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事務所通信2025年10月

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2025年10月号『移動年計グラフ!』

毎月月次決算をしていて、単月や当期の累計の数値は把握しているものの、何となく業績が良くなっているとか悪くなっているとか感じているにもかかわらず、実際にはどうなのか分からない経営者の方も多いのではないでしょうか?

そこで今回は、業績のトレンドを博することができる『移動年計グラフ!』について書きたいと思います。

1.移動年計とは?

移動年計とは、当月を含めた過去12か月(1年間)の合計額を毎月、算出するものです。

決算では、年に一回だけ12か月分の合計額を算出しますが、移動年計は毎月12か月分の合計額となっています。

例えば、2025年9月であれば、2024年10月から2025年9月までの合計額となっています。

つまり、売上高・粗利益・経常利益といった重要な項目の移動年計表を作成するということは、毎月決算をしているようなものであり、季節的変動をも加味した経営状況が把握できるのです。

2.移動年計グラフで把握できること

移動年計表をグラフ化すること、つまり、移動年計グラフを作成することにより、季節的変動を練り込んだ業績のトレンドを把握することができます。

前述のとおり、各月において1年間(12 か月)の合計額を算出する、つまり毎月決算をしているようなものであるため、業績が上向いてきているのかそれとも落ち込んできているのか、「業績のトレンド」を把握できるのです。

単月ベースの比較グラフでは把握しにくい、中長期的な業績のトレンドが、移動年計グラフによって把握できます。

3.Zチャート

Zチャートとは、「月別」「累計」「移動年計」を一つのグラフにしたものです

これにより、季節的変動も加味した業績のトレンドを視覚的に把握することができます。

月別(Zの床線)、累計(Zの斜め線)、年計(Zの天井線)でチャートに表しています。

Zの形が右肩上がりであれば業績が上昇のトレンドにあり、右肩下がりであれば下降のトレンドであることが把握できます。

4.具体的な移動年計グラフの使い方

Excelなどを使って作成することもできますが、ソフトを使えば、簡単に、売上高・粗利益・固定費・経常利益を月別比較、累計比較、予算実績比較、移動年計、Zチャートでグラフ化し、業績の推移を視覚的に把握できます。

月別と期首からの累計額を当期と過年度で比較・分析できるだけでなく、移動年計グラフとZチャートで業績のトレンドを把握し、それらを元に予算実績の比較グラフを作成することもできます。

5.最後に

感覚に頼っている経営者の方も多いと思いますが、数値化とかビジュアル化は重要です。

何か手を打つ際には、何となくではなく、何か根拠のあるものをもとに行うべきです。

その時に役立つもののひとつが、移動年計グラフですので、一度見てみると、感覚と反対の結果が出るかもしれませんので、ぜひ使ってみてくださいね。

2025年10月28日 國村 年

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事務所通信2025年9月

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2025年9月号『資金別貸借対照表!』

利益は出ているものの、なぜか資金が足りないのだろうかと疑問に感じている経営者も多いのではないでしょうか?

そこで今回は、『資金別貸借対照表!』について書きたいと思います。

1.資金別貸借対照表とは?

資金別貸借対照表は、創業以来稼いできたお金(利益)と、借入をして集めたお金が、どのような要因で運用され、現在の現預金残高に至っているか、見ることが出来ます。

①損益資金の部、②固定資金の部、③売上仕入資金の部、④流動資金の部に分けて考えるのです。

資金別貸借対照表には、「資金調達」と「資金運用」の欄があり、その差額が「現預金」となっています。

計算式で表すと、資金調達―資金運用=現預金となります。

創業以来稼いできたお金や、借入によって「調達した資金」が、どのように「運用」され、どれだけキャッシュが増減し、現在の現預金に至っているかを把握できます。

言い換えれば、「儲けた利益はどこに消えたのか」を4つの部に分けて見ることが出来るのです。

2.損益資金の部とは?

損益資金の部は、過去の蓄積の利益と、当期の利益でどれだけお金を稼いできたかを把握できます。

本来、損益資金の部の「現預金」が手元のキャッシュとして残るはずですが、実際の現預金の残高はなぜ違うのか、その原因を残りの3つの部から見ていくのです。

3.固定資金の部とは?

