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BLOG(ファイナンス)

「資本コスト」を話せますか?

 

 「御社が前提とする資本コストは何%ですか」「その資本コストに見合う事業でしょうか」。
 そんなやりとりが、上場企業と投資家のあいだで増えていくかもしれません。
 金融庁と東京証券取引所が進める企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)の見直しで、2018年、資本コストという考え方が明確に盛り込まれたからです。

 借りたお金には利子がかかります。
 利子を上回るもうけがなければ、そのビジネスを続ける意味はありません。
 それを株式にもあてはめて考えるのが資本コストです。
 株主も最低限のリターンを求めているはずで、それ以上にもうけなければ企業は価値を生んでいない、とファイナンス理論では考えるのです。

 経営戦略づくりも資本コストへの意識を、持ち合い株も資本コストを上回るメリットがあるか考えてとのメッセージが、見直しには込められています。
 資産を無駄に抱えず、効率的にもうけてくれれば株式市場の評価も上がるとの期待があるのです。

 とはいえ、いざ資本コストを数値に落とし込むとなるとことは単純ではありません。
 理論的には資本資産評価モデル(CAPM)、配当割引モデルの2つが算出法の代表なのですが、実はどちらも前提の置き方次第で大きく数値が変わってくるのです。

 前者は自社の株価の変動性をどうとらえるか、後者は配当が将来何%ずつ伸びると想定するかで、数値が揺れます。
 「うちはどう計算すべきか」と慌てた問い合わせが、幹事証券などに舞い込んでいるようです。

 経営側と投資家が双方、腑に落ちない数字がまかり通っても意味はありません。
 数字に縛られすぎると、経営戦略が縮こまり、大胆さを失うかもしれません。
 一方で、数値達成を急ぐあまり無理な背伸びを誘発するかもしれません。

 資本コストで追い立てられる議論より前に、経営側に必要なのは、しっかりと稼ぐ堂々たる収益のビジョンと戦略です。
 そして、きちんと理解し評価できる投資家側の見識も求められるのです。

 株価算定(バリュエーション)の仕事をしている方は、『資本コスト』は当然知っている話ですが、一般の方には、なかなか難しいかもしれませんね。

 代表的なところでも、支払利息は損金となりますが、配当は税引後利益から支払うため損金とならないといったようなことがあります。
 これを契機に、『資本コスト』が少しでも浸透し、考慮されるようになればいいですね。

 「資本コスト」を話せますか?について、どう思われましたか?


ユニバーサルミュージックへの課税取り消し判決!

 

 会社組織の再編に伴うグループ間の資金調達を巡り、約58億円を追徴課税した東京国税局の処分を不服として、大手レコード会社「ユニバーサルミュージック」(東京・渋谷)が処分取り消しを求めた訴訟の判決が、先日、東京地方裁判所でありました。
 清水知恵子裁判長は、ユニバーサルミュージックの主張を認め、処分を取り消しました。

 ユニバーサルミュージックは、フランス親会社の組織再編の一環で、海外の関連企業から資金を借り入れ、利子を支払いました。
 国税局は、利子が関連企業への利益移転にあたるとして、2012年12月期までの5年間で計約181億円の申告漏れを指摘し、約58億円を追徴課税しました。

 判決で清水智恵子裁判長は、組織の再編や借り入れには「経済的合理性がある」と判断しました。
 ユニバーサルミュージックにとって大規模な資金調達が可能になるメリットがあり、国の処分は違法と結論づけました。

 東京国税局は「国の主張が認められず大変遺憾」とコメントしました。

 ここ数年、国税局は安易に否認しすぎているような気がします。
 一部メディアによると、この事件をきっかけに税制改正を行っているので、国側は負けても痛くないということが書かれていますが、訴訟に負ければ、改正も取り消してほしいですね。

 ユニバーサルミュージックへの課税取り消し判決について、どう思われましたか?


フラット35で「住む」と偽り賃貸用にして悪用し不動産投資!

