M&A・組織再編

<参考>
時価純資産法(または簿価純資産法)に数年分の利益を加算する場合
時価純資産法(または簿価純資産法)により算定した純資産に、数年分の任意の利益を加算した金額を譲渡額とする場合もある。

なお、加算対象とする利益の種類(税引後利益または経常利益等)及び年数(通常1年~3年)は事例ごとに異なり、交渉によって決まるケースが多い。

パターン 企業グループ内 共同事業 スピンオフ

完全支配関係
(100%)

支配関係(50%)
分割対価要件
主要資産等引継要件  
事業関連要件      
事業規模または
経営参画要件
   
(経営参画要件
の充足が必要)
従業者引継要件  
移転事業継続要件  
株式継続保有要件
(完全支配関係
の継続)

(支配関係
の継続)
 
非支配関係継続要件      

 

『分割型分割』とは、分割対価を分割元会社ではなくその株主に交付する分割のことである。

なお、『分割型分割』は『人的分割』と呼ぶこともある。

会社法上は、『分社型分割』のみ規定されているが、『分社型分割+剰余金の配当』という形で、実質的に『分割型分割』の効果を得られる。

2021年2月25日

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<事前照会の趣旨及び事前照会に係る取引等の事実関係>

1.事実関係

 医療法人である当社は、当社と出資関係のない医療法人Z社との間で、当社を合併法人、Z社を被合併法人とする吸収合併(以下「本件合併」という。)を行うことを予定している。
 本件合併に際し、被合併法人の従業者の雇用関係については、以下のとおりとすることとしている。

(1)本件合併の日の前日における従業者の総数は81名ですが、当該従業者全員は、同日付けで、被合併法人との間の雇用契約を終了(退職)するとともに、被合併法人から退職金の支払いを受ける。

(2)被合併法人の従業者であった81名のうち79名は、本件合併の日において、合併法人との間に新たな雇用契約を締結し、同日から合併法人の従業者として合併法人の業務に従事する。

2.照会要旨

 本件合併は、本件合併の直前において合併法人と被合併法人との間に出資関係がないことから、本件合併が法人税法第2条第12号の8に規定する適格合併に該当するためには、本件合併が同号ハの「被合併法人と合併法人とが共同で事業を行うための合併」に該当する必要があり、この要件の一つである、いわゆる従業者引継要件(法令4の3④三)を満たす必要がある。
 本件合併においては、合併の日の前日に被合併法人の全従業者は、被合併法人との間で締結された雇用契約を終了(退職)し、当該雇用契約は合併法人に承継されないことから、合併法人は被合併法人の従業者を引き継いでおらず、従業者引継要件を満たしていないとも考えられる。
 しかしながら、本件合併後においては、本件合併の前日まで被合併法人の業務に従事していた被合併法人の従業者の総数の80%以上が合併法人の業務に従事することが見込まれていることから、本件合併は従業者引継要件を満たすと考えてよいか?

<照会者の求める見解の内容及びその理由>

1.関係法令

(1)適格合併について

 法人税法上、次のいずれかに該当する合併で被合併法人の株主等に合併法人株式又は合併親法人株式のいずれか一方の株式又は出資以外の資産が交付されないものは適格合併に該当する(法法2十二の八)。

イ.その合併に係る被合併法人と合併法人との間に完全支配関係がある場合の当該合併(法法2十二の八イ、法令4の3②)。

ロ.その合併に係る被合併法人と合併法人との間に支配関係がある場合の当該合併のうち、所定の要件を満たすもの(法法2十二の八ロ、法令4の3③)。

ハ.その合併に係る被合併法人と合併法人とが共同で事業を行うための合併として法人税法施行令第4条の3第4項に掲げる要件(以下「共同事業要件」という。)の全てに該当するもの(法法2十二の八ハ、法令4の3④)。

(2)いわゆる「従業者引継要件」について

 上記(1)ロの所定の要件及び共同事業要件の一つに、いわゆる「従業者引継要件」が規定されている。
 具体的には、合併に係る被合併法人の当該合併の直前の従業者のうち、その総数のおおむね80%以上に相当する数の者が当該合併後に当該合併に係る合併法人の業務に従事することが見込まれていることを、その要件としている(法法2十二の八ロ(1)、法令4の3④三)。
 なお、ここにいう「従業者」とは、役員、使用人その他の者で、合併の直前において被合併法人の合併前に行う事業に現に従事する者をいうこととしている(法基通1-4-4)。

2.当てはめ

 被合併法人であるZ社と合併法人である当社との間には出資関係がないことから、本件合併が適格合併に該当するためには、共同事業要件を満たす必要があり、この共同事業要件の1つである従業者引継要件を満たす必要がある。
 吸収合併が行われた場合、その合併により消滅する法人(被合併法人)の権利義務の全部は合併後存続する法人(合併法人)に承継され(医療法58)、当該合併に際し特段の合意がない限り、被合併法人の従業者の地位も合併法人に承継される。
 一方で、従業者引継要件においては、「合併の直前の従業者のうち、その総数のおおむね80%以上に相当する数の者が当該合併後に当該合併に係る合併法人の業務に従事することが見込まれていること」と規定していることから、当該被合併法人の従業者の地位、具体的には被合併法人の従業者の権利義務や当該被合併法人の従業者と被合併法人との間の雇用契約などが必ずしも合併法人に承継されることまでをその要件とはしていないものと考えられる。
 また、従業者引継要件における「従業者」とは、役員、使用人その他の者で、合併の直前において被合併法人の合併前に行う事業に現に従事する者とされており、その従業者がその合併の直前の従業者に該当するか否かを判断するに当たって、雇用契約があるかどうかといった雇用形態は関係がないものと考えられる。
 以上のことからすれば、被合併法人の従業者の雇用契約が合併法人に承継されるか否かということとは関係なく、被合併法人の合併の直前の従業者の総数のおおむね80%以上に相当する者が合併後に合併法人の業務に従事することが見込まれているのであれば、従業者引継要件を満たすと考えられる。
 本照会では、本件合併の前日に被合併法人であるZ社とその従業者との間の雇用契約は終了(退職)するものの、本件合併後において、被合併法人の合併の直前の従業者全81名のうち79名が引き続き合併法人である当社の業務に従事することが見込まれていることから、従業者引継要件を満たすものと考える。

<回答>

回答年月日
 平成30年11月15日

回答者
 名古屋国税局審理課長

回答内容
 標題のことについては、ご照会に係る事実関係を前提とする限り、貴見のとおりで差し支えありません。
 ただし、次のことを申し添えます。

(1)ご照会に係る事実関係が異なる場合又は新たな事実が生じた場合は、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあります。

