかっただけでなく、積極的な加担も疑われ解散に追い込まれました。
 監査部隊はデロイトトウシュなどに吸収され、現在のビッグ4になりました。

 しかしながら、その結果、欧米の大企業の9798%がビッグ4の顧客となっています。
 寡占ゆえの競争欠如が緩みの元凶との批判は根強いようですが、実際はこれ以上潰せない「ラスト4」と呼ばれる存在です。

 「監査は(未来を映す)水晶玉ではない」と、イギリスKPMGのビル・マイケル会長は英誌で批判に反論しています。
 投資家は会社の不正を見抜けといいますが、監査とは決算書類が適正に作られている確認を行う作業であり、万能ではないとの主張です。

 根本には企業と監査人を巡る、本質的な緊張関係の欠如が横たわっています。
 KPMGがカリリオンから得た監査報酬は約2,900万ポンド(約41億円)で、報酬を受けながら、企業性悪説に立つ厳しいチェックは果たして可能なのでしょうか?
 一方、企業にしてみれば監査は必要ですが、利益を生まない経費です。
 この資本主義のインフラのコスト分担が未解決なことが、10年周期の遠因です。

 代案の議論はあるようです。
 保険会社が監査リスクを見積もり最低価格をはじき、監査人が入札する、企業と投資家がコストを折半し取引所に監査費用をプールする。
 要は企業と監査を相対にせず、第三者を挟むアイデアです。
 しかしながら、「公的監査が試みられた国で成功例はない」(青山学院大学の町田祥弘教授)ようです。
 自由競争に基づくのが、資本主義であり、コスト分担の解は見えないようです。

 そんな中、トランプ米大統領は先日、突然「費用の節約だ」と企業業績の四半期開示見直しを指示しました。
 戦後最長に並ぶ好景気の下で踏まれるアクセルですが、規律が緩み、そして次の会計不祥事の芽が育っているのでしょう。

 元々、監査法人に勤めていた人間としては、監査費用は、企業が負担しているのではなく株主が負担しているという考え方をすれば、現状で問題ないのではないかと思います。
 監査は決算の数値だけをチェックしていると思われがちですが、普段の取引の流れ(内部統制)もチェックしており、内部統制がきちんと整備・運用されていることを確かめられたからこそ、決算の数値はある程度信用でき、決算時のチェックも少なくなっています。
 この普段の取引の流れを把握するのが大変なのです。
 当然、業界の特性もあるでしょうし、それぞれの企業によって異なるからです。
 これは、決算の数値の監査においても同じことが言えます。
 あとは、ここが理解を得ることが難しいところだとは思いますが、すべての粉飾を見破るのは不可能だと思いますし、粉飾の歴史に伴って、監査技術も向上しています。
 よって、頻繁に監査法人が変わるとなると、これを新たに把握するのに膨大な時間がかかり、結局、監査報酬が上がることになってしまいますし、その企業のことをよく知らないということになりますので、粉飾のリスクは高まります。
 ここは、大手監査法人の担当者の定期的な変更で、新たな視点や緊張感は担保できるのではないかと思います。
 結果的に、現状が良いと考えています。

 監査不信「10年周期説」に現実味が帯びていることについて、どう思われましたか?


シンガポール取引所が世界の動きに対応して決算・四半期開示を見直し!

2018年01月30日(火)

 シンガポール取引所は、先日、上場企業に課している四半期決算の開示ルールの見直しを検討すると発表しました。
 年4回の開示義務を年2回に軽減したり、開示が必要な項目を減らしたりする案を検討するようです。
 開示ルールを簡素化する世界の取引所の流れに対応する狙いだそうです。

 シンガポール取引所は、まず、四半期決算制度を維持するかどうかを検討します。
 仮に、四半期決算の維持を決めた場合も、開示を義務づける対象企業を現在の時価総額7,500万シンガポールドル(約63億円)以上から1億5,000万シンガポールドル以上に引きあげるなど、負担軽減策を検討します。
 市場関係者から意見を集め、2018年後半から新制度を導入します。

 シンガポール取引所が開示制度を見直すのは、中小企業などから情報開示にかかるコストが重いとの不満が高まっているためです。
 四半期開示を実施する企業の割合も、2003年の制度導入当初は全体の37%でしたが、今は70%まで高まっているそうです。

