「企業価値417億円」Origamiをメルカリが買収した理由!
2020年1月23日、メルカリの100%子会社でスマホ決済サービスを提供するメルペイが、同じくスマホ決済サービス企業であるOrigami(オリガミ)を買収すると発表しました。
このときは、買収金額は非公表でした。
メルカリ広報担当者はBusiness Insider Japanの取材に対し、Origami Payとメルペイのサービスは今後統合される方針と説明しました。
ただし、加盟店やアプリを使っているユーザーには今後、移行を促していくものの、Origami Payアプリそのものがメルペイに切り替わったり、加盟店がそのままメルペイ加盟店として吸収されるわけではない、としました。
買収後も当面、法人格としてのオリガミは存続します。
これは、トヨタが提供する決済アプリ「TOYOTA Wallet」の決済機能や、全国の数百の信用金庫へのキャッシュレス決済基盤など、企業向けの決済技術をオリガミが提供しているためだそうです。
とはいえ、この時点では基本合意という段階でもあり、買収後の人材配置については「現時点では何も決まっていない」(メルペイ広報)とのことでした。
これまでもメルペイは加盟店開拓に関する協業などのために、他の事業者との連携は密にとってきました。
オリガミの買収交渉のスタート時期について、メルペイ広報は「(2019年)11月以降、業界全体の動きが加速していった」と説明しました。
「11月」とは、言うまでもなくヤフーとLINEの経営統合発表のことです。
キャッシュレス決済の巨大プレイヤーどうしが1つのグループになることによる「業界再編」が急速に進む中で、メルペイ、オリガミはさらに一歩踏み込んだ「協業」を模索し、それが今回の買収に至ったのです。
オリガミは地方の個人店舗など、中小事業者のネットワークを持っており、中規模の事業者に強みのあるメルペイにとっては、相互に補完関係のあるビジネスでした。
オリガミは2012年に創業し、2016年から他社に先駆けてQRコードをつかったキャッシュレス決済サービスを国内で展開してきました。
Origami Payを導入する加盟店は、累計で19万か所で、日本経済新聞は2019年11月に発表した「NEXTユニコーン調査」で、オリガミの企業価値を417億円としていました。
一方、DIAMOND onlineによると、2020年1月23日には両社は売却価格を非公表としていましたが、複数の関係者は1株1円だったことを明らかにしたようです。
オリガミの株数は259万株であるため、譲渡価格は総額約259万円だったことになります。
日本経済新聞社が2019年11月に発表した発表した「NEXTユニコーン調査」では、オリガミの企業価値は417億円と算定されており、今回の売却価格は市場評価を大きく下回ったことになります。
金融関係者は「フィンテック(金融とITの融合)・バブルの崩壊」と語っています。
複数の関係者によると、オリガミは売却発表と同時に社内向けに大規模な人員削減策を公表したようです。
社員185人のうち約9割にあたる160~170人規模のリストラ策に踏み切るようです。
大半の社員は1月末が最終出社となり、2月末で退職になるようです。
これは事実上の解雇に当たりますが、今回のメルカリへの売却は実質的な経営破綻となるため、「人員削減の必要性という項目に該当し、いわゆる整理解雇の位置付けだ」と関係者は明かしたようです。
ダイヤモンド編集部の取材に対し、譲渡価格についてメルカリの広報担当者は「非公表のためノーコメント」とし、リストラの人数についてはオリガミとメルカリの両広報担当者共に「両社が最大に強みを発揮できる適切な人員配置を検討している」と語るにとどめました。
オリガミはコスト面の負担が大きい一方で収益が追い付かず、2020年1月中旬の段階で「残り数週間で資金がショートするレベル」(関係者)だったようです。
康井義貴社長をはじめ、オリガミ幹部は資本調達に走り回りましたが、出資先が見つからずに八方ふさがりとなり、最後にたどり着いたのがメルカリでした。
康井社長は1株1円という破格での売却の代わりに従業員の雇用維持を申し入れたが、従業員の削減が「メルカリからの買収条件だった」(オリガミ元社員)ようです。
日本企業では、買収元が買収先企業の従業員の大リストラに着手する事例は少ないが、「スタートアップの救済であれば妥当だ」とベンチャーキャピタル関係者は指摘しています。
オリガミがしのぎを削っていたキャッシュレス決済の分野は、官民一体による推進と消費増税の緩和策として取られたポイント還元制度などを追い風に、多数の新規プレイヤーの参入が続いていました。
中でもオリガミは、2012年創業でいち早くキャッシュレス決済に進出した業界のフロントランナーで、信用金庫の中央銀行としての役割を担う信用中央金庫と資本業務提携を結び、地方の加盟店開拓にも取り組んでいます。