固定資金の部では、長期的な資金運用と資金調達のバランスを把握できます。

資金運用側には、設備投資や在庫など企業規模拡大の原動力となる資金が表示され、資金調達側には、長期借入金や資本金など長期的に使えるお金が表示されます。

設備投資などの固定的な資産は、長期的な資金調達方法で賄われるのが理想です。

固定資金の部がマイナスの場合、設備投資や在庫が長期借入金や資本金で賄いきれず、現預金を減らしている状況です。

4.売上仕入資金の部とは?

売上仕入資金の部は、売上債権回収サイトと仕入債務支払サイトの差が、どれだけ資金に影響を及ぼしているか把握できます。

現金商売でない場合、通常、サイト負け(売上仕入資金の部がマイナス)になります。

サイト負けだと、売上が増加すると、先行する支払いの金額も大きくなり、資金繰りが一時的に悪化するため留意が必要です。

損益資金の部、固定資産の部、売上仕入資金の部を合計したものを「安定資金」と呼びますが、資金の状態は、この「安定資金」で見ることが大切です。

なぜなら、安定資金がマイナスだと、「流動資金の部」で資金調達し、自転車操業のように短期の借入金で資金繰りをつないでいるため、借入を打ち切られた場合などに、倒産の危険性をはらんでいるからです。

5.流動資金の部とは?

流動資金の部は、短期の資金運用と資金調達の差額を把握できます。

ただし、ここで現預金を増加させても、安定した資金とは言えません。

6.最後に

資金別貸借対照表を使って、資金繰りを根本的なところから改善していきましょう。

2025年9月29日 國村 年

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事務所通信2025年8月

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2025年8月号『利益感度分析とは?』

最近では、人件費・燃料費などの物価上昇に伴い、値上げをしたり、値上げを検討されている企業も多いと思われます。

利益を増やすためには、収入を増やすか費用を減らすかになってきますが、何をすべきか考えるためには、利益感度分析が有効になってきます。

そこで今回は、『利益感度分析とは?』について書きたいと思います。

1.利益感度分析とは?