 東京証券取引所も、2017年3月期決算から決算短信の記載内容の一部を自由に変更できる簡素化に踏みきっています。
 シンガポール取引所は、他の取引所に比べ開示負担が重い状態が続けば、有望なベンチャー企業が他に上場する事態を加速しかねないと判断したようです。

 一方で、開示の頻度や項目が減れば、投資家が情報を入手しにくくなります。
 情報開示の不備が原因で株価が乱高下するなどすれば、市場開設者としての取引所の信頼性も低下する可能性があります。
 シンガポール取引所は、別の施策によって少数株主の権利保護を確保すると説明しています。

 日本も検討した方が良いかもしれませんね。
 四半期開示は、会社にも監査法人にも過度な負担を与えているように思います。
 当然、監査報酬のアップにもつながっているでしょう。
 開示したい企業がすればいいのではないでしょうか?
 そういう積極的な姿勢が評価されて、株価に反映するようになるのではないでしょうか?
 ただし、一方で、投資家の保護も考えないといけませんが、これは、市場を分けるといったようなことで対応できるのではないでしょうか?
 四半期開示がないという条件のうえ、そのリスクを考慮しても株式を買いたい人が買えばいいわけですから。
 ちなみに、シンガポール取引所は、お昼休みも取引ができます。

 シンガポール取引所が世界の動きに対応して決算・四半期開示を見直すことについて、どう思われましたか?


海外の監査チームの人事権までも持つ!

2017年12月27日(水)

 先日、日本経済新聞に『揺れる監査法人』という記事が連載されていました。
 タイトルと内容が合っていないような気はしますが、今週3日間は、これについて書きました。
 2017年9月下旬、港区の東京ミッドタウンにある富士フイルムホールディングスの本社に約20人の外国人の集団がやってきました。
 国際会計事務所KPMGの公認会計士です。
 富士フイルムと今後の会計監査について意見交換する会議に集まったようです。

 「複合機のリース債権について貸し倒れ引き当てを正確に積むべきだった」などと、アジア、ヨーロッパ、アメリカなど各地域を担当する公認会計士が監査で気付いた注意点を次々と報告し、経営陣は聞き入ったようです。

 富士フイルムは2016年6月末の株主総会後に、会計監査の担当を新日本監査法人からあずさ監査法人に切り替えました。
 国内はあずさ監査法人が監査し、海外グループ会社はあずさ監査法人と提携するKPMGが各地域を受け持つ体制になっています。

 「日本のあずさがまとめ役となり海外から情報を吸い上げる仕組みが効果的」と、富士フイルムのグローバル監査部の花田信夫部長はKPMGのネットワークを評価しています。

 実際に子会社の富士ゼロックスの海外子会社が起こしたリース取引の不適切会計では、このネットワークが機能しました。
 あずさ監査法人とKPMGが監査で疑問点を見つけ、不適切会計問題にメスを入れるきっかけにつながりました。

 海外販売子会社の不適切会計では、累計で375億円の損失が発生しました。
 2017年7月には過年度にさかのぼって決算訂正を余儀なくされました。
 優良会社とされてきた富士フイルムが経験した不祥事だけに、衝撃は大きかったようです。

 あずさ監査法人で監査の品質を担当する金井沢治専務理事は「一般的に親会社の財務担当者が海外子会社について外部の視点で客観的な情報を入手する機会は多くない」と会合を開催した狙いを明かしています。

 海外ネットワークの整備が急ピッチで進んでいます。
 あずさ監査法人は海外の会計事務所とのやり取りを密にするため、海外赴任経験のある人材を大幅に増やしました。
 さらにグローバル企業を担当する国内の監査チームが、海外子会社を担当するKPMGの現地事務所の監査チームに直接指示を出す体制に切り替えました。
 「現地の情報を収集しやすくなり、不正につながる情報も素早く把握できる」そうです(金井氏)。

 かつてあずさ監査法人は、現地拠点を通じて国内と海外の監査チームが間接的に情報をやり取りする体制でした。
 今は国内で監査全体のリーダーを務める公認会計士は、海外の監査チームの人事権までも持っています。

 もちろん企業側の対応が大前提です。
 富士フイルムも監査の仕組みを根底から変えました。
 9月に監査部をグローバル監査部へと衣替えし、持ち株会社が直接300社にのぼるグループ会社を監査する体制に切り替えました。
 「子会社任せをやめ、問題が起こる前に芽を摘む」ようです(花田氏)。
 今回のKPMGとの会合も監査のグローバル体制構築に向けた一環です。

