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事務所通信2025年5月

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2025年5月号『誰も教えてくれなかった月次決算の実務Q&A(第2版)』

2025年5月21日に、中央経済社から『誰も教えてくれなかった月次決算の実務Q&A(第2版)』を出版しました

2018年2月15日に、『誰も教えてくれなかった月次決算の実務Q&A』を中央経済社から出版し、2019年2月に増刷となりましたが、今回、改訂を行いました。

改訂のお話しをいただいてから1年半くらいかかりましたが、ようやく出版に至りました。

 そこで今回は、『誰も教えてくれなかった月次決算の実務Q&A(第2版)』について書きたいと思います。

 

1.月次決算の目的

決算とは、一定期間の収益と費用を集計して損益を算出し、資産や負債、資本金、剰余金といった財政状態を確定する手続です。

法律的には、1年に1回だけ決算をすればよいですが、実際には、管理会計上の要請から、多くの企業が1か月ごと、四半期(3か月)ごと、半年ごとに決算をしています。

このうち、 1か月ごとに決算をするのが月次決算と呼ばれています。

棚卸もそうなのですが、月次決算は、年度決算のように会社法や税法などの法規制を受けないため、決算の厳密さのレベルに自由度があります。

それゆえ、どこまで厳密に行うか、いいかえれば、どの厳密さのレベルで決算を行うかは、以下のような月次決算の目的に照らして、経営者自らが決めればよいのです。

財務諸表作成

販売価格等の決定

損益・原価管理、予算実績管理

資金管理

経営管理、経営の意思決定

2.書籍の内容

目次は、以下のとおりです。

第1章

月次決算の概要

第2章

月次決算体制の構築

第1節

現金及び預金プロセスの見直し

第2節

収益認識・債権回収プロセスの見直し

第3節

費用認識・債務支払プロセスの見直し

第4節

経費精算プロセスの見直し

第5節

人件費計上プロセスの見直し

第6節

売上原価・在庫計上プロセスの見直し

第7節

月次決算整理プロセス

第8節

月次決算のチェック

第3章

月次決算の分析・報告

第1節

月次決算分析・報告の手順

第2節

月次決算資料の作成

第3節

各部門での利益分析

第4節

経営者に対する報告・内容検討・対策立案

第4章

月次資金管理の実務

第1節

資金繰り管理の実務

第2節

資金繰りの分析

第5章

月次決算報告の具体例

3.最後に

本書は、月次決算を行うための「仕組み」「体制」づくりに焦点を当てています。

月次決算は何のために行うか?、それは、経営者の適時、適切な経営判断を行うためということを忘れてはいけません。

本書が、時代とともに進化する月次決算体制の構築のための、一助になれば幸いです。

2025年5月26日 國村 年

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事務所通信2025年4月

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2025年4月号『シェアリングサービス用の敷地の落とし穴!』

数年前から、我が香川県高松市でも、LUUPという電動キックボードと電動アシスト自転車のシェアリングサービスをみかけるようになりました。

利用者にとっては便利かと思いますが、土地の有効利用を考える所有者にとっては思わぬ落とし穴があります。

そこで今回は、『シェアリングサービス用の敷地の落とし穴!』について取り上げます。

1.シェアリングサービスとは?

最近、レンタサイクルなどのサービスが広がっています。

我が香川県高松市でも、水色の車体のLUUPという電動キックボードと電動アシスト自転車のシェアリングサービスを結構目にするようになりました。

カーシェアリングなども同様です。

2.住宅用地の特例

ここで、住宅用地については、特例措置があり、税金が軽減されています(空き地は除きます。)。

小規模住宅用地(住宅やアパート等の敷地で200㎡以下の部分)

・固定資産税:価格×1/6

・都市計画税:価格×1/3

一般住宅用地(住宅やアパート等の敷地で200㎡を超える部分)

・固定資産税:価格×1/3

・都市計画税:価格×2/3

(注1)アパート・マンション等の場合は、戸数×200㎡以下の部分が小規模住宅用地となります。

(注2)併用住宅(家屋の一部が住宅のほか、店舗等に利用されている家屋)の場合は、建物の構造、階数、住宅として利用している部分の割合によって、住宅用地となる面積が異なります。