利益感度分析は、価格、数量、変動費、固定費の各要素が変動したときに利益に対してどれだけ影響を与えるかを分析するものです。

2.利益感度分析の目的

利益感度分析の目的は、「利益を増やすためにはどの部分から手を付ければ一番効果的か」を把握することです。

利益を増やすには、以下の4つの戦略が考えられます。

①   価 格

販売価格を上げる

②   数 量

販売数量を増やす

③   変動費

変動費を下げる

④   固定費

固定費を減らす

価格、数量、変動費、固定費の変動があった場合、どの戦略が最も利益に敏感(与える影響が大きい)かを把握するのです。

3.感度比率の意味と計算式

感度比率は、以下のように各戦略に占める経常利益の割合ですが、その数値は「どれだけ変動すると、利益(赤字)がなくなるか?」を表しています。

戦略

計算式

やさしい順

価 格

経常利益÷売上高

4

数 量

経常利益÷粗利益

3

変動費

経常利益÷変動費

2

固定費

経常利益÷固定費

1

例えば「価格」の感度比率が5%の場合、販売単価が5%下がると、利益がなくなることになります。

感度比率を算出することで、「利益改善に与える影響度の大きさ」を数値化し、把握することができます。

4.感度比率を基に感度順位を把握

感度順位は、利益に敏感な順位のことで、言い換えれば、少しの変動で利益改善に与える影響度の大きい順番です。

感度比率の数値が小さいものほど利益に敏感なので、感度順位は計算式の結果を基に決まります。

5.やさしい順を加味してどこから手を付ければ効果的かを把握

やさしい順は、取り組みやすさの順番で、固定費→変動費→数量→価格の順番になります。

価格は常に感度順位が1番になりますが、やさしい順では4番になります。

利益を増やそうとする際に、「固定費削減」から手を打ちがちですが、その理由は、固定費のやさしい順が1番だからです。

ところが、固定費の感度順位が低い場合は、固定費削減が利益の増加に与える影響は小さく、あまり効果的ではないのです。

利益感度分析をすることで、感度順位とやさしい順を加味して、どこから手を付ければ効率的に利益を増やすことができるかを把握できます。

6.最後に

コスト削減が厳しい時代になってきていますので、利益感度分析をうまく使って、利益を増やしていきましょう。

2025年8月29日 國村 年

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事務所通信2025年7月

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2025年7月号『全税目でオンライン調査スタート!』

コロナ禍以降、オンラインでの会議や研修などは当たり前になっていますが、税務調査も、全税目でオンラインで行われることになるようです

そこで今回は、『全税目でオンライン調査スタート!』について書きたいと思います。

1.概要

税務通信によると、国税庁は2025年9月から段階的に、税務調査で必要に応じて、調査官と納税者がメールでやりとりすることやWEB会議システムでの面談、オンラインストレージサービスによる帳簿書類等データの受渡し(まとめて以下、「オンライン調査等」)に着手するようです。

2.調査課所管法人から全納税者に対象拡大

コロナ禍を契機に、調査部特別国税調査官所掌法人へのオンライン調査が始まり、対象は全ての調査課所管法人になりました。

2025年9月からのGSS導入に伴い、税務署所管の法人にとどまらず個人にまで対象を拡大し、税目も法人税や消費税、源泉所得税といった事業者に係るものだけでなく、相続税や贈与税といった資産税についてもオンライン調査等の対象となります。

3.事前通知は従来どおり口頭でその後はメール

オンライン調査等の対象となる『調査等』には、実地の調査や行政指導、書面添付制度に係る意見聴取が該当します。

オンライン調査等として、①「インターネットメールでの連絡」が挙げられます。
具体的には、事前通知の後の調査官との連絡でメールを利用することで、例えば、調査官より調査で必要となる資料の準備の依頼がメールで行われます。
ただし、税務調査の事前通知は従来どおり、原則電話等の口頭で実施されます。

また、②「WEB会議システムによる面談」があります。
WEB会議システム『Teams』を利用して、調査等に係る質問や回答等のヒアリングが行われます。

そして、③「オンラインストレージサービスでのデータの受渡し」があります。
インターネットメールやe-Taxのほか、オンラインストレージサービス(PrimeDrive)を利用して、調査官から求められた帳簿書類等の資料のデータの受渡しを行います。

4.オンライン調査等は事前の手続きが必要

オンライン調査等は、納税者の利便性向上や税務行政の効率化を図る目的で実施されますが、あくまで調査等で必要に応じて行われるものであり、強制ではありません。

基本的には、調査等に当たり調査官が納税者の同意を得た上でオンライン調査等を実施することとなり、その際、納税者は調査官に同意書を提出するなどの手続きが必要となります。

5.金沢局と福岡局で先行スタート

2025年9月に金沢国税局及び福岡国税局とその管内税務署において、職員1人につき1台のGSS端末が配備され、同月以降にオンライン調査等の対応が始まります。

その他の国税局等及び管内税務署では、2026年3月から6月の間に順次配備され、オンライン調査等に対応していく予定です。

6.最後に

税務調査も、法人・個人、税目を問わず、オンラインで行われる時代になりますが、オンラインと対面のどちらが納税者にとって良いのか分かりませんが、臨機応変に対応していきたいものですね。

2025年7月30日 國村 年

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事務所通信2025年6月

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2025年6月号『類似業種平均株価表の業種目の見直し!』

国税庁は2025年6月16日、令和7年分の類似業種比準方式に係る「株価表」等を公表しました(「令和7年分の類似業種比準価額計算上の業種目及び業種目別株価等について(法令解釈通達)」、「類似業種比準価額計算上の業種目分類について(情報)」)。

2024年の「日本標準産業分類」の改定に伴い、株価表の業種目が見直されており、これまでの113業種目から115業種目となっています。

そこで今回は、『類似業種平均株価表の業種目の見直し!』について書きたいと思います。

1.類似業種株価等通達の業種目及び標本会社の業種目の分類

類似業種比準方式は、類似業種の株式の株価の平均値に、評価会社と類似業種の1株当たりの配当金額、1株当たりの利益金額、1株当たりの純資産価額(帳簿価額によって計算した金額をいいます。)の比準割合を乗じて、取引相場のない株式の価額を評価する方式です。

