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スピンオフ普及の試金石である第1号のコシダカHDの株価が急落!

 

 税制面の優遇措置がある「スピンオフ制度」を使ってフィットネス事業子会社を分離すると発表したコシダカホールディングス(HD)の株価が、急落しました。
 日本経済新聞によると、スピンオフ制度が2017年に整備されてから初の案件で、分離上場にあたっての新株発行と業績の伸び悩みが嫌気されたようです。
 ただし、海外投資家が警戒する親子上場問題の解決につながる大きな意義があります。

 コシダカHDは「カラオケまねきねこ」ブランドのチェーン店を運営しています。
 「(本体と子会社の)両社の企業価値を高めることになる判断だ」と、長年調査し続けてきた日本ベル投資研究所の鈴木行生代表取締役主席アナリストは、スピンオフ制度の活用を高く評価していました。

 通常は事業や子会社を切り離すと「売却」とみなされて、企業と株主が課税される可能性があります。
 しかしながら、スピンオフ制度では一定の要件を満たせば課税されないのです。

 分離するのはフィットネス事業を手掛けるカーブスホールディングスです。
 先日発表した2019年8月期決算のセグメント別業績によると、カラオケ事業の営業利益は前の期比43%増の45億円で、カーブスは6%増の56億円です。
 連結営業利益のほとんどをこの2事業で稼いでいます。
 カーブスは女性向けですが、海外展開や男性向け店を広げて成長を目指すようです。
 分離して独立したブランドとして経営する方が、企業価値を高められると判断しました。

 ところが、コシダカHD株は寄り付き前こそ買い注文を集めましたが、取引が始まると急落しました。
 一時前日比12%安まで売り込まれ、2カ月ぶりの安値を付けました。
 7月に発表した2019年8月期の上方修正値に営業利益、経常利益の実績が届かなかったことで「信用取引を手掛ける個人などが手じまった」(国内証券トレーダー)ようです。
 終値は10%安でした。

 既存株主はスピンオフに伴い、コシダカHD株と新しいカーブス株を現物で受け取るため、理論的には大幅な減価は生じません。
 分離するカーブスは2020年3月に予定する上場にあわせ公募増資も予定しています。
 希薄化懸念はありますが、詳細を詰めるのはこれからです。

 コシダカHD株に投資するある日本株投信の運用担当者は「企業の説明や11月の(スピンオフを決議する)株主総会を踏まえじっくり考えたい」といっています。
 カラオケ事業が不振の時はカーブス事業が、カーブスが伸び悩むときはカラオケが全体をけん引するなど、補完性もあると見るためです。

 個別の進捗もさることながら、市場参加者の多くは第1号案件が現れて「日本でも活発にスピンオフが実施される可能性が出てきた」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘チーフ投資ストラテジスト)とみているようです。

 これまでは事業や子会社を独立させるには、丸ごと売却するか一部株式を売り出して上場させる選択肢が中心でした。
 結果として、親子上場が増える一因となってきました。
 ただし、運用会社の議決権行使の基準は厳しさを増しており、政府も見直しを求めるようになりました。
 スピンオフ制度が広がれば、親子上場は次第に減っていく可能性があります。

 アメリカではイーベイやダウ・デュポンなど大手企業も頻繁に実施しています。
 最近では、サードポイントがソニーに半導体事業のスピンオフを求めています。
 コシダカHDと、上場企業となるカーブスHD株がどう評価されるか、日本市場の構造変化を加速させるための試金石となりますね。

 個人的には、親子上場(最近では、ひ孫まで上場しているケースが現れています。)には疑問を抱いていますので、スピンオフが普及して欲しいと思っています。
 そのためには、第1号として株価が上がって欲しいですね。

 スピンオフ普及の試金石である第1号のコシダカHDの株価が急落したことについて、どう思われましたか?

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