(注3)1月1日において新たに住宅の建設が予定されている土地や住宅が建設されつつある土地は、住宅の敷地とはされません。

3.シェアリングサービス用の敷地の税金

一般的に、建物と道路の間の空きスペースを利用してポートなどが設置されています。

テナントビルの敷地であればそもそも非住宅用地なので影響はありませんが、例えば、アパート敷地のちょっとしたスペースに設置されていたら、非住宅用地として取扱われることになります。

よって、シェアリングサービス用の敷地は住宅用地の特例対象地から外れ、固定資産税と都市計画税の負担が増加するのです。

実際には、敷地面積はそれほど広くないと考えられますが、設置場所はサイトで簡単に分かるため、現地を確認すれば一目瞭然であり、東京都主税局などはこの調査を強化しており、発見次第、是正する旨のお尋ね文書を郵送しているようです。

それゆえ、シェアリングサービス用の敷地は、固定資産税等が増加することを考慮して賃貸料を設定する必要があります。

運営会社も、これについては認識しているようなので、既に設置しているのであれば、設置料の見直しも検討に値します。

4.最後に

世の中には、色々な節税や資産運用の商品・サービスがありますが、思わぬ落とし穴が待っていることもありますので、始める際には自己責任で慎重に検討しましょう。

2025年4月22日 國村 年

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事務所通信2025年3月

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2025年3月号『物価高や人手不足等の影響を受けている中小企業者に向けた新しい保証制度!』

米をはじめ、様々なものの価格が上がっていることが毎日報道されていますが、物価高や人手不足等の影響を受けている中小企業者も多いのではないでしょうか?

そこで今回は、『物価高や人手不足等の影響を受けている中小企業者に向けた新しい保証制度!』について、取り上げます。

1.協調支援型特別保証制度

原材料の価格高騰、物価高、人手不足等の影響を受ける中小企業者に対し、金融機関のプロパー融資と保証付き融資を組み合わせることなどにより、金融仲介機能の一層の強化を図り、人手不足に対応するための省力化投資による中小企業の経営の安定や事業の発展など、多岐にわたる経営課題解決への取組を後押しする保証制度を3年間(2028年3月末まで)の時限措置として、開始します。

制度概要は、以下のとおりです。

要件 以下のいずれかに該当する中小企業者

1.申込金融機関から本制度による保証付き融資の実行と原則同時に本保証付き融資の実行と原則同時に本保証付き融資額の1割以上(融資期間12か月以上)のプロパー融資を受けること。

2.申込金融機関の支援を受けつつ、自ら経営行動計画の策定並びに計画の実行及び進捗の報告を行うこと。

保証限度額 2億8,000万円
保証期間 一括返済の場合:1年以内

分割返済の場合:10年以内

据置期間 運転資金:1年以内

設備資金及び運転設備資金:3年以内

金利 金融機関所定
保証料率 0.45%~1.90%
保証料補助 保証申込日に応じて、次の保証料補助率に相当する額を国が補助(要件2は、1/4相当)

2025年3月14日~2026年3月31日の保証申込分:1/2相当

2026年4月1日~2027年3月31日の保証申込分:1/3相当

2027年4月1日~2028年3月31日の保証申込分:1/4相当

取扱期間 2028年3月31日まで

2.経営改善サポート保証(経営改善・再生支援強化型)制度

新型コロナウイルス感染症の影響を受け、借入が過大となり、また、物価高や人手不足等の影響により、厳しい状況に置かれている中小企業者にあっては、必要に応じて、早期に事業再生の取組を進める必要があります。

こうした取組みを後押しするため、経営サポート会議()や中小企業再生支援協議会等の支援により作成した再生計画等に基づき、中小企業者が事業再生を実行するために必要な資金の借入を保証する「経営改善サポート保証制度」について、2025年3月31日に終了する「感染症対応型」の後継として、開始します。