しかしながら、ソフトバンクグループ傘下の PayPay(ペイペイ)は、消費者還元キャンペーンを繰り返して顧客を拡大しました。
加えて、ヤフーとLINEの経営統合によりLINEPayの顧客基盤が加わることになりました。
PayPayの加盟店数185万か所に対して、オリガミは約19万か所にとどまり、すでに大きく劣後しています。
レガシー(負の遺産)を抱える銀行や証券会社など従来の金融プレイヤーがサービス改革に出遅れる中、イノベーターとして勃興してきたフィンテック・ベンチャーですが、「これまでは、赤字でも粗利益さえ増やせば資金は後から付いてくるというビジネスモデルだったが、大きな転機に差し掛かっている」と話す金融業界関係者もいるようです。
現在、多額のリスクマネーがフィンテック・ベンチャーに流れていますが、今後はより一層スタートアップの真贋が問われるでしょう。
何ちゃらPayがたくさんありますが、複数社に集約されるのが目に見えている中で、オリガミが買収されるのは当然の結果だと思います。
利用者としては、何ちゃらPayの数をできれば絞りたいはずで、使える店が少ないオリガミなどは淘汰されてしまうでしょう。
2019年11月の企業価値が417億円だったというのが驚きですね。
弊事務所も加盟店になっているPayPayも、手数料がいらないということで加盟店を増やしているはずですから、手数料を取り始めると、加盟店はおそらくかなり減ると思います。
PayPayですら、将来稼いでいけるのか疑問なわけですから、加盟店の少ないそれ以外のところは将来性があるのでしょうか?
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親族外への事業承継の税優遇として株式の売却が5,000万円までを上限に検討!
日本経済新聞によると、後継者難の中小企業経営者に第三者への事業譲渡を促す新たな税優遇について、経済産業省と財務省は、売却額5,000万円を上限とする案の検討に入ったようです。
後継者難による廃業を防ぎつつ、過剰な税優遇による不公平や制度の不正利用が生じないよう制限をかける方向だそうです。
中小企業のオーナー経営者が、自分の会社を他社などに売ると、売却額と売った株の簿価との差分だけ利益が生じ、通常は20%の所得税がかかります。
2020年度の税制改正で、経済産業省は、この利益にかかる税負担を一定条件のもとで軽減したり、先送りしたりできる税優遇を創設するよう求めています。
今後、与党の税制調査会で議論し、制度創設を判断するようです。
財務省側からは制度の乱用や税逃れを懸念する声が上がっています。
このため経産省は、税優遇を利用できる対象に制限を設け、売却額5,000万円を上限とする案を提示しました。
また、伝統産業やサプライチェーン維持に重要な役割を果たす「地域経済に不可欠な存在」と、国に認定された中小企業だけが、税優遇を使えるようにすることも盛り込みました。
会社の買い手に対して一定期間、事業を続けることを求めることも盛り込まれるようです。
前オーナーから会社を買い、すぐに重要な資産を売却したり事業をたたんだりすると、税優遇をしてまで事業承継を支援した意味がなくなるためです。
もしそのような事態になったら、売り手側の前オーナー経営者に、軽減された税負担分を国庫に返納させる仕組みにする案も有力です。
「一定期間」をどのくらいの長さとするかについては、経済産業省と財務省の間で意見の違いが出ているようです。
できるだけ短くしたい経産省側は1年程度を考えているようですが、財務省側は制度の悪用を防ぐためにも5年程度は必要だとみているようです。
親子など親族内の承継を後押しする「事業承継税制」では、5年間は事業を継続するという条件を課しているからです。
経済産業省によると、2025年には全国の中小企業の経営者の約6割が70歳以上になり、その半分の約127万人はまだ後継者が未定だそうです。
経済産業省は、後継者難による廃業を回避するため、親族内の事業承継に限らず第三者への譲渡にも支援が必要と主張しています。
一方、第三者への承継は要するに「身売り」そのもので、親族内での承継とは全く異なるという指摘も与党や財務省から出ています。
中小企業の後継者が見つからなかったり、身売りがうまくいかなかったりする理由は税以外にもあるという意見も根強く、与党税調でも主な議論のテーマの一つになりそうです。
個人的には、税負担が重いため、事業承継をしないケースがそれほどあるのだろうかと思いますが、優遇制度を作れば、第三者承継(いわゆるM&A)という形の事業承継も少しは進むのかなぁとも思います。
所得税の世界では、20パーセントの税率というのはそれほど高くないからです。
また、5,000万円という上限を決めると、テクニカルに株式の譲渡価額を5,000万円以下に抑えるようなことが行われるでしょうから、その辺りも含めて、慎重に決めて欲しいなぁと思います。
親族外への事業承継の税優遇として株式の売却が5,000万円までを上限に検討していることについて、どう思われましたか?