 

 1%程度の固定低金利で長年借りられる住宅ローン「フラット35」を、不動産投資に使う不正が起きていることがわかったようです。
 ローンを提供する住宅金融支援機構も「契約違反の可能性がある」とみて調査を始め、不正を確認すれば全額返済を求める方針です。

 不正が見つかったのは、東京都内の中古マンション販売会社が売った物件向けのローンです。
 元男性社員(50)が朝日新聞の取材に応じ、「フラット35を投資目的で使ったのは、昨年6月までの約2年間に売った150戸前後。仲間の仲介業者らと一緒にやった。このしくみでトップセールスマンになれた」と証言しました。
 販売会社は2018年夏にこの社員を懲戒解雇し、2018年秋までに機構へ届け出ました。
 利用客の一部も、機構から事情を聴かれています。

 元社員が関与した不正な融資の顧客は20代~30代前半の若者を中心に100人超です。
 融資額は1人2千万~3千万円ほどで、計数十億円規模になります。
 不動産業者らがお金に困った若者らを、投資セミナーやネット上で勧誘したとみられます。
 機構によると、こうした不正が大規模に発覚した例はないそうです。
 同様な手口がほかの業者でもあれば、不正はさらに広がるでしょう。

 元社員によると、利用客は年収300万円台以下の所得層が大半で、200万円前後の借金を抱える人も多かったようです。
 「借金を帳消しにして不動産も持てる」などと勧誘していました。
 利用客はマンションの賃貸収入でローンを返します。
 本来は投資用なのに「住む」と偽って融資を引き出す手口で、不動産業界では「なんちゃって」と呼ばれているようでs。

 フラット35を借りる際、利用客は不動産業者を経由し、機構の提携先の取り次ぎ金融機関に申し込みます。
 業者らは本来の売却額を数百万円水増しした契約書を提出し、物件価値を上回る融資引き出しの不正もしました。
 その分は借金の肩代わりや、利用客を探したブローカーへの紹介料などに充てていました。

 融資の審査は金融機関や機構が担いますが、不正はチェックのすきをつかれました。
 利用客は業者の指示で、本人の居住を示すために当初だけ物件に住民票を移し、ほどなく元に戻します。
 また、機構からの郵便物は転送させるなどして発覚を防いでいましだ。

 機構は政府が7千億円超を全額出資する独立行政法人で、自らは直接貸さず、取り次ぎ金融機関に融資実務を担ってもらい、その債権買い取りで資金を出しています。

 機構のローンを巡ってはこれまでも融資金をだまし取るなどの不正が続発しています。
 会計検査院が2012年、十分な審査態勢を金融機関とともに築くように求めました。
 機構は今回の不正を踏まえ、フラット35が投資目的で使えないことを強調するなど対策に着手し、「必要に応じて審査態勢をさらに強化する」そうです。

<フラット35>
 住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)が民間銀行などと連携して提供する住宅ローン。
 国民の住宅取得を支えるため、低い固定金利で最長35年間借りられます。
 転勤などで入居途中から賃貸に回すことは認められますが、当初から投資目的で借りると融資契約に違反します。
 住宅ローンは不動産投資向けローンと比べ、金利が低くなっています。

 ひどい話ですね。
 こういうことがあると、結局、税金で負担することになってしまいますからね。
 もちろん、やった本人や、それに気づかなかった中古マンション販売会社に責任があると思いますが、機構の手続きなどにも不備があったのだろうと思います。
 貸したら終わりではなく、きちんとルールを守っているかどうかを事後的にチェックする仕組みが必要でしょうね。
 そうしないと、機構の存在意義が問われるのではないでしょうか?

 フラット35で「住む」と偽り賃貸用にして悪用し不動産投資をしていたことについて、どう思われましたか?


ASBJは自社発行の仮想通貨会計ルールを当面策定せず!

2018年03月16日(金)

 日本の会計基準をつくる企業会計基準委員会(ASBJ)は、先日、企業が自社で発行した仮想通貨の会計ルールを当面策定しない方針を決めました。
 仮想通貨技術を使った資金調達(ICO=イニシャル・コイン・オファリング)などを念頭に「実態を網羅的につかめていない」ためのようです。
 3月中旬をメドに、自社以外が発行した仮想通貨のみを対象にルールをまとめるようです。

 ASBJでは、仮想通貨の保有や売買をした際の会計処理について議論し、2017年12月に草案を公開しました。
 自社で発行した仮想通貨については議論の範囲外としており、パブリックコメントも踏まえ、草案の適用範囲から自社発行の仮想通貨を除外することとしました。

 ちなみに、ICOは企業が「トークン」と呼ぶデジタル権利証を発行し、事業に賛同する投資家がビットコインなど広く流通する仮想通貨で買い取る仕組みです。

 既に上場企業の子会社で、ICOを使う企業が出ているのに、見送り(先送り)はどうなのかなぁと思います。
 安易に自己資本を増やせるものになってはいけないと考えますし、会計基準の公表により、過去の会計処理が違っていたということになりかねないと思いますし、過度に監査法人に負担を与えることになるのではないかと憂慮されます。
 過去に、業績の悪い企業が資金調達を通じて不正を働いていたケースもあると思いますので、早めに会計基準を作ってほしいですね。

 ASBJは自社発行の仮想通貨会計ルールを当面策定しないことについて、どう思われましたか?