()経営サポート会議:金融機関等の関係者により個別事業者の支援の方向性について意見交換する場で、信用保証協会等を事務局とした支援の枠組み

制度概要は、以下のとおりです。

保証限度額 2億8,000万円
(一般の普通・無担保保証とは別枠)
保証割合 責任共有保証(80%保証)

ただし100%保証およびコロナ禍のセーフティネット5号からの借換については100%保証(いずれも保証付きの既往借入金の範囲内の額を借り換える場合に限る。)

保証料率 0.3%
(国による補助前は原則0.8%または1.0%)
金利 金融機関所定
保証期間 15年以内
据置期間 3年以内

3.最後に

最近は米の価格上昇ばかりがクローズアップされている感はありますが、物価高や人手不足等の影響で、価格転嫁ができていない中小企業者や、人手さえ見つかれば売上をどんどん増やせる中小企業者も多いのではないかと思います。

生き残るためには、使える制度は、うまく使っていきたいものですね。

2025年3月28日 國村 年

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事務所通信2025年2月

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2025年2月号『吸血型M&A!』

私は20年近く前からM&Aに関わっていますが、昨年、吸血型M&Aと呼ばれる詐欺的案件が出てきて、せっかくM&Aというものが世間に認知されてきていましたが、現在は逆風が吹いています。

そこで今回は、『吸血型M&A!』について、取り上げます。

1.吸血型M&Aとは?

『吸血型M&A』とは、ルシアン事件がきっかけとなり、買収する企業の事業継続は考えておらず、所有している資産を奪取することだけが目的であるM&Aを言います。

ルシアンという会社は、2021年11月に設立され、設立直後から、結婚式場や車両部品・輸入車販売、砕石販売、土木工事、農業法人など、異業種を矢継ぎ早にM&Aで傘下に収めています。

ところが、トラブルが引き起こされます。

トラブルには、主に以下の2つがあります。

1

現預金を抜き取る

2

経営者保証を解除しない

まず、現金を抜き取るということですが、傘下企業に、ルシアンが管理する口座に送金することを指示していました。

従業員の給与や金融機関からの借入金の返済、オフィスの賃料などの経費の支払いなど、必要になったタイミングで傘下企業に資金を戻す前提だったとはされています。

しかしながら、その約束が、常には果たされず、資金が戻されなかったり、遅れたりしたこともあり、現預金を抜き取られた傘下企業は給料未払いや債務不履行に陥りました。

顧客や取引先、従業員の信用がき損され、あっという間に経営難に直面する傘下企業も表れました。

次に、経営者保証を解除しないということですが、経営者保証は、経営者が個人で負う、企業が金融機関から融資などを受ける際に設定する債務保証です。

企業が返済できなくなった場合に、経営者は企業に代わって返済しなくてはならず、経営者が自宅に抵当権を設定しているケースが多くなっています。

M&Aで会社を売却するときは、経営者保証は金融機関での手続きを経て、解除されるべきもので、株式譲渡契約書では、M&Aが成立するタイミングで、買い手によって行われると明記されていることが多くなっています。

ところが、ルシアンは解除を行わなかったのです。

その結果、現預金を抜き取られ、経営難で債務不履行に陥ったときには、銀行などの債権者は、すでに会社を売却した元経営者に対して取り立てを行うことになるのです。

元経営者はこのときに、経営者保証が解除されていないことにようやく気付くのです。

2.最後に

報道によると、ルシアンはM&Aをする際に、財務デューデリジェンスを行っていましたが、現預金残高が大きくなるタイミングを調査していたと聞きます。

こういう悪質な企業もありますので、業界的には、M&A支援機関協会が会員を増やそうとしていますが、会社を売却しようとする際は、信頼できる仲介会社やファイナンシャルアドバイザーを選定し、自らも買い手候補をきちんと調査しましょう。

2025年2月25日 國村 年

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事務所通信2025年1月

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2025年1月号『換価分割!』

遺産を分割する方法は、現物分割、共有分割、代償分割、換価分割の4つあります。

経験上、現物分割が圧倒的に多く、共有分割や代償分割はたまに見かけ、換価分割は珍しいという感じでしょうか。

そこで今回は、『換価分割!』について、取り上げます。

1.換価分割とは?