ソフトバンクグループの節税策を受け財務省が抜け穴封じへ!
財務省は、ソフトバンクグループ(SBG)が用いたM&A(合併・買収)に絡んだ節税策を防止する方針を固めたようです。
同一グループ内の資本取引で実態に変化がないにもかかわらず巨額の赤字を意図的につくり出して、ほかの部門の黒字と相殺して法人税を減らす手法を認めないようにします。
予期せぬ大規模な節税につながった制度の抜け穴をふさぎます。
財務省が問題視しているのは、子会社などが中核事業を放出して企業価値が落ちた状態にしてから売却し、簿価と売却額の差だけ赤字を発生させる仕組みです。
このため、子会社の中核事業を手放す際には簿価も目減りさせるルールを軸に検討するようです。
子会社を売却しても簿価と売却額の間に差がなくなり、意図的に赤字をつくれなくなります。
与党の税制調査会での議論も踏まえて、2020年度の税制改正大綱に関連法令の見直し方針を盛り込みたい考えのようです。
SBGは買収したアーム・ホールディングス(HD)と、その中核事業を担う子会社の「アーム・リミテッド」に関する資本取引で大規模な節税を実施しました。
開示資料などによると、SBGは2018年3月にリミテッド株の4分の3をアームHDから配当という形で吸い上げました。
これにより、アームHDの実質的な価値は大きく目減りしました。
SBGは買収時より価値が大幅に落ちたアームHD株の8割弱を同じく傘下にあるソフトバンク・ビジョン・ファンドなどに売却して赤字を発生させました。
この赤字をほかの事業で生じた黒字と相殺し、SBGの法人税負担はゼロになりました。
中核事業のアーム・リミテッドは親会社が変わりましたが、SBGの傘下にあることに変わりはありません。
一つ一つの取引には違法性はなく、制度の抜け穴となっていました。
国税庁からの相談を受け、財務省は今夏ごろから対策の検討を始めていたようです。
一部有識者の間では、包括的に税逃れを制限する規定をつくるべきだという意見もあったようです。
こうした規定は一般的租税回避防止規定(GAAR)と呼ばれ、英国やインドなども導入しています。
ただし、発動の判断が難しいこともあり、各国当局もまだGAARを使いこなせていない状況です。
企業側からは、税務当局の出方が読みづらくなり、予期しない追徴課税を受ける可能性も高まるとして慎重な声も多いようです。
財務省は現段階でGAARの検討に踏み込まず、個別の節税策を封じることにしました。
僕自身、税理士なので、こういったスキームを提案できる税理士を尊敬しますし、ある種、それが税理士の存在価値の一つだと思っていますが、世論はそうではありませんね。
最近、良い節税スキームがあると、国税庁も研究して、結構早く改正してきますね。
結局のところ、税法の不備でしょうから、国税庁も悔しいんでしょうね。
一方で、現行ではO.K.という表れでもあります。
僕も、税理士として、いつの日か何か国税庁に塞がれるようなスキームを編み出したいですね(笑)。
ソフトバンクグループの節税策を受け財務省が抜け穴封じを行うことについて、どう思われましたか?
ソフトバンクグループの納税ゼロで税法・資本取引の対応の遅れが露呈!