 日本企業のグローバル展開が広がる中、目が届きにくい海外子会社の不正会計をどう見つけるのか。上場企業と監査法人の双方で再発防止に向けた地道な取り組みが進み始めました。
 個人的にも、ここ数年、海外子会社での不正が増えていると感じています。
 今までは、提携先の海外の会計事務所に丸投げという感じだったのでしょうが、あすさ監査法人のようなこちらが主導権を持つということは、見習わないといけないでしょうね。

 あずさ監査法人は海外の監査チームの人事権までも持っていることについて、どう思われましたか?


世界で最も複雑な財務諸表?

 
 先日、日本経済新聞に『揺れる監査法人』という記事が連載されていました。

 タイトルと内容が合っていないような気はしますが、今週3日間は、これについて書いています。
 「日本、いや世界で最も複雑な財務諸表かもしれない」と、トーマツ幹部がこう形容する担当企業があります。
 それは大型M&A(合併・買収)を繰り返し、姿が大きく変わり続けるソフトバンクグループです。
 担当公認会計士は、当然、エース級を送り込んでいるようです。

 担当公認会計士を悩ませる原因の一つは、ソフトバンクの資産評価だそうです。
 英半導体設計、アーム・ホールディングスの買収では2.9兆円(20179月末)という巨額の「のれん」が注目を集めました。
 「のれん」とは、買収価格と純資産の差を示すものです。
 それが膨らむのは、ソフトバンクはアームが将来、大きな価値を生み出すと考えているからです。
 ソフトバンクの「のれん」は、2017年9月末で計4兆3,900億円と総資産全体の16%を占めています。

 しかしながら、すべてのビジネスが企業の計画通りに進むわけではありません。
 見通しの甘さが巨額の減損につながる可能性もあります。
 「のれんはできるだけ保守的に評価したい」(あるベテラン公認会計士)というのが本音であり、リスクに敏感な公認会計士が、のれんの金額を巡って担当企業とせめぎ合うのは必然でしょう。

 「(あらゆるモノがネットにつながる)I o Tが普及すれば、このくらいの売上高と利益は出る」と、孫正義会長兼社長は本社の会議室でアームの成長性について熱弁を振るいました。
 面談相手は投資家ではなく、トーマツの担当公認会計士です。

 実はソフトバンクは昨年のアーム買収では、孫会長兼社長とトーマツの担当公認会計士の面談を年4回程度に増やしたようです。
 これまでも孫会長兼社長が年2回ほど、公認会計士に経営の現状を説明してきました。
 回数を増やした理由は、公認会計士の理解を得るにはトップの懇切丁寧な説明が不可欠との判断のようです。

 ソフトバンクで孫会長兼社長を支える一人は、経理統括の君和田和子常務執行役員です。
 公認会計士の資格を持ち、かつてデロイト系の会計事務所にも在籍していました。
 アームの買収手続きが一段落し、君和田氏の視線は新たに買収する米投資会社フォートレス・インベストメント・グループに向いています。
 「新しい事業なので監査業務にはトーマツでも(ファンドに詳しい)専門家が入らないといけない」と注文を付けています。

 買収した事業の将来性をどう評価するのか?は、ソフトバンクを担当するトーマツだけの問題ではありません。
 成功も失敗もありますが、日本企業による巨額買収の事例は増える一方です。
 2017年3月期に東芝は買収した米原子力事業で7,316億円の減損損失を計上しました。
 公認会計士に、買収先の経営を目利きする力も必要になってきます。

 君和田氏は「会計士は過去のことを見るのは得意だが、将来の見積もりは不得意」と指摘しています。
 担当企業側から投げられたボールをどう受け止めるのでしょうか?
 監査法人が抱える課題は大きくなっていますね。
 僕が監査業界に入った約21年前と比べると、将来の見積もりが必要な会計ルールも増えていますし、その頃には想像もできなかったような事業をやられている会社もたくさん存在します。
 公認会計士は、事業をやっているわけではないので、専門分野を設けていく必要があると思いますが、色々な会社を担当していることが強みだと思いますので、過去の数値のチェックだけでなく、財務諸表などから将来のことも読み取れるように、日頃からアンテナを張り巡らせておかないといけないですね。
 個人的には、監査の仕事は将来AIに置き換わると言われていますが、将来のことが考えられる公認会計士が生き残っていくんでしょうね。

 ソフトバンクグループの世界で最も複雑な財務諸表について、どう思われましたか?