(2)この回答内容は名古屋国税局としての見解であり、事前照会者の申告内容等を拘束するものではありません。

 ★リンクはこちら  合併に際し、被合併法人の従業者との雇用契約を終了させ、当該合併後に合併法人において当該従業者を新たに雇用する場合の従業者引継要件の判定

2019年3月11日


『「スピンオフ」の活用に関する手引』を改訂しました

 経済産業省は、我が国企業が収益力(「稼ぐ力」)や中長期的な企業価値の向上に向け、大胆な事業再編を機動的に行うことを可能とするための環境整備に取り組んでいる。
 こうした取組のひとつとして、スピンオフの円滑な実施を支援するため、2018年3月に『「スピンオフ」の活用に関する手引』を公表しているが、今般、平成30年度税制改正の内容を踏まえて当該手引きを改訂した。

<今回の改訂のポイント>
●平成30年度税制改正の内容を反映
 平成30年度に改正された、(1)スピンオフ準備のための完全支配関係内の組織再編の適格要件の緩和、(2)スピンオフ元の会社による証券会社への分割割合等の通知義務について、説明を追加している。

スピンオフとは、企業が「選択と集中」を図るため、自社内の特定の事業部門や完全子会社を切り出して資本関係の無い別会社とし、経営を独立させる取組である。
 経営の独立による迅速、柔軟な意思決定や、資本の独立による独自の資金調達や取引先の拡大が可能となり、スピンオフする側とされる側の双方にとって企業価値向上が期待される。

 ★リンクはこちら  「スピンオフ」の活用に関する手引(平成30年8月)

2018年9月4日


「我が国企業による海外M&A研究会」報告書及び「海外M&Aを経営に活用する9つの行動」

<本件の概要>
 経済産業省は、2017年8月より開催した「我が国企業による海外M&A研究会」等における議論の成果として、(1)日本企業が今後、海外M&Aを有効に活用していく上で留意すべきポイントと参考事例をまとめた報告書及び(2)特に経営者目線で重要なポイントを事例とともにまとめた「海外M&Aを経営に活用する9つの行動」をとりまとめた。

1.背景・目的とこれまでの経緯
 近年、海外M&Aは、激しいグローバル競争の中で、日本企業がスピード感を持った成長を実現していくうえで重要かつ有効なツールとなっている。
 また、これまで国内を主たる事業基盤としてきた企業も含め、海外M&Aの裾野が一層拡大している。
 他方で、海外M&Aに関しては、国内のM&Aや現地法人設立による海外進出と比較しても、制度・言語・文化面の違いをはじめとして難度が高い側面があり、期待された成果を十分挙げられていない事例も少なくない。
 そこで、経済産業省は、2017年8月より、海外M&Aに関し豊富な経験と知見を有する専門家を集めた「我が国企業による海外M&A研究会」を開催し、日本企業が抱える課題やその克服のための取組について、海外M&Aに積極的に取り組む企業へのヒアリングや専門家を交えた議論、公開シンポジウムを通じて検討してきた。

2.「報告書」と「9つの行動」のポイント
 今般、その成果物として、日本企業が今後、海外M&Aを有効に活用していく上で留意すべきポイントと参考事例をまとめた(1)「我が国企業による海外M&A研究会報告書」をとりまとめた。
 さらに、研究会等において、海外M&Aに取り組む上では経営者の果たすべき役割やコミットメントが重要であるとの指摘が多くなされたことを踏まえ、今後の海外M&Aの取組に役立てていただけるよう、特に経営者目線からみて特に重要なポイントについて事例とともに、(2)「海外M&Aを経営に活用する9つの行動」として、簡潔で読みやすい形でとりまとめた。
 海外M&Aの裾野が一層拡大している中、今後、「報告書」や「9つの行動」の浸透を目指す。
 「報告書」と「9つの行動」の主なポイントは以下のとおりである。

(1)報告書のポイント
 海外M&Aを企業の成長に有効活用するためには、経営トップがプロセス全体に主体的にコミットして、リーダーシップを発揮した上で、個別案件の実行力のみならず、戦略ストーリーの構想力、基盤としてのグローバル経営力を併せ持つことが重要である。
1.「海外M&Aの実行力」
 海外M&Aを効果的に活用していく上では、デュー・デリジェンスやバリュエーション、契約交渉といったM&Aのディール実行に関わる専門的な知見やスキル、買収契約成立後の統合プロセス(PMI)といった「海外M&Aの実行力」が重要であり、海外M&Aを実行する企業自身が十分なM&Aリテラシーを身につけ、外部アドバイザーに過度に依存することなく、主体的にM&Aプロセスを実行できる能力を向上させていくことがまずは重要である。
2.「M&A戦略ストーリーの構想力」と「グローバル経営力の強化」
 一方で、海外M&Aを自社の成長に有効活用している企業は、M&Aの実行力にとどまらず、海外M&Aの実行の前と後の「平時」の段階から、将来の海外M&Aを見据え、海外M&Aを日常事として地道な取組みを行っている。
 「前」の段階では、中長期の時間軸で自社の「目指すべき姿」をまずはっきりさせたうえで、そこから逆算して、成長戦略・ストーリーに基づいて主体的・戦略的に海外M&Aの検討・準備を行うことに十分な時間や人材等のリソースを投入している。(「M&A戦略ストーリーの構想力」)
 「後」の段階では、海外企業の優れた部分を積極的に取り入れたうえで、自社グループをグローバル規模での成長が可能な経営体制へ変革させていくことが重要である。(「グローバル経営力の強化」)

(2)「9つの行動」のポイント
 海外M&Aにおいては、経営トップが果たすべき役割が極めて大きい。海外M&Aを自社の成長に活用している企業の多くは、経営トップ自らが海外M&Aの本質を理解し、先手を打った主体的リーダーシップを発揮するとともに、プロセス全体を通して腰を据えてコミットしていく覚悟を持って取り組んでいる。そこで、報告書の内容から、特に経営トップ等が留意すべき点を抽出し事例とともに以下の9つの行動にとりまとめた。

  • 行動1:「目指すべき姿」と実現ストーリーの明確化
  • 行動2:「成長戦略・ストーリー」の共有・浸透
  • 行動3:入念な準備に「時間をかける」
  • 行動4:買収ありきでない成長のための判断軸
  • 行動5:統合に向け買収成立から直ちに行動に着手
  • 行動6:買収先の「見える化」の徹底(「任せて任さず」)
  • 行動7:自社の強み・哲学を伝える努力
  • 行動8:海外M&Aによる自己変革とグローバル経営力
  • 行動9:過去の経験の蓄積により「海外M&A巧者」へ