食品スーパー「オーケー」の有価証券報告書が面白すぎる!

 

 東洋経済によると、食品スーパー「オーケー」の有価証券報告書が面白すぎるそうです。
 「勝つために何をするか、道は解かっています」「売上予算の達成を重視し、英知を集めて対応します」「競争には絶対に勝つ」など、株主に直接呼びかけるような表現で埋め尽くされているのです。

 神奈川県や東京都など首都圏に113店(20189月末時点)の食品スーパーを運営するオーケーは、「毎日が低価格(エブリデー・ロー・プライス)」を掲げ、チラシはまかない、値上げの理由などの商品情報を店内に「オネスト(正直)カード」として掲示するなど、独自の運営方法で知られています。
 低価格がウリながらも利益率は業界平均以上で、業界でも一目置かれる存在です。

 そのオーケーの発行する有価証券報告書(以下、『有報』といいます。)の「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」が、また独自なのです。
 冒頭に引用した一節のように、株主に直接呼びかけるような表現で埋め尽くされているのです。

<紋切り型の説明はしない>
 オーケーは未上場会社ですが、株主数が多いため、有報の提出義務があります。
 オーケーの有報は、金融庁が所管する電子情報開示システム「EDINET」で閲覧できます。
 一般的に、有報における「対処すべき課題」は紋切り型で、通り一辺倒の内容になりがちです。
 「当連結会計年度における国内経済は~」から始まって、フォーマットが決まっているかのような表現が続くことが多くなっています。
 しかしながら、オーケーは違うのです。
 終わった期の振り返りに加え、次期予想も数字を明示して説明しています。
 青果、精肉、水産、総菜の各部門の状況と、認識している課題と対応策などが書かれています。
 「お友達宅配(という施策)はご利用が少なく見直しています。宅配手数料10%に抵抗があるようで、思慮が足りなかったと反省しております」「ネット販売でも『エブリデー・ロー・プライス』を実現するのが大きな課題ですが、やりがいもあります」といった調子です。
 売り場を知り尽くした経営者でなければ語れない内容が、平易な言葉で、既存店実績など必要な数字も折り込んで説明されており、個人投資家はもちろん、プロの機関投資家も歓迎するであろう内容です。
 それもそのはずで、同欄を書いているのは、創業オーナーである飯田勧代表取締役会長本人だそうです。
 飯田会長が草稿を書き、二宮涼太郎社長などとやりとりをしてまとめているようです。
 オーケーは毎年4月に取引先を集めた「オーケー会」と呼ばれる会合を開いています。
 実は有報の「対処すべき課題」は、その際のスピーチ原稿を活用したものです。
 新年度にあたりその年の会社方針を取引先に説明したもので、平易な表現で具体的な施策が並ぶのは、そうした理由もあるのです。

<閉店知らずで31期連続増収>
 オーケーの業績は好調です。
 31期連続で増収が続いており、同社が重視する経常利益も年によって多少のでこぼこはありますが、基本的なトレンドは右肩上がりです。
 低価格ゆえに粗利率は同業他社よりも低いですが、販売経費を絞り込むことで、同業他社よりも格段に高い営業利益率を確保しています。
 1982年以降に開業した店舗では、移転拡張や老朽化による閉店はあっても、業績不振での閉店は皆無です。
 そのオーケーが最も重視する経営指標は売上高だそうです。
 トップラインを重視する企業は今や珍しいですが、採算を確保する施策を徹底していれば、トップラインの上昇に利益はおのずとついてくるという発想のようです。
 創業以来の飯田氏の信念は、トップラインを上げるために1人でも多くのオーケーファンを作るということです。
 そのファン作りの施策の一つが「オーケークラブ」です。
 入会すると食料品について約3%相当の割引が受けられる、いわゆる友の会的組織です。
 流通業の一般的な会員組織は、顧客が割引などの特典を受ける代わりに自らの情報を提供、企業側が情報を分析してマーケティングなどに生かすといったギブアンドテイクの関係が成立しています。
 一方、オーケークラブは、郵便番号の登録と200円の手数料のみで入会できます。
 顧客側が一方的に得をしていることになりますが、「ファンを増やすことが目的なので、損をしている認識はない」(二宮社長)そうです。
 ファン作りという姿勢は資本政策にも現れています。
 オーケーでは2007年~2009年にかけて、計3度、種類株式を発行しています。
 応募資格をオーケークラブの会員である個人に限定し、証券会社による引受を付けず、応募はオーケーが直接、店頭で受け付けたのです。
 オーケーの株主数は、普通株式で法人77に対し個人が257人で、これだけでも未上場会社としてはかなりの数ですが、これに種類株式の延べ5,647、うち個人株主の5,638が加わります。