この業種目は、「日本標準産業分類」に基づいて区分しています。

また、類似業種の株価等の計算の基となる標本会社の業種目についても、「日本標準産業分類」に基づいて区分しています。

2.「日本標準産業分類」の改定等に伴う業種目の見直し

平成25年の改定から10年が経過し、その間の経済・社会の状況に変化が生じたことを踏まえ、「日本標準産業分類」の改定が行われました(令和6年4月施行)。

これに伴い、令和7年分の類似業種株価等通達について、業種目の見直しが行われました。

また、標本会社の業種目の判定を行った結果、標本会社が少数となる業種目については、特定の標本会社の個性が業種目の株価等に強く反映されることとなることから、このような影響を排除するため、業種目の統合を行うとともに、標本会社が多数となる業種目については、業種目の新設が行われました。

3.令和7年分の類似業種比準価額計算上の業種目分類

令和6年の日本標準産業分類の改定等を踏まえ、該当する上場会社が多数になる業種目として、大分類「専門・技術サービス業」の中分類として新たに「技術サービス業」、その小分類として「土木建築サービス業」、「その他の技術サービス業」の3業種目がそれぞれ株価表に新設されました。

一方、該当する上場会社が少数になる株価表の業種目として、株価表の大分類「建設業」の小分類であった「電気通信・信号装置工事業」が廃止され、「その他の設備工事業」に統合されました。

これまでは、日本標準産業分類の「電気通信・信号装置工事業」に該当する場合、株価表における業種目も「電気通信・信号装置工事業」として評価していましたが、日本標準産業分類の「電気通信・信号装置工事業」に該当しても、令和7年分の株価表には同業種目がないため、株価表の業種目としては「その他の設備工事業」に区分して評価することになります。

4.最後に

令和7年分の株価表は、令和7年1月1日以後の非上場株式の相続・贈与に適用されますので、留意しましょう。

2025年6月26日 國村 年

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事務所通信2025年5月

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2025年5月号『誰も教えてくれなかった月次決算の実務Q&A(第2版)』

2025年5月21日に、中央経済社から『誰も教えてくれなかった月次決算の実務Q&A(第2版)』を出版しました

2018年2月15日に、『誰も教えてくれなかった月次決算の実務Q&A』を中央経済社から出版し、2019年2月に増刷となりましたが、今回、改訂を行いました。

改訂のお話しをいただいてから1年半くらいかかりましたが、ようやく出版に至りました。

 そこで今回は、『誰も教えてくれなかった月次決算の実務Q&A(第2版)』について書きたいと思います。

 

