事務所通信
2025年9月号『資金別貸借対照表!』
利益は出ているものの、なぜか資金が足りないのだろうかと疑問に感じている経営者も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、『資金別貸借対照表!』について書きたいと思います。
1.資金別貸借対照表とは?
資金別貸借対照表は、創業以来稼いできたお金(利益)と、借入をして集めたお金が、どのような要因で運用され、現在の現預金残高に至っているか、見ることが出来ます。
①損益資金の部、②固定資金の部、③売上仕入資金の部、④流動資金の部に分けて考えるのです。
資金別貸借対照表には、「資金調達」と「資金運用」の欄があり、その差額が「現預金」となっています。
計算式で表すと、資金調達―資金運用=現預金となります。
創業以来稼いできたお金や、借入によって「調達した資金」が、どのように「運用」され、どれだけキャッシュが増減し、現在の現預金に至っているかを把握できます。
言い換えれば、「儲けた利益はどこに消えたのか」を4つの部に分けて見ることが出来るのです。
2.損益資金の部とは?
損益資金の部は、過去の蓄積の利益と、当期の利益でどれだけお金を稼いできたかを把握できます。
本来、損益資金の部の「現預金」が手元のキャッシュとして残るはずですが、実際の現預金の残高はなぜ違うのか、その原因を残りの3つの部から見ていくのです。
3.固定資金の部とは?
固定資金の部では、長期的な資金運用と資金調達のバランスを把握できます。
資金運用側には、設備投資や在庫など企業規模拡大の原動力となる資金が表示され、資金調達側には、長期借入金や資本金など長期的に使えるお金が表示されます。
設備投資などの固定的な資産は、長期的な資金調達方法で賄われるのが理想です。
固定資金の部がマイナスの場合、設備投資や在庫が長期借入金や資本金で賄いきれず、現預金を減らしている状況です。
4.売上仕入資金の部とは?
売上仕入資金の部は、売上債権回収サイトと仕入債務支払サイトの差が、どれだけ資金に影響を及ぼしているか把握できます。
現金商売でない場合、通常、サイト負け(売上仕入資金の部がマイナス)になります。
サイト負けだと、売上が増加すると、先行する支払いの金額も大きくなり、資金繰りが一時的に悪化するため留意が必要です。
損益資金の部、固定資産の部、売上仕入資金の部を合計したものを「安定資金」と呼びますが、資金の状態は、この「安定資金」で見ることが大切です。
なぜなら、安定資金がマイナスだと、「流動資金の部」で資金調達し、自転車操業のように短期の借入金で資金繰りをつないでいるため、借入を打ち切られた場合などに、倒産の危険性をはらんでいるからです。
5.流動資金の部とは?
流動資金の部は、短期の資金運用と資金調達の差額を把握できます。
ただし、ここで現預金を増加させても、安定した資金とは言えません。
6.最後に
資金別貸借対照表を使って、資金繰りを根本的なところから改善していきましょう。
2025年9月29日 國村 年