毎日が決算!

 
 先日、日本経済新聞に『揺れる監査法人』という記事が連載されていました。

 タイトルと内容が合っていないような気はしますが、今週3日間は、これについて書きたいと思います。
 監査法人を取り巻く環境が目まぐるしく変化しています。
 顧客企業のグローバル化が進み、買収ファンドを通じた複雑な経営形態も広がっています。
 相次ぐ不正会計問題で打撃を受けた監査業界ですが、今の課題を監査法人と企業の取り組みを通じて探っています。

 決算発表で毎回先陣を切るのが愛知県拠点のレストランチェーン『あみやき亭』です。
 同社と監査法人の取り組みは、将来の会計監査の在り方を示すモデルの一つになるでしょう。

 10月1日の日曜日に、愛知県春日井市にある、あみやき亭本部の一室では、あずさ監査法人の公認会計士が決算短信の最終確認に追われていました。
 「月末の資産残高を確認するのに追加資料が必要」ということで、資料を片手に電卓をはじきながら経理担当者に矢継ぎ早に注文を繰り返し、作業は夜遅くまで続いたようです。

 翌2日、あみやき亭は2017年4月から9月期の決算を発表しました。
 3月期の決算企業では一番乗りです。
 2002年の上場当初から原則、締め日の翌営業日に決算を開示してきました。
 開示1番を巡ってIT(情報技術)企業などと競う時期もありました。

 しかしながら、監査の厳格化が進む中、翌営業日に開示する3月期企業は、あみやき亭だけになりました。
 同社の佐藤啓介会長は、「やるからには1番にこだわりたい」と意気込んでいます。

 高速決算の裏にあるのが「日次決算」です。
 月ごとが一般的な締め日を日ごとにして毎日の収支を把握する管理会計のひとつで、あみやき亭はこれを徹底しています。

 その実現にはあずさ監査法人の協力が欠かせません。
 売り上げや仕入れ代、人件費といった各店舗のデータは毎晩、本部が集約していますが、日次決算のデータは公認会計士のもとに毎日送られます。
 公認会計士は不自然な点が見つかればその都度、会社側に確認します。
 あみやき亭の経理部門と担当公認会計士は情報を共有し、売り上げが落ち込むなど店舗に減損処理の兆候が見られれば即座に対応します。

 情報が毎日オープンに伝わることで、あみやき亭側は「監査法人と会計処理を巡った意見対立はほとんどない」(幹部)と話しています。
 公認会計士側も決算集中日を避けて業務を分散できる利点があります。

 「カギは単純化と平準化だ」と佐藤会長は強調しています。
 あみやき亭では交通費などの即日精算は当たり前で、経費は原則、当日に現金で払い戻しを受けます。
 経費を勘定システムに入力するのはパート社員で、経理部門の正社員は2人のみです。

 あみやき亭の2017年3月期の売上高に占める販管費の割合は53%と同業の安楽亭などに比べ10ポイントほど低くなっています。
 監査法人と協業した高速決算が業務の効率化を促しているようです。

 実は、あみやき亭のように経理処理などの作業をできるだけ標準化し、「早く決算発表する企業は欧米では一般的」(あずさ幹部)だそうです。
 複雑なシステムや組織が災いし、作業に手間取る企業や監査法人が学ぶ点は多いでしょう。

 不正会計問題などを受け、我が公認会計士の人気は下落傾向が続いています。
 監査法人が顧客企業と切磋琢磨し、業務の効率化を進めることが深刻な人手不足を乗り越える手段の一つになると言えるでしょう。
 個人的には、正確性なども必要なため、決算は早ければいいわけではないと思っていますが、できる限り早く公表することが投資家のためにはなるんでしょうね。
 決算短信は監査報告書は不要ですが、監査法人内の手続きはどうなっているんでしょうね?
 1番乗りということが良い宣伝にはなるのでしょうが、従業員の方や監査法人の担当者に過度な負担をかけ過ぎていないのかも気にはなります。
 ただ、業務の標準化というのは見習うべき点は多いんでしょうね。

 毎日が決算のあみやき亭について、どう思われましたか?

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