事務所通信2019年5月

事務所通信

2019年5月号『皇族にも税金はかかるのか?』

 2019年4月30日に前天皇陛下が退位し、5月1日に新しい天皇陛下が即位され、元号が『平成』から『令和』になりました。

 天皇陛下譲位は202年ぶりだそうです。

 今回、皇族も税金がかかるのだろうかと疑問に思ったりしていないでしょうか?

 そこで今回は、『皇族にも税金はかかるのか?』について、書きたいと思います。

1.所得税

 所得税法第9条に、所得税を課さないものとして「皇室経済法第4条第1項(内廷費)及び第6条第1項(皇族費)の規定により受ける給付」が規定されています。

 ここで、『内廷費』は、天皇並びに皇后、太皇太后、皇太后、皇太子、皇太子妃、皇太孫、皇太孫妃及び内廷にあるその他の皇族の日常の費用その他内廷諸費に充てるものとされています。
 また、『皇族費』は、皇族としての品位保持の資に充てるために、年額により毎年支出するもの及び皇族が初めて独立の生計を営む際に一時金額により支出するもの並びに皇族であつた者としての品位保持の資に充てるために、皇族が皇室典範の定めるところによりその身分を離れる際に一時金額により支出するものとされています。

 よって、皇族であっても、『内廷費』や『皇族費』以外のもの、例えば、講演料や印税などについては所得税が課されるのです。

2.相続税

 相続税法第12条に、相続税の課税価格に算入しないものとして「皇室経済法第7条(皇位に伴う由緒ある物)の規定により皇位とともに皇嗣が受けた物」が規定されています。

 『皇位に伴う由緒ある物』は、例えば、『三種の神器』(八咫鏡(やたのかがみ)、八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)、草薙剣(くさなぎのつるぎ))などがあります。

 よって、皇族であっても、『皇位とともに皇嗣が受けた物』以外のもの、例えば、株式などについては相続税が課されるのです。

 ちなみに、前天皇陛下が昭和天皇から相続したときは、非課税になったものは合計580件で、遺産9億955万7千円を相続し、相続税を約4億2,800万円納税したと報道されています

3.贈与税

 今回は、天皇陛下譲位ゆえ、相続ではなく贈与ということになります。

 相続税については、2.に記載のとおり、相続法に規定があるのですが、贈与税については、規定はありません。

 なお、退位による生前贈与は今まで想定されておらず、新たに設けられた天皇の退位等に関する皇室典範特例法の規定により、今回の皇位継承に限り、『皇位とともに皇嗣が受けた物については、贈与税を課さない。』とされ、いわゆる相続開始前3年間の贈与の足し戻しもされないことになっています。

4.最後に

 皇族にも所得税や相続税や贈与税が課されるケースがあることは、意外ですよね。

 今回、前天皇陛下のご挨拶を聞くと、天皇制は日本にとって今後も必要であり、非課税制度でいつまでも財産を維持し続けてほしいなぁと強く思いました。

2019年5月31日 國村 年

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