換価分割とは、相続財産を売却するなどして現金に換え、その現金を相続人同士で分割する方法です。

換価分割は、相続財産の多くが不動産・有価証券などで、相続人が相続財産の保有を必要としない場合に、一般的な遺産分割方法です。

2.換価分割のメリット

換価分割には、以下のようなメリットがあります。

相続人が多くても、公平に遺産分割がしやすい
延納や物納を使わずとも、相続税の納税資金を準備できる
代償分割と違って、自己資金を準備しなくてよい
不動産の実勢価格と比べて相続税評価額の方が低いことが多いため、相続税の節税ができることがある

3.換価分割のデメリット

一方、換価分割には、以下のようなデメリットがあります。

売却を急ぐと、希望額で売却できない可能性がある
譲渡所得税が発生する可能性がある
不動産産売買手数料・印紙代・測量費などが生じる

4.換価分割の手続き

換価分割の手続きは、以下のようになります。

換価分割する相続財産の相続税評価額を算出する

相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成する
遺産分割協議で決めた共同登記か単独登記かに基づき、相続登記を行う
売却方針を協議する
売却先が見つかれば、売買契約書を締結し、売却代金を受領する
売却代金から各種費用を差し引いた金額を、遺産分割協議書に基づき分配する

5.換価分割の税務

相続税の計算の結果、課税されないこともありますが、換価分割の対象となる財産は、相続税の計算上、課税対象となります。

次に、換価分割の対象となる財産を売却した際には、売却代金から取得費や譲渡費用などを差し引いた『譲渡所得』が生じれば、譲渡所得税が課税されます。

この場合、取得費は相続税評価額ではなく、被相続人の取得費を引き継ぎますのでご留意ください。

なお、単独登記の場合、遺産分割協議書で詳細を記載しておけば、贈与税の問題は生じません。

6.最後に

代償分割だけでなく、換価分割もケースによっては有効だと思われますので、検討されてもよいかもしれませんね。

2025年1月27日 國村 年

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事務所通信2024年12月

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2024年12月号『ダイレクト納付!』

国税庁は、納付書を使用しない納付手段で納付した方などについては、納付書の事前の送付を取りやめています。

そこで今回は、『ダイレクト納付!』(e-Taxによる口座振替)について、書きます。

1.事前送付を行わないこととなる方

e-Taxにより申告書を提出されている法人の方

e-Taxによる申告書の提出が義務化されている法人の方

e-Taxで「予定納税額の通知書」の通知を希望された個人の方

「納付書」を使用しない以下の手段により納付されている法人・個人の方

・ダイレクト納付

・振替納税

・インターネットバンキング等による納付

・クレジットカード納付

・スマホアプリ納付

・コンビニ納付(QRコード)

(注1)現在、e-Taxを利用されず、税務署から送付された納付書で納付されている方など納付書を必要とされる方に対しては、引き続き、納付書を送付しています。

(注2)源泉所得税の徴収高計算書や、e-Taxによる申告書の提出が義務化されている法人以外の方に送付する消費税の中間申告書兼納付書については、引き続き送付しています。

(注3)「QRコード」は株式会社デンソーウェーブの登録商標です。

2.ダイレクト納付の手続

ダイレクト納付とは、e-Tax(国税電子申告・納税システム)により申告書等を提出した後、納税者ご自身名義の預貯金口座から、即時または指定した期日に、口座引落しにより国税を電子納付する手続です。

利用に当たっては、事前にe-Taxの利用開始手続を行ったうえ、納税地を所轄する税務署へ、『国税ダイレクト方式電子納税依頼書兼国税ダイレクト方式電子納税届出書』を書面で提出する必要があります(個人の方は、『ダイレクト納付利用届出書』をオンラインで提出することもできます。)。

3.自動ダイレクト

自動ダイレクトとは、e-Taxの申告等データを送信する画面で「自動ダイレクトを利用する」旨の項目が表示されるので、チェックを入れて送信すると、申告等データの送信と併せてダイレクト納付の手続をすることができる機能です。