<株主になってもらい「同じ船に乗る」>
 種類株の調達総額は、3回合計で73億円強でした。
 販管費35日分程度の金額でしかないので、顧客に株主にもなってもらう趣旨だったことは間違いありません。
 種類株式は議決権こそついていませんが、配当順位も残余財産の分配順位も普通株式と同順位です。
 直近の配当性向は18%で、「世の趨勢に合わせて、少しずつ高めている」(二宮社長)そうです。
 1株当たりの発行価格は20077月発行分が2,500円、20089月発行分が3,07480銭、20099月発行分が3,53020銭です。
 算定方式は直前半期の経常利益の55%を2倍し、発行済み株式総数(普通株式と種類株式の合計)から自己株式を差し引いた株数で割り、それを17倍しています。
 つまり、1株当たりの税引後の経常利益の17倍です。
 特別損益を考慮しないので当期純利益ではなく経常利益を使いますが、税金は考慮するので経常益の55%、それの17倍ですから、感覚的にはPER(株価収益率)が17倍ということでしょう。
 株主は自由に株を売買することはできませんが、発行翌年から1月と7月の年2回、会社に取得請求できます。
 この際の算定方式も発行時と同じで、直近半期の経常利益が79.8億円(単体ベース)だったので、現在の買い取り価格は、ざっと5,400円程度となります。
 種類株主はオーケーの成長によって、配当だけでなく、それなりの果実を得ていることになります。
 オーケーの普通株主には取引先が多く、「株主になってもらい、取引先、そしてお客様と一つ同じ船に乗る」(二宮社長)そうです。
 もっとも、種類株式について議決権までは与えていないところは手堅いですね。
 現時点では新たに種類株式を発行する計画はないそうです。
 オーケーは株主に送付している事業報告書にも、有報と同じ文章を載せています。
 有報はプロしか読まないでしょうが、事業報告書は個人株主でも普通に目を通します。
 有報も事業報告書もプロが読むものという発想から脱却し、個人にもわかりやすい情報開示を心掛けています。
 自社製品の優待の次の一手として、ファン株主を増やしたい上場企業にとっては大いに参考になるのではないでしょうか?

 僕自身2007年から2011年まで東京に住んでいて、「オーケークラブ」に入り、隣の駅のオーケーで買い物をしていました。
 動線がよく、安いんですよね。
 上記種類株式は、僕が東京に住んでいた時に発行しており、おそらく何かの事情で応募しなかったのだと思いますが、募集していたのを見て、どうするか検討したような記憶があります。
 大学院で有報を使った授業をしている僕としては、ものすごく親近感を覚えるとともに、とても新鮮な気分になった有報でした。

 食品スーパー「オーケー」の有価証券報告書が面白すぎることについて、どう思われましたか?


上場企業は仮想通貨による資金調達に慎重な対応を!

 
 日本取引所グループ(JPX)の清田瞭・最高経営責任者(CEO)、先日の定例会見で、仮想通貨を発行して資金調達するICO(イニシャル・コイン・オファリング)について「海外では詐欺的なものが多いと報道されている。上場企業によるICOは慎重にすべき」との見方を示しました。
 
 ICOは、「トークン」と呼ばれる仮想通貨を発行すれば迅速に資金調達できるメリットがあり、世界的に利用が伸びています。
 日本の上場企業でもICOを検討する動きが出ていますが、利用者保護の観点から法規制すべきだとの声が与党議員から上がっているようです。
 