このBlogで何度も取り上げていますが、ソフトバンクグループ(SBG)が4,200億円の申告漏れを国税当局に指摘され修正申告しました。
問題は計上時期が異なった「期ずれ」にとどまりません。
2018年3月期に国内の法人税がゼロとなった裏側には、グループ内の株式移転のみで2兆円もの損失が生じる仕組みがあったのです。
企業グループの複雑化と資本取引の増加に対応できない税制の不備が露呈したのです。
国税当局は一連の税務処理を調査しましたが、不当な税逃れとまではいえないとの結論に至ったようです。
専門家は「一つ一つの行為は適法だが、全体としてみれば、税制の穴をつく租税回避行為との印象を受ける」(財務省主税局で税法の企画立案を長く担当した朝長英樹税理士)と指摘しています。
SBGは「税法に従って適正な処理を行った」とコメントしており、資本取引については「海外事業における最適な資本関係を実現するため」としています。
資本取引の流れはこうです。
SBGは2016年9月、イギリスのアーム・ホールディングス(HD)の全株を3.3兆円(当時の為替レート)で買収しました。
アームHD自体は持ち株会社で、価値の大半は半導体の設計子会社、アーム・リミテッドにあります。
イギリスの開示資料や関係者によると、アームHD社は2018年3月23日、SBGにリミテッド株の75%(2.6兆円)を現物配当しました。
同日、今度はSBGがアームHD株の78%を傘下の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」などに譲渡しました。
配当を出し、価値が落ちたアームHD株を譲渡したため2兆円の損が生じました。
業績悪化などの事態があったわけではなく、親会社が自ら配当として吸い上げたために損は発生したのです。
再編後もSBGはリミテッドの支配権の100%を間接分も含めて保有します。
実態に変化がないのに税のメリットを受けられたのです。
背景には2つの税の論点があります。
1つは日本の2009年度の税制改正で導入された「外国子会社配当益金不算入制度」です。
海外子会社からの配当は95%が益金不算入(非課税)となります。
二重課税を避けるとともに、海外の利益を日本に還流させ、経済を活性化する狙いがあります。
この制度では株式による現物配当も認められている点をSBGは活用したのです。
今回、SBGが受け取ったリミテッド株の2.4兆円分は非課税となったのです。
課税額が少なく、移転が容易になりました。
税務上の価値評価も影響しました。
日本の税法は原則、取得時の帳簿価格を重視します。
アームHDの簿価は、リミテッド株の75%を配当に出した時点で残り25%分の0.7兆円に修正されるのが実態に合います。
しかしながら、簿価は買収時のまま維持され、譲渡時に時価との差が損となってしまうのです。
専門家は「アームHD株の簿価が、適切に調整される規定が現行法では存在せず、不適切な譲渡損が発生してしまった」(アンパサンド税理士事務所の山田典正・代表税理士)と指摘しています。
日本の法人税法には、組織再編などで税負担を不当に減少させたと国税当局が判断した場合は申告内容を否認できる規定があるのです。
法人税法第132条の「行為計算否認規定」です。
ただし、何をもって「不当」とするかは法律上の明文規定はなく、見解の違いが生じやすくなっています。
この規定が適用され、約58億円を追徴課税された大手レコード会社が処分の取り消しを求めた訴訟では、2019年6月に東京地裁は国税当局の処分を取り消す判決を言い渡しました。
組織再編に伴う資金の借り入れなどが問題となりましたが、「経済的合理性がある」と判断されたのです。
今回のSBGでも同規定の適用が検討されたもようですが、国税当局は調査の結果、不当に法人税を減少させたとまではいえないと結論づけました。
企業活動は複雑化し、税の「抜け穴」全てはふさげません。
欧米では行きすぎた租税回避に対応できる「一般的否認規定(GAAR)」があります。
「日本でもGAARの導入議論が必要で、その際には適用条件も明確にすべきだ」(森信茂樹・東京財団政策研究所研究主幹)との声が強まっているようです。
組織再編をやるうえで、税額ができるだけ少なくなるような手法を使うのは、経済的合理性を考えれば当然かと思います。
結局のところ、税制の不備なのですから、おかしなところがあれば直せばよいと思いますし、条文を作るときから、もっと色々なことを想定して作らないといけないのではないかと思います。
そこには、高度な専門知識が不可欠だと思いますので、条文を作る側の方も常に情報を収集し、スキルアップをはからないと厳しいでしょうね。
批判もあるかと思いますが、僕も税理士ですので、これだけ巨額な取引に関し、こういったスキームを描いた税理士もすごいと思いますし、そういうことが税理士の存在価値を高めるのだと思っており、提案のできる公認会計士・税理士でありたいと思っています。
ソフトバンクグループの納税ゼで税法・資本取引の対応の遅れが露呈したことについて、どう思われましたか?
ソフトバンクグループがヤフーの再編で税務メリット!
ソフトバンクグループ(SBG)は、先日、ヤフーを巡るグループ内の資本再編を完了させました。
ヤフーの親会社はSBGから国内通信子会社ソフトバンク(SB)に移り、5,000億円強の資金がSBGに入いります。
ヤフーの第三者割当増資と自社株TOB(株式公開買い付け)を組み合わせたことで、SBGとSBの間で株を直接譲渡するより、SBG側に税メリットが生じる見通しです。
SBGは「節税が目的ではない」としていますが、子会社がヤフーから受け取る資金の大部分が課税対象とならない可能性が高くなっています。
2018年3月期もグループ内の資本移動に関連し、巨額の税務上の欠損金を出して法人税を払っていません。
資金流出を抑え、株主価値の最大化を図る手法とみるべきなのでしょうか?