自動ダイレクトを利用すると、口座引落日は各申告手続の法定納期限となります。

なお、以下のすべての条件に該当する場合に利用できます。

令和6年4月1日以降、法定納期限が到来する申告手続

法定納期限内に申告手続をする場合

法定納期限当日に自動ダイレクトの手続をした場合は、納税額に制限があります。

法定納期限に申告手続をする日

納税額

R6/4/1~R8/3/31

1千万円以下

R8/4/1~R10/3/31

3千万円以下

R10/4/1~

1億円以下

4.最後に

ダイレクト納付は手間が省けて便利ですので、使うことを検討しても良いですね。

2024年12月24日 國村 年

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事務所通信2024年11月

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2024年11月号『地籍調査とは?』

先日、地積調査に立ち会いました。

そこで今回は、『地籍調査とは?』について、書きたいと思います。

1.地籍調査とは?

人に戸籍があるように、土地には「地籍」があります。

「地籍」とは一筆ごとの土地に関する記録のことで、登記所(法務局)の土地登記簿に所有者、地番、地目、地積などが記録されており、その地図(公図)が備え付けられています。

地籍が登記所の登記簿や公図に記載されて初めてその土地に関する様々な権利が保護されることになります。 

現在の公図が明治時代初期に作られた地図をもとにしているものが多く、測量技術が現在のように精密でなかったことなどから、土地の境界や面積など不正確なものが少なくなく、土地の位置や境界など、先祖代々言い継がれてきたものも多く、その間にあいまいになったり間違った情報となっているものもあるようです。

地籍調査とは、土地の物理的状況について現地調査をして、その結果に基づき公図や登記簿を修正していく作業です。

2.地籍調査の効果

地籍調査は以下のようなことに役立ちます。

土地境界をめぐるトラブルの未然防止

土地取引の円滑化

災害復旧の迅速な対応

公共事業の円滑化

課税の適正化

まちづくり

3.地籍調査の流れ

地籍調査は以下のような流れで進めます。

1

住民への説明会

2

一筆地調査

3

一筆地測量

4

地籍図の作成・面積の測定/地籍簿の作成

5

成果の閲覧・ 確認

6

登記所への送付/成果の利活用

4.地籍調査でできること・できないこと

地籍調査で以下のようなことができます。

分筆(分割)

合筆(合併)

地目変更

地籍調査で以下のようなことはできません。

所有権移転登録(相続、交換、売買など)

道路(赤線)・水路(青線)

5.筆界未定地

筆界未定地とは、地籍調査の際に、境界(筆界)を確認できなかったため、筆界が決まらないまま処理されてしまった土地です。

境界を確認できない理由としては、筆界について所有者間に紛争があったり、数筆の土地を一区画で利用されていたり、現地で調査を行った際に土地所有者に立ち合ってもらえなかった場合などがあります。

地籍調査の結果、「筆界未定地」となった土地は、所有者の権利が残りますが、原則として、分筆・合筆ができない、地積更正ができない、地目変更ができない、売買や抵当権の設定などが非常に難しくなるなど、事実上動かせない土地となってしまいます。

また、地籍調査終了後に境界が決まっても、測量や登記は土地所有者の個人負担(全額自己負担)となり、多額の費用がかかります。

6.最後に

実際に地籍調査に立ち会いましたが、上記のことを知っていて損はないと感じました。

2024年11月26日 國村 年

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事務所通信2024年10月

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2024年10月号『手形のサイトが60日になる!』

今までは、繊維業は90日、その他の業種は120日を超えるサイトの手形等が、下請法が規制する「割引困難な手形」等に該当するおそれのあるものとされてきました。

ところが、来月から60日になるのです。

そこで今回は、『手形のサイトが60日になる!』について、書きたいと思います。

1.概要

中小企業庁及び公正取引委員会は、1966年以降、業界の商慣習、親事業者と下請事業者との取引関係や金融情勢等を総合的に勘案し、繊維業は90日、その他の業種は120日を超えるサイトの手形等を、下請法が規制する「割引困難な手形」等に該当するおそれのあるものとして指導してきました。