<担当>
 貿易経済協力局 投資促進課長 小泉
         担当者:慶野、仁平
 電話:03-3501-1511(内線 3181~6)
    03-3501-1662(直通)
    03-3501-2082(FAX)
 経済産業政策局 産業組織課長 坂本
         担当者:安藤、奈良
 電話:03-3501-1511(内線 2621~9)
    03-3501-6521(直通)
    03-3501-6046(FAX)

<公表日>
 平成30年3月27日(火)

 ★「我が国企業による海外M&A研究会」報告書はこちら ⇒ 「我が国企業による海外M&A研究会」報告書(既に削除済み)
 ★「我が国企業による海外M&A研究会」報告書概要はこちら ⇒ 「我が国企業による海外M&A研究会」報告書概要
 ★「海外M&Aを経営に活用する9つの行動」はこちら ⇒ 「海外M&Aを経営に活用する9つの行動」

2018年6月15日


いわゆる「三角株式交換」に係る具体的な適格判定

<照会要旨>
A社の100%子会社であるB社とA社が発行済株式の22%を保有するC社との間で、B社を株式交換完全親法人、C社を株式交換完全子法人とする株式交換を予定している(A社、B社及びC社はいずれも株式会社である。)。
この株式交換は、C社の株主に交付する株式交換の対価を株式交換完全親法人であるB社の株式ではなく、B社の100%親会社であるA社(株式交換完全支配親法人)の株式とするいわゆる「三角株式交換」により行うことを予定している。
この株式交換が「共同で事業を営むための株式交換」(法2十二の十六ハ)として適格株式交換に該当するための要件(法人税法施行令第4条の3第16項各号に掲げられている要件をいい、以下「共同事業要件」という。)のうち、株式交換完全子法人の株主のうち一定の株主が保有する株式数の発行済株式等の数に占める割合が80%以上であることを求める「株式継続保有要件」については、具体的にはどのように判定することになるのか。
なお、株式交換前におけるC社の株主の数は50人未満であり、A社以外のC社の株主は株式交換により交付を受けるA社株式の全部を継続して保有することが見込まれている。
また、株式交換後の関係会社において更なる組織再編をすることは予定していない。

<回答要旨>
お尋ねの場合の株式継続保有要件の判定に当たっては、次の1と2の株式の数を合算した株式数が、株式交換完全子法人の発行済株式等の数の80%以上であるかどうかを判定することとなる。

1 株式交換により交付されるA社株式を継続保有することが見込まれているC社の株主が保有するC社株式の数
2 株式交換完全支配親法人であるA社が保有するC社株式の数

したがって、ご照会の株式交換については、A社以外のC社の株主が保有するC社株式の数とA社が保有するC社株式の数を合算した株式数は、C社の発行済株式等の100%となるので、株式継続保有要件を満たすことになる。

(理由)

  1. 株式会社である株式交換完全子法人と株式交換完全親法人との関係が、完全支配関係及び支配関係のいずれにも該当しない場合において、その株式交換が次の①及び②のいずれをも満たすときには、当該株式交換は適格株式交換に該当することとなる(法2十二の十六ハ)。
    株式交換完全子法人の株主に株式交換完全親法人の株式又は株式交換完全支配親法人株式(株式交換完全親法人との間に当該株式交換完全親法人の発行済株式等の全部を保有する関係がある法人の株式をいう。)のいずれか一方の株式以外の資産が交付されないこと。
    その株式交換が、株式交換完全子法人と株式交換完全親法人とが共同で事業を営むための株式交換に該当すること。
  2. 上記②の「共同で事業を営むための株式交換」に該当するための要件(共同事業要件)の一つに「株式継続保有要件」がある。「株式継続保有要件」とは、リンク先の算式により算出した割合が80%以上であることを要件とするものである(法令4の316五)。
    割合の計算に際し、株式交換完全親法人が株式交換完全子法人の株式を保有している場合には、当該株式を分子に含めて計算することとされている。
  3. いわゆる「三角株式交換」が行われる場合には、株式交換完全子法人の株主に対して株式交換完全支配親法人の株式が交付される。
    「三角株式交換」の場合にも、共同事業要件の一つである「株式継続保有要件」の判定については、上記2と同様の算式により算出した割合が80%以上であることが要件とされる。
    割合の計算に際し、株式交換完全支配親法人が株式交換完全子法人の株式を保有しているときには、当該株式も分子に含めて判定することとされている。
  4. ご照会の株式交換については、B社とC社の関係は、完全支配関係又は支配関係のいずれにも該当しないため、この株式交換が適格株式交換に該当するためには、共同事業要件を満たす必要がある。
    共同事業要件の一つである「株式継続保有要件」の判定について検討すると、A社以外のC社の株主については、株式交換により交付を受けるA社株式(株式交換完全支配親法人株式)の全部を継続して保有することが見込まれている。
    そして、A社以外のC社の株主が保有するC社株式の数とA社が保有するC社株式の数を合算した株式数は、C社の発行済株式等の100%となるので、「株式継続保有要件」を満たすことになる。

 ★リンクはこちら⇒ いわゆる「三角株式交換」に係る具体的な適格判定について

2016年1月20日

被合併法人(合併法人との間に支配関係がある他の法人を被合併法人とする新設合併により設立された法人)から引継ぎを受ける未処理欠損金額に係る制限の適用除外

<照会要旨>
A社は、B・C・D各社の発行済株式の100%を10年前から保有する親会社である。
平成25年4月1日に、B社とC社は、E社を新設合併設立会社とする新設合併(適格合併1)を行った。
この合併はいわゆる「みなし共同事業要件」を満たすので、E社は、B社及びC社が有する未処理欠損金額を引き継いだ。
このたび、D社とE社は、D社を合併法人、E社を被合併法人とする吸収合併(適格合併2)を行った(合併の効力発生日は平成27年6月30日)。
この場合、合併法人であるD社は、E社の未処理欠損金額を引き継ぐことができるか。
なお、適格合併2は「みなし共同事業要件」を満たさない。

<回答要旨>
D社は、E社の未処理欠損金額を引き継ぐことができる。

(理由)

  1. 適格合併が行われた場合に、被合併法人(Y)に未処理欠損金額があるときは、その未処理欠損金額は、合併法人(X)の合併の日の属する事業年度前の各事業年度に生じた欠損金額とみなして合併の日の属する事業年度以後の各事業年度において繰越控除することとされている(法法57①、②)。
  2. ただし、合併法人(X)と被合併法人(Y)との間に支配関係がある場合の適格合併であって、いわゆる「みなし共同事業要件」を満たす合併に該当する場合、又はその支配関係が合併法人(X)の適格合併の日の属する事業年度開始の日の5年前の日から継続している場合のいずれにも該当しないときには、被合併法人(Y)の有する欠損金額のうち
    合併法人(X)との支配関係が生じた日の属する事業年度前の各事業年度に生じた欠損金額
    合併法人(X)との支配関係が生じた日の属する事業年度以後の各事業年度に生じた欠損金額のうち、被合併法人(Y)が当該支配関係が生じた日において有する資産の譲渡等による損失額から成る部分の金額(特定資産譲渡等損失相当額)