税務の視点から追っています。
今回の再編で、ヤフーの親会社はSBGからSBに移ります。
SBにとってはこれまで兄弟会社だったヤフーと、親子の関係になるわけです。
SBの宮内謙社長は独立した上場会社として通信以外の新規事業に成長を求めるには、兄弟会社のヤフーとの関係を深めるのがベストと考えました。
事業上の「シナジー(相乗効果)」が再編の狙いと説明しています。
再編のスキームは入り組んでいます。
SBGは同社からSBに直接ヤフー株を譲渡するのではなく、ヤフーの自社株買いや増資を組み合わせる手法をとりました。
まず、ヤフーがSBを割当先とする第三者割当増資を実施しました。
新株約15億株を発行し、4,565億円を調達します。
次にヤフーはTOBによって自社株を買い取ります。
この自社株買いにヤフー株を約18億株持つSBGの中間持ち株会社ソフトバンクグループジャパン(SBGJ)が保有株の売却で応じます。
この一連の取引で、最も税務上のメリットを享受するのは、SBGJです。
SBGJはTOBに応募し、5,145億円を受け取りますが、この大半について税金がかからないのです。
読み解くヒントは「みなし配当」です。
今回のスキームでいえば、SBGJがTOBに応募して受け取る資金のうち、ヤフーの資本金などの額を超える部分を指します。
公表された情報をもとに試算しています。
計算式は、TOBの対価から、ヤフー株の資本持分と負債利子を引いた額です。
SBGJはヤフー株の約36%を保有します。
資本持分の計算には、税務上の資本金を使いますが、開示されていないため、会計上の数値で推計しています。
ヤフーの資本金と資本剰余金(単体)は合計で約130億円です。
この36%にあたる約47億円と、負債利子(非開示、比較的少額と仮定)を5,145億円から差し引きます。
概算では、5,000億円を超える規模の金額が「みなし配当」となります。
SBGJはヤフー株の約36%、つまり3分の1以上を保有していました。
法人税法の規定により、TOBに応じてSBGJが得た売却代金は配当を受け取ったとみなされ(みなし配当)、3分の1以上を保有する株主の場合、大半が課税対象にならない「益金不算入」(税金の計算にいれなくてよい)となります。
次にSBGJとヤフーの間の譲渡損益を考えます。
TOB対価からヤフー株の取得原価を差し引いて計算しますが、SBGとヤフーは取得原価について「開示しない」としており、ここでは推計が難しくなっています。
ヤフー株の売却によって益がでれば課税され、損が出れば他の所得と通算して税金を減らすことができるのです。
今回のような再編スキームをとらずに、単純にSBGがSBに直接ヤフー株を譲渡したとしたらどうなるでしょうか?
売却価格から取得価格を引いた差額は利益として、課税対象になります。
つまり、税務上は正反対の結果となるのです。
組織再編や同族会社の間の取引では、企業と国税当局の間で係争が起きることがあります。
IBM`が子会社株の売買に伴う税務上の赤字を連結納税を使ってグループ内で相殺したことなどが問題となりました。
東京国税局は「節税が主目的だ」として、法人税法132条(行為計算否認)の規定を使い、約3,995億円の申告漏れを指摘しました。
ただし、IBM`側が不服として争った結果、2016年には課税が取り消される判決が確定しました。
今回の案件について、専門家の評価は分かれているようです。
財務省主税局で税法の企画立案を長く担当した朝長英樹日本税制研究所代表理事は、「IBM訴訟と同様の問題があるとの指摘を受けるリスクは残る。取引が経済合理性のあるものか、そして不自然・不合理な点がないかどうかが当局の判断の焦点となる」と指摘しています。
一方、税務関連の訴訟を多く手掛ける鳥飼総合法律事務所の高田貴史税務部部長は、「節税のみを目的にした再編だと明確に示す情報がない限り、(法人税の負担を不当に減少させたと指摘するのは)かなり難しいだろう」とみています。
「税務のプロなら当然とりうる手段だ。グループ外に資金流出せず、節税メリットもとれる」と話しています。
僕は、後者の立場です。
節税が目的ではなく、組織再編などを行う際に、税金が多額にかかる手法とほとんどかからなない手法があるのであれば、かからない手法を検討するのが当然ではないかと思います。
税務は知らない人は損をする世界ですし、同じことをするにしても、やり方によって税額に大きな差が生じるのは税法の不備なのではないかと思います。
こういったことで、納税者の主張が認められ、国税局の考えが変わっていくのを期待したいと思います。
ソフトバンクグループがヤフーの再編で税務メリットを取っていることについて、どう思われましたか?