こうした長期の手形等が下請事業者の資金繰りの負担となっていることなどを踏まえ、中小企業庁は、中小企業の取引適正化の重点課題の1つに「支払条件の改善」を位置づけ、業種別の下請ガイドラインや自主行動計画などを通じ、手形等による支払期間の短縮を推進してきました。

2021年3月に、下請法の運用の見直しについて検討を行うこととしていましたが、今般、改めて各業界の商慣行、金融情勢等を総合的に勘案し、意見公募手続を経たうえ、サイトが60日を超える手形等が下請法上の「割引困難な手形」等に該当するおそれがあるものとして、指導の対象とする運用の見直しを公正取引委員会が公表しました。

2.新たな運用の適用開始時期

2024年11月1日以降に交付された手形等につき、新たな運用が適用されます。

3.各団体等への要請

中小企業庁は、公正取引委員会と連名で、各産業の業界団体や、金融機関及びそれを監督する省庁等に対し、以下の内容の要請文を発出しました。

サイトが60日を超える手形等を下請法の割引困難な手形等に該当するおそれがあるものとして指導の対象とする運用が2024年11月1日から始まること。

ファクタリング等の一括決済方式についてはサイトを60日以内とすることに加え、引き続き一括決済方式への加入は下請事業者の自由な意思によること並びに親事業者、下請事業者及び金融機関の間の三者契約によることを徹底すること。

下請法対象外の取引についても手形等のサイトを60日以内に短縮する、代金の支払いをできる限り現金によるものとするなど、サプライチェーン全体での支払い手段の適正化に努めること。とりわけ、建設工事、大型機器の製造など発注から納品までの期間が長期にわたる取引においては、発注者は支払い手段の適正化とともに、前払い比率、期中払い比率をできる限り高めるなど支払条件の改善に努めること。

手形等のサイトの短縮に取り組む事業者からの資金繰り支援の相談に丁寧かつ親身に応じるとともに、事業者の業況や資金需要等を勘案し、事業者に寄り添った柔軟かつきめ細かな資金繰り支援に努めること。

4.最後に

受け取る側は資金繰りが改善、振り出す側は悪化となりますので、ご留意くださいね。

2024年10月25日 國村 年

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事務所通信2024年9月

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2024年9月号『地積規模の大きな宅地!』

面積の広い土地があり、多額の相続税がかかるのではないかと心配されている方がいらっしゃるかもしれません。ところが、面積が一定規模以上の土地に対しては、要件を満たせば、減額することが可能なのです。

そこで今回は、『地積規模の大きな宅地!』について、書きたいと思います。

1.地積規模の大きな宅地とは?

地積規模の大きな宅地とは、三大都市圏においては500㎡以上の地積の宅地、三大都市圏以外の地域においては1,000㎡以上の地積の宅地をいいます。

ただし、以下の(1)から(4)のいずれかに該当する宅地は、地積規模の大きな宅地から除かれます。

(1) 市街化調整区域に所在する宅地
(2) 都市計画法の用途地域が工業専用地域に指定されている地域に所在する宅地
(3) 指定容積率が400%(東京都の特別区においては300%)以上の地域に所在する宅地
(4) 財産評価基本通達22-2に定める大規模工場用地

三大都市圏とは、以下の地域をいいます。

(1) 首都圏整備法第2条第3項に規定する既成市街地または同条第4項に規定する近郊整備地帯
(2) 近畿圏整備法第2条第3項に規定する既成都市区域または同条第4項に規定する近郊整備区域
(3) 中部圏開発整備法第2条第3項に規定する都市整備区域

2.地積規模の大きな宅地の評価の対象となる宅地

地積規模の大きな宅地の評価の対象となる宅地は、路線価地域に所在するものについては、地積規模の大きな宅地のうち、普通商業・併用住宅地区および普通住宅地区に所在するものとなります。

また、倍率地域に所在するものについては、地積規模の大きな宅地に該当する宅地であれば対象となります。

3.評価方法

(1)路線価地域に所在する場合

評価額
=路線価×奥行価格補正率×不整形地補正率などの各種画地補正率×規模格差補正率×地積(㎡)