1.月次決算の目的

決算とは、一定期間の収益と費用を集計して損益を算出し、資産や負債、資本金、剰余金といった財政状態を確定する手続です。

法律的には、1年に1回だけ決算をすればよいですが、実際には、管理会計上の要請から、多くの企業が1か月ごと、四半期(3か月)ごと、半年ごとに決算をしています。

このうち、 1か月ごとに決算をするのが月次決算と呼ばれています。

棚卸もそうなのですが、月次決算は、年度決算のように会社法や税法などの法規制を受けないため、決算の厳密さのレベルに自由度があります。

それゆえ、どこまで厳密に行うか、いいかえれば、どの厳密さのレベルで決算を行うかは、以下のような月次決算の目的に照らして、経営者自らが決めればよいのです。

財務諸表作成

販売価格等の決定

損益・原価管理、予算実績管理

資金管理

経営管理、経営の意思決定

2.書籍の内容

目次は、以下のとおりです。

第1章

月次決算の概要

第2章

月次決算体制の構築

第1節

現金及び預金プロセスの見直し

第2節

収益認識・債権回収プロセスの見直し

第3節

費用認識・債務支払プロセスの見直し

第4節

経費精算プロセスの見直し

第5節

人件費計上プロセスの見直し

第6節

売上原価・在庫計上プロセスの見直し

第7節

月次決算整理プロセス

第8節

月次決算のチェック

第3章

月次決算の分析・報告

第1節

月次決算分析・報告の手順

第2節

月次決算資料の作成

第3節

各部門での利益分析

第4節

経営者に対する報告・内容検討・対策立案

第4章

月次資金管理の実務

第1節

資金繰り管理の実務

第2節

資金繰りの分析

第5章

月次決算報告の具体例

3.最後に

本書は、月次決算を行うための「仕組み」「体制」づくりに焦点を当てています。

月次決算は何のために行うか?、それは、経営者の適時、適切な経営判断を行うためということを忘れてはいけません。

本書が、時代とともに進化する月次決算体制の構築のための、一助になれば幸いです。

2025年5月26日 國村 年

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事務所通信2025年4月

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2025年4月号『シェアリングサービス用の敷地の落とし穴!』

数年前から、我が香川県高松市でも、LUUPという電動キックボードと電動アシスト自転車のシェアリングサービスをみかけるようになりました。

利用者にとっては便利かと思いますが、土地の有効利用を考える所有者にとっては思わぬ落とし穴があります。

そこで今回は、『シェアリングサービス用の敷地の落とし穴!』について取り上げます。

1.シェアリングサービスとは?

最近、レンタサイクルなどのサービスが広がっています。

我が香川県高松市でも、水色の車体のLUUPという電動キックボードと電動アシスト自転車のシェアリングサービスを結構目にするようになりました。

カーシェアリングなども同様です。

2.住宅用地の特例

ここで、住宅用地については、特例措置があり、税金が軽減されています(空き地は除きます。)。

小規模住宅用地(住宅やアパート等の敷地で200㎡以下の部分)

・固定資産税:価格×1/6

・都市計画税:価格×1/3

一般住宅用地(住宅やアパート等の敷地で200㎡を超える部分)

・固定資産税:価格×1/3

・都市計画税:価格×2/3

(注1)アパート・マンション等の場合は、戸数×200㎡以下の部分が小規模住宅用地となります。

(注2)併用住宅(家屋の一部が住宅のほか、店舗等に利用されている家屋)の場合は、建物の構造、階数、住宅として利用している部分の割合によって、住宅用地となる面積が異なります。

(注3)1月1日において新たに住宅の建設が予定されている土地や住宅が建設されつつある土地は、住宅の敷地とはされません。

3.シェアリングサービス用の敷地の税金

一般的に、建物と道路の間の空きスペースを利用してポートなどが設置されています。

テナントビルの敷地であればそもそも非住宅用地なので影響はありませんが、例えば、アパート敷地のちょっとしたスペースに設置されていたら、非住宅用地として取扱われることになります。

よって、シェアリングサービス用の敷地は住宅用地の特例対象地から外れ、固定資産税と都市計画税の負担が増加するのです。

実際には、敷地面積はそれほど広くないと考えられますが、設置場所はサイトで簡単に分かるため、現地を確認すれば一目瞭然であり、東京都主税局などはこの調査を強化しており、発見次第、是正する旨のお尋ね文書を郵送しているようです。

それゆえ、シェアリングサービス用の敷地は、固定資産税等が増加することを考慮して賃貸料を設定する必要があります。

運営会社も、これについては認識しているようなので、既に設置しているのであれば、設置料の見直しも検討に値します。

4.最後に

世の中には、色々な節税や資産運用の商品・サービスがありますが、思わぬ落とし穴が待っていることもありますので、始める際には自己責任で慎重に検討しましょう。

2025年4月22日 國村 年

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事務所通信2025年3月

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2025年3月号『物価高や人手不足等の影響を受けている中小企業者に向けた新しい保証制度!』

米をはじめ、様々なものの価格が上がっていることが毎日報道されていますが、物価高や人手不足等の影響を受けている中小企業者も多いのではないでしょうか?