 また、JPXは、保有するシンガポール取引所(SGX)株式5,3051,000株について、3年程度をかけて売却すると発表しました。
 
 SGXの株式は東京証券取引所が2007年に約370億円で取得しましたが、保有を続ける合理性を検証した結果、協力関係維持のために必ずしも保有し続ける必要はないとの結論に達したようです。
 清田CEOは、会見で「株を売るから協力関係をやめるということではない」と述べました。
 
 JPX自体上場しており、国際会計基準を採用しているため、保有株の売却で発生する損益は貸借対照表の利益剰余金に振り替えられます。
 20193月期以降の連結業績への影響はありません。
 
 個人的には、清田CEOの発言に同意します。
 株主が、仮想通貨で予期せぬ不利益を被らないようにしてほしいですね。
 
 上場企業は仮想通貨による資金調達に慎重な対応をと日本取引所グループの清田CEOが発言したことについて、どう思われましたか?

仮想通貨を用いた資金調達(ICO)に監査法人も困惑!

2018年02月09日(金)

 最近、世間を賑わせている『仮想通貨』ですが、『仮想通貨』を用いた資金調達『ICO』が国内外で広がっています。
 ただし、その会計処理についての明確な指針がまだありません。
 週刊東洋経済によると、1月15日に東京証券取引所に提出されたある開示資料が市場関係者をざわつかせているようです。
 決済代行サービスなどを手掛けるIT企業であるメタップス(東証マザーズ上場)が提出した、韓国子会社のICO(イニシャル・コイン・オファリング=仮想通貨を用いた資金調達)をめぐる資料です。

 それによれば、メタップスは、2017年9月〜11月の四半期報告書の提出期限延長を申請しています。
 今回のICOの会計処理について追加的な検討を行うためです。
 さらに翌日、メタップスは、資料の一部を訂正し、「監査法人との協議の結果」という文言を削除し、協議がまだ終わっていない点を強調しました。

 ICOの直訳は「新規コインの売り出し」です。
 新規事業を始めたい企業などが「トークン」という独自の仮想通貨を発行し、投資家に販売して資金を集めます。
 トークン購入に使えるのは、ビットコインやイーサリアムといった主要な仮想通貨で、ICO実施者が指定します。

 メタップス子会社の場合、同社が新たに韓国に設立する仮想通貨取引所「コインルーム」の拡大に向けICOを実施し、2017年10月までにイーサリアムで約11億円(1月25日の時価で約39億円)を調達しました。

 ICOは「資金調達」の一種といわれますが、IPO(株式新規公開)などとは手法や特徴が異なります。
 ICOの場合、トークンは仮想通貨取引所で売買できるため、投資先のサービスが発展すれば売却して利益を得られる可能性もあります。

 上場企業傘下のICOはメタップスが世界初です。
 会計上の扱いについては、メタップスが採用する国際会計基準はもちろん、日本基準にも明確な指針がありません。

 メタップスは「受領した対価(仮想通貨)は将来的に収益として認識する」方針です。
 ICO直後は暫定的に流動負債の「預かり金」として計上しましたが、2017年11月のコインルーム設立と同時にホワイトペーパー(資金使途などを示す文書)の定める利用者への返還義務がなくなったとして、将来の収益認識を前提とする「前受金」へと計上し直しました。

 しかしながら、この返還義務の有無には議論の余地が残ります。
 韓国では今、仮想通貨の取引禁止を含む規制の議論が過熱しています。
 コインルームの発展性や継続性に不安が増す中で返還義務が消滅したと言い切るのは容易ではないでしょう。

 そもそも仮想通貨は現金と同様に扱えるのかという論点もあります。
 2017年12月には、韓国でハッキングによる仮想通貨喪失が発生し、メタップスの監査法人は、専門家による情報セキュリティに関する追加検討や、メタップスが保有する仮想通貨残高を適時に確認する手続きの検証が必要だと会社側に説明しているようです。

 ICOの波は、各国の上場企業に広がる可能性もあります。
 メタップスのケースはICOの会計処理の“前例”となります。
 四半期報告書の提出期限は2月15日で、その内容に注目が集まっています。

 監査法人は、PwCあらた有限責任監査法人ですが、担当者は大変でしょうね。
 今後も、仮想通貨がらみの取引はどんどん出てくると思いますが、頭を悩ましそうですね。

 仮想通貨を用いた資金調達(ICO)に監査法人も困惑していることについて、どう思われましたか?

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