(2)倍率地域に所在する場合

以下に掲げる①の価額と②の価額のいずれか低い価額により評価します。

その宅地の固定資産税評価額に倍率を乗じて計算した価額
その宅地が標準的な間口距離および奥行距離を有する宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額に、普通住宅地区の奥行価格補正率や不整形地補正率などの各種画地補正率のほか、規模格差補正率を乗じて求めた価額に、その宅地の地積を乗じて計算した価額

4.規模格差補正率

規模格差補正率は、以下の算式により計算します(小数点以下第2位未満は切り捨て)。

規模格差補正率
=(A×B+C)÷地積規模の大きな宅地の地積(A)×0.8

上記算式中の「B」および「C」は、地積規模の大きな宅地の所在する地域に応じて、それぞれ以下に掲げる表のとおりです。

(1)三大都市圏に所在する宅地

地積

普通商業・併用住宅地区、普通住宅地区
B C
500㎡以上1,000㎡未満 0.95 25
1,000㎡以上3,000㎡未満 0.90 75
3,000㎡以上5,000㎡未満 0.85 225
5,000㎡以上 0.80 475

(2)三大都市圏以外の地域に所在する宅地

地積

普通商業・併用住宅地区、普通住宅地区
B C
1,000㎡以上3,000㎡未満 0.90 100
3,000㎡以上5,000㎡未満 0.85 250
5,000㎡以上 0.80 500

5.最後に

2018年に新設された、通常の土地より大きな土地については評価減ができるというものですから、適用できるものについてはきちんと適用しましょう。

2024年9月27日 國村 年

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2024年8月号『農地の評価!』

現在、相続税の申告を複数件お手伝いしておりますが、そのうち7~8割の方の相続財産として出てくるのが農地です。

しかし、農地は、相続人の方が思っているより相続税の評価が高いことがほとんどです。

そこで今回は、『農地の評価!』について、書きたいと思います。

1.農地の区分

農地については、農地法などにより宅地への転用が制限されており、また、都市計画などにより地価事情も異なりますので、これらを考慮して、農地の価額は以下の4種類に区分して評価します。

(1) 純農地
(2) 中間農地
(3) 市街地周辺農地
(4) 市街地農地

2.純農地および中間農地の評価

純農地および中間農地の価額は、倍率方式によって評価します。

倍率方式とは、その農地の固定資産税評価額に、国税局長が定める一定の倍率を乗じて評価する方法をいいます。

3.市街地周辺農地の評価

市街地周辺農地の価額は、その農地が市街地農地であるとした場合の価額の80%に相当する金額によって評価します。

4.市街地農地の評価

市街地農地の価額は、宅地比準方式または倍率方式により評価します。

宅地比準方式とは、その農地が宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額からその農地を宅地に転用する場合にかかる通常必要と認められる1㎡当たりの造成費に相当する金額を控除した金額に、その農地の地積を乗じて計算した金額により評価する方法をいいます。

これを算式で示すと、以下のとおりです。

市街地農地の評価額=(その農地が宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額-1㎡当たりの造成費の金額)×地積

上記算式の「その農地が宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額」は、具体的には、路線価方式により評価する地域は、その路線価により、また、倍率地域は、評価しようとする農地に最も近接し、かつ、道路からの位置や形状等が最も類似する宅地の評価額(宅地としての固定資産税評価額×宅地としての評価倍率)を基として計算します。

なお、その農地が宅地であるとした場合において、財産評価基本通達20-2(地積規模の大きな宅地の評価)の定めの適用対象となるとき(同通達21-2(倍率方式による評価)ただし書において同通達20-2の定めを準用するときを含みます。)には、同項の定めを適用して計算します。

また、「1㎡当たりの造成費の金額」は、整地、土盛りまたは土止めに要する費用の額がおおむね同一と認められる地域ごとに、国税局長が定めており、国税庁ホームページで閲覧することができます。

「市街地周辺農地」および「市街地農地」の価額は、「市街地農地等の評価明細書」を使用して評価することができます。

5.最後に

相続税の計算で意外と難しいのが、市街地周辺農地や市街地農地ですので、現地を確認して、慎重に計算しましょう。

2024年8月27日 國村 年