そこで今回は、『物価高や人手不足等の影響を受けている中小企業者に向けた新しい保証制度!』について、取り上げます。

1.協調支援型特別保証制度

原材料の価格高騰、物価高、人手不足等の影響を受ける中小企業者に対し、金融機関のプロパー融資と保証付き融資を組み合わせることなどにより、金融仲介機能の一層の強化を図り、人手不足に対応するための省力化投資による中小企業の経営の安定や事業の発展など、多岐にわたる経営課題解決への取組を後押しする保証制度を3年間(2028年3月末まで)の時限措置として、開始します。

制度概要は、以下のとおりです。

要件 以下のいずれかに該当する中小企業者

1.申込金融機関から本制度による保証付き融資の実行と原則同時に本保証付き融資の実行と原則同時に本保証付き融資額の1割以上(融資期間12か月以上)のプロパー融資を受けること。

2.申込金融機関の支援を受けつつ、自ら経営行動計画の策定並びに計画の実行及び進捗の報告を行うこと。

保証限度額 2億8,000万円
保証期間 一括返済の場合:1年以内

分割返済の場合:10年以内

据置期間 運転資金:1年以内

設備資金及び運転設備資金:3年以内

金利 金融機関所定
保証料率 0.45%~1.90%
保証料補助 保証申込日に応じて、次の保証料補助率に相当する額を国が補助(要件2は、1/4相当)

2025年3月14日~2026年3月31日の保証申込分:1/2相当

2026年4月1日~2027年3月31日の保証申込分:1/3相当

2027年4月1日~2028年3月31日の保証申込分:1/4相当

取扱期間 2028年3月31日まで

2.経営改善サポート保証(経営改善・再生支援強化型)制度

新型コロナウイルス感染症の影響を受け、借入が過大となり、また、物価高や人手不足等の影響により、厳しい状況に置かれている中小企業者にあっては、必要に応じて、早期に事業再生の取組を進める必要があります。

こうした取組みを後押しするため、経営サポート会議()や中小企業再生支援協議会等の支援により作成した再生計画等に基づき、中小企業者が事業再生を実行するために必要な資金の借入を保証する「経営改善サポート保証制度」について、2025年3月31日に終了する「感染症対応型」の後継として、開始します。

()経営サポート会議:金融機関等の関係者により個別事業者の支援の方向性について意見交換する場で、信用保証協会等を事務局とした支援の枠組み

制度概要は、以下のとおりです。

保証限度額 2億8,000万円
(一般の普通・無担保保証とは別枠)
保証割合 責任共有保証(80%保証)

ただし100%保証およびコロナ禍のセーフティネット5号からの借換については100%保証(いずれも保証付きの既往借入金の範囲内の額を借り換える場合に限る。)

保証料率 0.3%
(国による補助前は原則0.8%または1.0%)
金利 金融機関所定
保証期間 15年以内
据置期間 3年以内

3.最後に

最近は米の価格上昇ばかりがクローズアップされている感はありますが、物価高や人手不足等の影響で、価格転嫁ができていない中小企業者や、人手さえ見つかれば売上をどんどん増やせる中小企業者も多いのではないかと思います。

生き残るためには、使える制度は、うまく使っていきたいものですね。

2025年3月28日 國村 年

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事務所通信2025年2月

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2025年2月号『吸血型M&A!』

私は20年近く前からM&Aに関わっていますが、昨年、吸血型M&Aと呼ばれる詐欺的案件が出てきて、せっかくM&Aというものが世間に認知されてきていましたが、現在は逆風が吹いています。

そこで今回は、『吸血型M&A!』について、取り上げます。

1.吸血型M&Aとは?

『吸血型M&A』とは、ルシアン事件がきっかけとなり、買収する企業の事業継続は考えておらず、所有している資産を奪取することだけが目的であるM&Aを言います。

ルシアンという会社は、2021年11月に設立され、設立直後から、結婚式場や車両部品・輸入車販売、砕石販売、土木工事、農業法人など、異業種を矢継ぎ早にM&Aで傘下に収めています。