    は、上記1の未処理欠損金額に含まれない(合併法人(X)の欠損金額とみなされない)こととされている(法法57③、法令112④一)。

  3. なお、被合併法人(Y)が適格合併の日の属する事業年度開始の日の5年前の日後に設立された法人である場合であって、その被合併法人(Y)とその合併法人(X)との間にその被合併法人(Y)の設立の日から継続して支配関係があるときは、上記2の制限措置は適用されず、被合併法人(Y)の未処理欠損金額を引き継ぐことができる(法法57③、法令112④二)。
  4. また、上記3に該当する場合であっても、適格合併(適格合併2)の日の前日以前に、その合併法人(X)との間に支配関係がある他の内国法人(y1、y2)を被合併法人とする適格合併(適格合併1)で、3の被合併法人(Y)を設立するものが行われていた場合には、上記3の取扱いはなく、被合併法人(Y)の未処理欠損金額を引き継ぐことはできない(法令112④二イ前段)。
    ただし、その合併法人(X)と他の内国法人(y1、y2)との間に最後に支配関係があることとなった日が、適格合併(適格合併1)の日の属する事業年度開始の日の5年前の日以前である場合には、この制限はなく、被合併法人(Y)の未処理欠損金額を引き継ぐことができる(法令112④二イ括弧書)。
  5. お尋ねのD社とE社の合併は、適格合併に該当し、被合併法人であるE社と合併法人であるD社との間には被合併法人であるE社の設立の日から継続して支配関係があるので、D社はE社の未処理欠損金額を引き継ぐことができる。
    また、D社とE社の適格合併の日の前日以前に、合併法人であるD社との間に支配関係がある他の内国法人であるB社及びC社を被合併法人としてE社を設立する適格合併が行われているが、B社及びC社とD社との間に支配関係があることとなったのは10年前であり、D社とE社の適格合併が行われた日の属する事業年度開始の日の5年前の日以前なので、E社の未処理欠損金額の引継ぎが制限されることはない。

 ★リンクはこちら⇒ 被合併法人から引継ぎを受ける未処理欠損金額に係る制限の適用除外について

2016年1月18日

株式交換契約の承認を受けるための株主総会の日に任期満了に伴い取締役が退任した場合の特定役員継続要件

<照会要旨>
支配関係のない法人間で行われる株式交換については、法人税法第2条第12号の16ハに規定する共同で事業を営むための株式交換の要件(以下「共同事業要件」という。)を満たすときは、適格株式交換に該当するとされている。
この共同事業要件の1つとして、次のいずれかを満たすことが必要となる(法令4の316二)。
1.株式交換完全子法人の子法人事業と株式交換完全親法人の親法人事業のそれぞれの売上金額、従業者の数又はこれらに準ずるものの規模の割合が、おおむね5倍を超えないこと(事業規模要件)。
2.株式交換前の株式交換完全子法人の特定役員のいずれかが当該株式交換に伴って退任(株式交換完全親法人の役員への就任に伴う退任等を除く。)をするものでないこと(特定役員継続要件)。
当社(A社)は、B社との間で当社を株式交換完全子法人とする株式交換を行うことを検討している。
具体的には、次の定時株主総会決議によって、株式交換契約の承認を受けることを予定している。
ところで、当社では、取締役の任期を2年とすることを定款で定め、また、原則として、専務取締役の再任はしないことを取り決めている。
当社の専務取締役であるXは、任期満了に伴い次の定時株主総会の終結の時をもって退任する見込みである。
この場合、特定役員継続要件を満たさないこととなるか。

<回答要旨>
お尋ねの株式交換については、特定役員継続要件を満たすものと考えられる。

(理由)
1.
株式交換に係る株式交換完全子法人と株式交換完全親法人との間に支配関係がない場合に共同事業要件を満たせば、適格株式交換に該当することとなるが、この共同事業要件の1つとして、事業規模要件又は特定役員継続要件のいずれかを満たすものであることが規定されている(法法2十二の十六ハ、法令4の316二)。
このうち特定役員継続要件とは、当該株式交換前の当該株式交換完全子法人の特定役員のいずれかが当該株式交換に伴って退任(当該株式交換に係る株式交換完全親法人の役員への就任に伴う退任等を除く。)をするものでないことと規定されている(法令4の316二)。
この特定役員とは、社長、副社長、代表取締役、代表執行役、専務取締役若しくは常務取締役又はこれらに準ずる者で法人の経営に従事している者をいう(法令4の34二)。

2.
お尋ねの場合のように、株主総会決議によって株式交換契約の承認を受ける場合で、たまたま当該株主総会の終結をもって任期満了となる特定役員が退任したとしても、この退任は、当該株式交換に伴ってする退任とは言えないものと考えられる。
したがって、他に当該株式交換に伴って退任する特定役員がない場合には、当該株式交換は、特定役員継続要件を満たすものと考えられる。
ただし、例えば、その特定役員の再任をしないことが株式交換を実行するための条件とされているような場合には、当該特定役員は、当該株式交換に伴って退任するものと考えられる。このような場合には、特定役員継続要件を満たさないものと考えられる。

 ★リンクはこちら⇒ 株式交換契約の承認を受けるための株主総会の日に任期満了に伴い取締役が退任した場合の特定役員継続要件について(リンク削除済)

2016年1月15日

「事業引継ぎガイドライン」「事業引継ぎハンドブック」

中小企業・小規模事業者の経営者の高齢化が急速に進む中、少子化等の影響から、親族内での後継者の確保が厳しさを増しており、M&A等による事業引継ぎの必要性が年々高まってきている。

中小企業庁では、後継者のいない中小企業・小規模事業者の皆様方が安心してM&A等を活用することができるよう、今般、有識者からなる「中小企業向け事業引継ぎ検討会」を開催し、「事業引継ぎガイドライン」、「事業引継ぎハンドブック(紹介用のチラシ含む)」を策定した。
「事業引継ぎガイドライン」は、M&Aの手続きや、手続毎の利用者の役割・留意点、トラブル発生時の対応等を詳細に記載している。
また、「事業引継ぎハンドブック」は、事業者の皆様方がM&A等を活用する際の手引き書となるよう、ガイドラインを分かりやすくまとめたものである。

 ★『事業引継ぎガイドライン』はこちら⇒ 事業引継ぎガイドライン
 ★『事業引継ぎハンドブック』はこちら⇒ 事業引継ぎハンドブック
 ★『事業引継ぎチラシ』はこちら⇒ 事業引継ぎチラシ

2015年5月11日

いわゆる「三角分割(分割型分割)」に係る適格要件

<照会要旨>
C社は、A社の100%子会社であるB社との間で、C社を分割法人、B社を分割承継法人とする分割を予定している(A社、B社及びC社はいずれも株式会社である。)。
この分割は、C社に交付する分割対価をB社株式ではなく、B社の親会社の株式であるA社株式とし、分割法人C社が交付を受ける分割対価(A社株式)の全てがその分割の日においてC社株主に交付されるいわゆる「三角分割(分割型分割)」により行うことを予定している。分割対価をB社株式とする通常の分割型分割の場合と「三角分割(分割型分割)」の場合とでは、適格分割型分割に該当するための要件に異なる点はあるのか?

<回答要旨>
分割対価は異なるが、適格分割型分割に該当するための要件に、原則として、異なる点はない。
(理由)
1.株式会社が行う分割型分割(法法2十二の九)が適格分割型分割に該当するためには、分割承継法人と分割法人との関係が、完全支配関係、支配関係又はそれ以外の関係のいずれに当たるかによってそれぞれ定められた要件(法法2十二の十一イ~ハ。以下「支配関係別要件」という。)を満たすとともに、これらの関係に共通して定められた要件(法法2十二の十一柱書き。以下「共通要件」という。)を満たす必要がある。
このうち、共通要件は、分割対価資産として、次に掲げる株式のいずれか一方の株式以外の資産が交付されないこととされており(法法2十二の十一柱書き)、いわゆる「三角分割(分割型分割)」の場合には、2の分割承継親株式以外の資産が交付されないこと(分割承継親法人株式が分割法人の株主等の有する当該分割法人の株式の数の割合に応じて交付されるものに限る。)が要件となる。
①分割承継法人の株式
又は
②分割承継親法人株式(分割承継法人との間に当該分割承継法人の発行済株式等の
全部を保有する関係とされる一定の関係がある法人の株式をいう。)

2.これに対して、分割法人と分割承継法人との関係ごとに定められた要件(支配関係別要件)は、いわゆる「三角分割(分割型分割)」であるか、それ以外の分割型分割であるかにかかわらず定められた要件であり、いわゆる「三角分割(分割型分割)」であることをもって異なる要件が定められているわけではない。
(注)
分割承継法人と分割法人との関係が、完全支配関係及び支配関係のいずれにも当たらない「それ以外の関係」である場合における適格要件のうちに、分割対価である株式を継続保有する見込みの者が保有する分割法人の株式の割合により判定する要件があり(法令4の38六イ)、この判定において、いわゆる「三角分割(分割型分割)」への対応がなされている。具体的には、通常の分割型分割において分割承継法人が分割法人の株主である場合には、分割承継法人を「継続保有することが見込まれる者」に含めることとされており、いわゆる「三角分割(分割型分割)」においても分割承継親法人が分割法人の株主である場合には、分割承継親法人を「継続保有することが見込まれる者」に含めて判定することとされているものであり、実質的に要件が異なるものではない。

3.したがって、いわゆる「三角分割(分割型分割)」の場合には、分割対価が分割承継親法人株式に限られる点は異なるが、いわゆる「三角分割(分割型分割)」とそれ以外の分割型分割の間で適格分割型分割に該当するための要件に、原則として、異なる点はない。

 ★リンクはこちら⇒ いわゆる「三角分割(分割型分割)」に係る適格要件

2015年3月2日

いわゆる「三角分割(分社型分割)」に係る適格要件

<照会要旨>
C社は、A社の100%子会社であるB社との間で、C社を分割法人、B社を分割承継法人とする分割を予定している(A社、B社及びC社はいずれも株式会社である。)。
この分割は、C社に交付する分割対価をB社株式ではなく、B社の親会社の株式であるA社株式とするいわゆる「三角分割(分社型分割)」により行うことを予定している。分割対価をB社株式とする通常の分社型分割の場合と「三角分割(分社型分割)」の場合とでは、適格分社型分割に該当するための要件に異なる点はあるのか?

<回答要旨>
分割対価は異なるが、適格分社型分割に該当するための要件に、原則として、異なる点はない。
(理由)
1.株式会社が行う分社型分割(法法2十二の十)が適格分社型分割に該当するためには、分割承継法人と分割法人との関係が、完全支配関係、支配関係又はそれ以外の関係のいずれに当たるかによってそれぞれ定められた要件(法法2十二の十一イ~ハ。以下「支配関係別要件」という。)を満たすとともに、これらの関係に共通して定められた要件(法法2十二の十一柱書き。以下「共通要件」という。)を満たす必要がある。
このうち、共通要件は、分割対価資産として、次に掲げる株式のいずれか一方の株式以外の資産が交付されないこととされており(法法2十二の十一柱書き)、いわゆる「三角分割(分社型分割)」の場合には、2の分割承継親法人株式以外の資産が交付されないことが要件となる。
①分割承継法人の株式
又は
②分割承継親法人株式(分割承継法人との間に当該分割承継法人の発行済株式等の全部を保有する関係とされる一定の関係がある法人の株式をいう。)

2.これに対して、分割法人と分割承継法人との関係ごとに定められた要件(支配関係別要件)は、いわゆる「三角分割(分社型分割)」であるか、それ以外の分社型分割であるかにかかわらず定められた要件であり、いわゆる「三角分割(分社型分割)」であることをもって異なる要件が定められているわけでない。

3.したがって、いわゆる「三角分割(分社型分割)」の場合には、分割対価が分割承継親法人株式に限られる点は異なるが、いわゆる「三角分割(分社型分割)」とそれ以外の分社型分割との間で適格分社型分割に該当するための要件に、原則として、異なる点はない。

 ★リンクはこちら⇒ いわゆる「三角分割(分社型分割)」に係る適格要件

2015年2月27日

いわゆる「三角合併」において端数調整金の交付を受けた被合併法人の株主における課税関係

<照会要旨>
A社の100%子会社であるB社と出資関係を有しないC社との間で、B社を合併法人とする適格合併を予定している(A社、B社及びC社はいずれも株式会社である。)。
この合併は、C社の株主に交付する対価をB社株式ではなく、B社の親会社の株式であるA社株式とするいわゆる「三角合併」により行うことを予定しているが、合併比率に端数が生じ、交付すべきA社株式の数に1に満たない端数が生じることから、この端数に相当する金銭(端数調整金)をC社の株主に交付することとしている。この場合において、被合併法人C社の株主における端数調整金に係る課税関係はどのようになるのか?