ところが、トラブルが引き起こされます。

トラブルには、主に以下の2つがあります。

1

現預金を抜き取る

2

経営者保証を解除しない

まず、現金を抜き取るということですが、傘下企業に、ルシアンが管理する口座に送金することを指示していました。

従業員の給与や金融機関からの借入金の返済、オフィスの賃料などの経費の支払いなど、必要になったタイミングで傘下企業に資金を戻す前提だったとはされています。

しかしながら、その約束が、常には果たされず、資金が戻されなかったり、遅れたりしたこともあり、現預金を抜き取られた傘下企業は給料未払いや債務不履行に陥りました。

顧客や取引先、従業員の信用がき損され、あっという間に経営難に直面する傘下企業も表れました。

次に、経営者保証を解除しないということですが、経営者保証は、経営者が個人で負う、企業が金融機関から融資などを受ける際に設定する債務保証です。

企業が返済できなくなった場合に、経営者は企業に代わって返済しなくてはならず、経営者が自宅に抵当権を設定しているケースが多くなっています。

M&Aで会社を売却するときは、経営者保証は金融機関での手続きを経て、解除されるべきもので、株式譲渡契約書では、M&Aが成立するタイミングで、買い手によって行われると明記されていることが多くなっています。

ところが、ルシアンは解除を行わなかったのです。

その結果、現預金を抜き取られ、経営難で債務不履行に陥ったときには、銀行などの債権者は、すでに会社を売却した元経営者に対して取り立てを行うことになるのです。

元経営者はこのときに、経営者保証が解除されていないことにようやく気付くのです。

2.最後に

報道によると、ルシアンはM&Aをする際に、財務デューデリジェンスを行っていましたが、現預金残高が大きくなるタイミングを調査していたと聞きます。

こういう悪質な企業もありますので、業界的には、M&A支援機関協会が会員を増やそうとしていますが、会社を売却しようとする際は、信頼できる仲介会社やファイナンシャルアドバイザーを選定し、自らも買い手候補をきちんと調査しましょう。

2025年2月25日 國村 年

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事務所通信2025年1月

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2025年1月号『換価分割!』

遺産を分割する方法は、現物分割、共有分割、代償分割、換価分割の4つあります。

経験上、現物分割が圧倒的に多く、共有分割や代償分割はたまに見かけ、換価分割は珍しいという感じでしょうか。

そこで今回は、『換価分割!』について、取り上げます。

1.換価分割とは?

換価分割とは、相続財産を売却するなどして現金に換え、その現金を相続人同士で分割する方法です。

換価分割は、相続財産の多くが不動産・有価証券などで、相続人が相続財産の保有を必要としない場合に、一般的な遺産分割方法です。

2.換価分割のメリット

換価分割には、以下のようなメリットがあります。

相続人が多くても、公平に遺産分割がしやすい
延納や物納を使わずとも、相続税の納税資金を準備できる
代償分割と違って、自己資金を準備しなくてよい
不動産の実勢価格と比べて相続税評価額の方が低いことが多いため、相続税の節税ができることがある

3.換価分割のデメリット

一方、換価分割には、以下のようなデメリットがあります。

売却を急ぐと、希望額で売却できない可能性がある
譲渡所得税が発生する可能性がある
不動産産売買手数料・印紙代・測量費などが生じる

4.換価分割の手続き

換価分割の手続きは、以下のようになります。

換価分割する相続財産の相続税評価額を算出する

相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成する
遺産分割協議で決めた共同登記か単独登記かに基づき、相続登記を行う
売却方針を協議する
売却先が見つかれば、売買契約書を締結し、売却代金を受領する
売却代金から各種費用を差し引いた金額を、遺産分割協議書に基づき分配する

5.換価分割の税務

相続税の計算の結果、課税されないこともありますが、換価分割の対象となる財産は、相続税の計算上、課税対象となります。

次に、換価分割の対象となる財産を売却した際には、売却代金から取得費や譲渡費用などを差し引いた『譲渡所得』が生じれば、譲渡所得税が課税されます。

この場合、取得費は相続税評価額ではなく、被相続人の取得費を引き継ぎますのでご留意ください。

なお、単独登記の場合、遺産分割協議書で詳細を記載しておけば、贈与税の問題は生じません。

6.最後に

代償分割だけでなく、換価分割もケースによっては有効だと思われますので、検討されてもよいかもしれませんね。

2025年1月27日 國村 年