<回答要旨>
C社の株主においてA社株式の端数部分の交付を受け、これを直ちに譲渡しその対価として金銭を受け取ったものと取り扱われるため、その譲渡に係る課税関係が生じる。
ただし、端数調整金に相当する金額を雑益等として益金の額に算入する処理も認められる。
(理由)
1.合併に伴い被合併法人の株主である法人が、被合併法人の株式を有しないこととなった場合には、一定の要件を満たす場合を除き、その合併の日の属する事業年度に当該被合併法人の株式の譲渡に係る譲渡損益を計上することになる(法法61の21、法規27の3九)。
2.ただし、その合併により、被合併法人の株主に合併法人株式(合併法人の株式をいう。)又は合併親法人の株式(合併法人との間に当該合併法人の発行済株式等の全部を保有する関係とされる一定の関係がある法人の株式をいう。)のいずれか一方の株式のみが交付された場合には、上記1の譲渡損益の算定に際し、被合併法人の株主は被合併法人の株式の譲渡対価の額を当該合併直前の被合併法人の株式の帳簿価額に相当する金額として計算することとされているので(法法61の22)、譲渡対価の額と譲渡原価の額が同額(いずれも合併の直前の被合併法人の株式の帳簿価額)となり、譲渡損益は生じない。
3.また、合併対価として交付すべき合併親法人株式の数に1に満たない端数が生ずる場合で、その端数に応じて金銭が交付されるときは、その端数に相当する部分は合併親法人株式に含まれるものとして、株主の各事業年度の所得の金額の計算をすることとされている(法令139の3の21)。このとき、被合併法人の株主は一旦端数に相当する部分の合併親法人株式の交付を受け、これを直ちに譲渡してその金銭を受領したものとして譲渡損益を認識することとされている(法法61の21、法基通2-3-25)。
4.したがって、ご照会の「三角合併」においてC社の株主が端数調整金の交付を受けた場合には、一旦その端数に相当する合併親法人の株式であるA社株式の交付を受け、これを直ちに譲渡し端数調整金を受け取ったものとして譲渡損益の計算を行うこととなる。
具体例を示すと、次のようになる。
【例】C社株主甲社の端数調整金に係る譲渡損益の計算
C社株主である甲社は、合併直前において、C社株式を1,055株(帳簿価額527,500円。@500円)保有していたところ、その合併により、甲社はA社株式527.5株の割当てを受け、A社株式527株と端数調整金600円を受領した。
合併に際しては、C社株式(時価@600円)1株につき、A社株式(時価@1,200円)0.5株が割り当てられている。
(甲社における処理)
A社株式 527,500 / C社株式 527,500
現  金  600 / A社株式(0.5株) 500
/ 有価証券譲渡益  100
5.ただし、上記の処理によらず、甲社が受領した端数調整金を雑益等として益金の額に算入する処理も認められている(法基通2-3-25ただし書)。

 ★リンクはこちら⇒ いわゆる「三角合併」において端数調整金の交付を受けた被合併法人の株主における課税関係

2015年2月26日

適格現物分配による資本の払戻しを行った場合の税務上の処理

<照会要旨>
乙社は、100%親法人である甲社に対して、乙社の保有するX社株式(簿価130)を現物分配により交付した。
この現物分配は、その他資本剰余金120とその他利益剰余金10を原資として行っており、資本剰余金120の減少を伴っていることから、法人税法第24条第1項第3号に規定する資本の払戻しに該する。
この場合の乙社における処理はどうなるか?

なお、乙社の前事業年度終了時の純資産の額(資産の帳簿価額から負債の帳簿価額を減算した金額)は1,200 、資本の払戻し直前の資本金等の額は600する。

<回答要旨>
次の2(1)及び(2)の算式によりそれぞれ計算された金額を資本金等の額及び利益積立金額から減算することとなる。
(理由)
1.現物分配とは、法人(公益法人等及び人格のない社団等を除く。)がその株主等に対し当該法人の剰余金の配当や資本の払戻しなどの一定の事由により金銭以外の資産を交付することをいう(法法2十二の六)。
また、適格現物分配とは、内国法人を現物分配法人(現物分配によりその有する資産の移転を行った法人をいう。)とする現物分配のうち、その現物分配により資産の移転を受ける者がその現物分配の直前において当該内国法人との間に完全支配関係がある内国法人(普通法人又は協同組合等に限る。)のみであるものをいう(法法2十二の十五)。
内国法人が適格現物分配により資産の移転をしたときは、その適格現物分配の直前の帳簿価額による譲渡をしたものとして所得の金額を計算することとされており(法法62の53)、その資産の移転により譲渡損益は発生しないこととなる。

2.法人が資本の払戻し又は解散による残余財産の分配(以下「資本の払戻し等」という。)により、その株主等に対して金銭及び金銭以外の資産の交付をした場合には、次の(1)及び(2)の算式によりそれぞれ計算された金額を資本金等の額及び利益積立金額から減算することとなる。
なお、資本の払戻しとは、剰余金の配当(資本剰余金の額の減少に伴うものに限る。)のうち、分割型分割によるもの以外のものをいうとされてる(法法241三)。
(1)資本金等の額から減算する金額(法令81十六)
(算式)
資本金等の額から減算する金額(減資資本金額)=A×B÷C(※)
A 資本の払戻し等の直前の資本金等の額
B 資本の払戻しにより減少した資本剰余金の額又は解散による残余財産の一部の分配により交付した金銭の額及び金銭以外の資産の価額(適格現物分配に係る資産にあっては、その交付直前の帳簿価額)の合計額
C 資本の払戻し等の前事業年度終了の時の純資産の額
※1 A≦0のときはB÷C=0、A>0かつC≦0のときはB÷C=1として計算する。
※2 少数点以下第3位未満の端数がある場合にはこれを切り上げる。
※3 上記算式により計算した金額が、資本の払戻し等により交付した金銭の額及び金銭以外の資産の価額(適格現物分配に係る資産にあっては、その交付直前の帳簿価額)の合計額(この合計額を(2)においてDという。)を超える場合には、その超える部分の金額を減算した金額となる。
(2)利益積立金額から減算する金額(法令91十一)
(算式)
利益積立金額から減算する金額=D-減資資本金額(※)
※ D>減資資本金額の場合に限る。

3.甲社と乙社との間には、本件現物分配の直前に当事者間の完全支配関係(一の者が法人の発行済株式等の全部を直接又は間接に保有する関係)があることから、本事例の現物分配は適格現物分配に該当する。このため、現物分配により移転をした資産(X社株式)の移転により譲渡損益は生じない。また、本事例の現物分配は、資本の払戻しとして行われるものであることから、次のとおり、資本金等の額及び利益積立金額を減少させることとなる。
(1)資本金等の額から減算する金額
本事例において、資本の払戻し直前の資本金等の額(A)は600であり、資本の払戻しの前事業年度終了の時の純資産の額(C)は1,200となる。
次に(B)の金額については、「資本の払戻しにより減少した資本剰余金の額又は解散による残余財産の一部の分配により交付した金銭の額及び金銭以外の資産の価額(適格現物分配に係る資産にあっては、その交付直前の帳簿価額)の合計額」とされており、本件における資本の払戻しは、適格現物分配によるものではあるが、解散による残余財産の分配により交付されたものではないため、(B)の金額は、「適格現物分配に係る資産の交付直前の帳簿価額」130ではなく、「資本の払戻しにより減少した資本剰余金の額」120となる。
したがって、減少する資本金等の額(減資資本金額)は、60(=600×120÷1200)となる。
(2)利益積立金額から減算する金額
本事例において、適格現物分配に係る資産の交付直前の帳簿価額が130であることから、(D)の金額は130となり、減少する利益積立金額は70(=130-60)となる。

 ★リンクはこちら⇒ 適格現物分配による資本の払戻しを行った場合の税務上の処理

2015年2月25日

2014年第2四半期のTOB

株式会社ストライクのレポートによると、2014年第2四半期のTOBの結果は以下のとおり。

  • 件数は公表ベースで6件。ちなみに前年同期は9件。
  • 第2四半期の公表案件として注目されるものは、以下のとおり。
  1. 三菱ケミカルホールディングスが資本業務提携関係の強化のため、大陽日酸に対する公開買
    付に対する基本合意を締結し、公表(公開買付は2014年11月上旬を目途として開始予定)
  2. ローランドのMBO
  • 第2四半期のボジティブプレミアムの平均値は45.2%となっており、株価が上昇した水準を保っていることから、50%を超えるプレミアムのTOBの割合は引き続き低い割合となっている。

2014年7月24日

2014年第1四半期のTOB

株式会社ストライクのレポートによると、2014年第1四半期のTOBの結果は以下のとおり。

  • 件数は公表ベースで8件。ちなみに前年同期は27件。
  • 第1四半期の公表案件として注目されるものは、以下のとおり。
  1. 日本電気によるNECフィールディングに対する公開買付
  • 第1四半期のボジティブプレミアムの平均値は50.5%となっており、昨年から上昇したように見えるが、テクタイトのシーエスロジネットに対するTOBの影響が大きく、実質的には大きな変化は生じていない。

 ★リンクはこちら⇒ TOBプレミアム分析レポート2014年1Q

2014年5月8日

2013年第4四半期のTOB

株式会社ストライクのレポートによると、2013年第4四半期のTOBの結果は以下のとおり。

  • 件数は公表ベースで9件。ちなみに前年同期は12件。
  • 第4四半期の公表案件として注目されるものは、以下のとおり。
  1. やまやによるチムニーの買収(143億円)
  2. セブン&アイホールディングスによるニッセンホールディングスの買収(126億円)
  3. ベインキャピタルによるマクロミルの買収(513億円)
  • 第4四半期のプレミアムは、株価が堅調に推移したために、37.7%に減少している。
    ポジティブプレミアムの平均値は48.4%で傾向に大きな変化は見られないが、分布で見た場合には、ディスカウントプレミアムの案件が増加しているため、0%以下の案件割合が増加し、50%超の案件割合が増加している。

 ★リンクはこちら⇒ TOBプレミアム分析レポート2013年4Q

2014年1月30日

2013年第3四半期のTOB

株式会社ストライクのレポートによると、2013年第3四半期のTOBの結果は以下のとおり。

  • 件数は公表ベースで10件。ちなみに前年同期は11件。
  • 大型案件は少なく、100億円を超えるものは以下の1件のみ。
  1. タイヨーの経営陣によるMBO(153億円)
    なお、トータル・メディカルサービスに対するMBO(47億円)については、プレミアムが206.81%となっており、調剤薬局事業に対するM&Aニーズが高いことを示す結果となっているといえよう。
  • ポジティブプレミアムの平均値はは3Qのみで54.4%となっており、2Qから上昇したように見えるが、トータル・メディカルサービスに対するTOBの影響が大きく、実質的には大きな変化は生じていない。
  • 分布で見ても大きな変化はないものの、株価が上昇した水準を保っていることから、50%を超えるプレミアムのTOBの割合が減少傾向にある。
  • 3Qとしては前年比で減少したものの、年間を通じたTOB件数は前年1年間の件数に既に迫っており、再編傾向は引き続き継続している。

 ★リンクはこちら⇒ 2013年第3四半期TOBプレミアム分析

2013年11月7日

2013年第2四半期のTOB

株式会社ストライクのレポートによると、2013年第2四半期のTOBの結果は以下のとおり。

  • 件数は公表ベースで9件。ちなみに前年同期は7件。 第2Qは毎年少ない。
  • 大型案件は以下のとおり。
  1. 丸紅によるNECモバイリングに対するTOB(716億円)
  2. 1stホールディングスの経営陣によるMBO(270億円)
  3. メガネトップの経営陣によるMBO(299億円)
  4. シンプレクス・ホールディングスの経営陣によるMBO(277億円)
  • ポジティブプレミアムの平均値はは2Qのみで41.3%、2013年上期で48.6%となっており、株価の上昇にともない、若干ダウントレンドとなっている。
  • 分布で見ても大きな変化はないものの、株価上昇の流れを受け、50%を超えるプレミアムのTOBの割合が若干減少している。
  • 2Qも前期を超える件数となり、TOBを含めた再編トレンドが継続している。

2013年7月10日

2013年第1四半期のTOB

株式会社ストライクのレポートによると、2013年第1四半期のTOBの結果は以下のとおり。

  • 件数は公表ベースで27件。ちなみに前年同期は18件。
  • 大型案件は以下のとおり。
  1. サーベラスによる西武ホールディングスに対する敵対的TOB(191億円)
  2. ソフトバンクによるガンホー・オンライン・エンターテインメントへのTOB(250億円)
  3. イオンによるダイエーに対するTOB(403億円)
  • 2013年1QはディスカウントTOBが5件もあっため、総プレミアムの平均は32.6%と低下しているが、ポジティブプレミアムの平均値は51.4%で傾向に大きな変化は見られず、分布で見ても大きな変化はない。
  • 1Qのみで前期の上期(25件)を超える件数となり、TOBを含めた再編が活発化してきている。一方、株価の上昇に伴いMBO案件は減少している。

2013年4月24日

2012年第4四半期のTOB

株式会社ストライクのレポートによると、2012年第4四半期のTOBの結果は以下のとおり。

  • 件数は公表ベースで12件。ちなみに前年同期は18件。
  • 公表案件としては注目されるのは以下のとおり。
  1. 住友商事とKDDIIによるジュピターテレコムの共同買収(進行中)
  2. PGMホールディングスによるアコーディア・ゴルフへの敵対的買収(不成立)
  3. ブラザー工業によるニッセイの連結子会社化(成立)
  • 2012年11月の中旬以降株価が上昇したことに加え、新星堂に対するTOBのプレミアムがディスカウントではないものの0%であったため、ポジティブプレミアムの平均値が37.2%と急低下している。

2013年2月1日

2012年第3四半期のTOB

株式会社ストライクのレポートによると、2012年第3四半期のTOBの結果は以下のとおり。

  • 件数は公表ベースで11件。ちなみに前年同期は21件。
  • 大型のTOBは、J.フロントリテイリングによるパルコに対するTOB(424億円)、ソニーによるソネットエンタテインメントに対するTOB(548億円)であった。パルコについては、主要株主であるイオンがTOBに応じなかった。
    ニッシン債権回収のTOBでは大株主を対象とした第1回のTOB(6億円)、一般株主を対象として第2回TOB(1億円)と二段階のTOBが実施された。
  • ポジティブプレミアムの平均値は54.0%で傾向に大きな変化は見られない。

2012年11月6日

2012年第2四半期のTOB

株式会社ストライクのレポートによると、2012年第2四半期のTOBの結果は以下のとおり。

  • 件数は公表ベースで7件。ちなみに前年同期は6件。
  • 大型案件は、エイブル&パートナーズのMBO(308億円)くらいである。
  • ポジティブプレミアムの平均値は50.9%で大きな変化なし。

2012年7月25日

2012年第1四半期のTOB

株式会社ストライクのレポートによると、2012年第1四半期のTOBの結果は以下のとおり。

  • 件数は公表ベースで18件。ちなみに前年同期は14件。
  • 大型案件として、ユニーのサークルKサンクスの完全子会社化(712億円)、フジ・メディア・ホールディングスのサンケイビルの完全子会社化(313億円)があり、成立金額は1,712億円。
  • MBOはベンチャーパブリックのみ。ちなみに前年同期は7件。
  • ポジティブプレミアムの平均値は56.8%で大きな変化なし。

2012年5月1日

パチンコ40グループ 申告漏れ総額1,000億円

パチンコ店をチェーン展開する約40のグループが、東京国税局などの一斉調査を受け、総額約1,000億円の申告漏れを指摘されたようである。

詳細は不明であるが、報道等によると、以下のようなスキームのようである。

  1. 含み損を抱える不動産を現物出資して子会社を設立
  2. 含み損を抱える子会社株式を現物出資して子会社を設立(これを繰り返す)
  3. 含み損を抱える子会社株式を時価で売却して損失を実現後、利益の出ているグループ企業と合併して所得を圧縮

このスキームが租税回避行為と判断され、申告漏れの指摘となったようである。

2012年2月17日

2011年のTOB

株式会社ストライクのレポートによると、2011年のTOBの結果は以下のとおりである。

  • 件数は公表ベースで58件。ちなみに2010年は59件。
  • 大型案件が少なく、成立金額は7,715億円で、平均は193億円と、2006年以降で最少。
  • ポジティブプレミアムの平均値は54.9%。
  • プレミアム上位は、チップワンストップの203.7%を筆頭に、ジェイエムテクノロジーが127.1%、三條機械製作所が123.9%、ワオ・コーポレーションが102.5%、エナジーサポートが101.1%と、5社が100%超え。

2012年2月14日

分割型新設分割

分割型は、会社法では分社型+剰余金の分配という扱いである。
この場合、組織再編行為ゆえ分配可能額の制限はない。

会計処理は、会社計算規則第49条を適用する場合と第50条を適用する場合があり。前者はB/Sの借方から子会社株式が減少し、貸方からその他利益剰余金が減少する。
後者は分割会社(親会社)で減らした分を新設会社(子会社)で計上する。つまり、分割会社のB/Sを2つに分けたと考える。
なお、第50条適用型は減資の手続と利益準備金の減少手続も必要である。

2011年12月15日

行為計算否認(日産自動車)?

少し前から気にはなってはいたものの、詳細がよく分からなかった日産自動車の税務訴訟。

T&A master No.419によると、組織再編税制関係との情報も流れているが、有価証券の譲渡対価を巡る寄附金課税がなされたとのことである。

日産自動車は、各子会社の株式消却を伴う減資により各子会社から金銭の払い戻しを受けたが、この払い戻し額が時価純資産価額よりも低いとされ、差額を寄附金と認定し、約640億円の申告漏れが指摘されたようである。

この件も、今後の訴訟の結果がどうなるか注目したい。

2011年9月21日

国内上場企業のM&Aに関する意識調査

日本M&Aセンターが国内上場企業のM&Aに関する意識調査の結果を発表した。

東日本大震災後、一時は低下していた企業のM&Aへの意欲は回復し、非常に高い水準(「積極的に検討したい」と「良い案件があれば検討したい」を合わせて93%弱)にある。

ただし、アンケートの送付先企業数が3,433社で、回答企業者数が231社ということであり、7%以下の企業しか回答していないということであり、国内上場企業全体の意識とは言えないと考えられよう。

2011年9月9日

行為計算否認(日本IBM)

T&A master No.416に日本IBMの行為計算否認の記事が載っている。スキームは以下のとおり。なお、今回の、みなし配当の益金不算入と、株式譲渡損失の2重取りは、税制改正により、使えなくなっている。

①米国IBMが、日本IBMの親会社のホールディングカンパニー(日本)へ、資金を提供
②ホールディングカンパニーが、米国IBMから、日本IBMの株式を取得
③日本IBMが、ホールディングカンパニーから、日本IBMの株式(いわゆる自己株式)を取得

自己株式を取得した場合、みなし配当と、株式譲渡所得もしくは譲渡損失(今回のケースでは、譲渡損失)が生じる。
そして、みなし配当は益金不算入となり、ホールディングカンパニーと日本IBMは連結納税制度を採用し、この譲渡損失と日本IBMの黒字を相殺し、法人税がかからないようにした。

今回のケースは、連結法人に係る行為計算否認規定(法人税法132の3)を適用したものではなく、連結納税申告そのものではなく、その前の行為に問題があったと判断し、同族会社等の行為計算否認規定(法人税法132)を適用したようである。

こちらも、ヤフー同様、今後の訴訟の結果に注目したい。

2011年8月31日

行為計算否認(ヤフー)

T&A master No.416にヤフーの行為計算否認の記事が載っている。時系列的には以下のとおり。

平成20年12月 ヤフーの社長が今回問題となったI社の副社長に就任
平成21年2月  ヤフーがI社を100%子会社化
平成21年3月  ヤフーがI社を吸収合併

買収価格に繰越欠損金の引継ぎによる節

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