事務所通信2013年5月

事務所通信

2013年5月号 『動産担保融資』

 最近、動産担保融資のことが、新聞などによく載っています。
 金融機関は、従来から、不動産を担保にとったり、保証人をつけたりして融資を行なってきました。ただ、不動産の価値が下がったり、不動産を持たざる経営になってきたり、保証人制度の見直しが検討されたり、金融機関も新たな方法で融資せざるをえなくなってきています。
 そこで、今回は、『動産担保融資』について書きたいと思います。

1.担保の現状
 現在、金融機関の融資の担保は、不動産担保が中心です。
 金融庁の資料によると、地域金融機関の場合、融資の担保の9割超が不動産担保のようです。また、我が国企業の保有資産の状況(平成23年度財務省「法人企業統計調査」)は、土地が186兆円に対し、在庫と売掛金の合計は297兆円もあるそうです。
 動産・売掛金担保は、あまり活用されていないのが現状といえるでしょう。

2.動産担保融資とは?
 動産担保融資とは、企業が保有する動産を担保とする融資のことであり、ABL(Asset Based Lending、動産・売掛金担保)の一種です。
 中小企業等が経営改善・事業再生等を図るための資金はもとより、新たなビジネスに挑戦するための資金を確保することが目下の重要な課題であり、動産担保の一層の活用が図られれば、このような資金がより円滑に確保され、中小企業等の経営改善や事業の拡張等に資することが期待されます。

3.金融検査マニュアルの運用明確化
 金融検査マニュアルが改定され、ABLに関することが織り込まれています。
 例えば、「自己査定基準」には、担保掛け目を盛り込む必要があるため、「動産・売掛金担保」の標準的な掛け目の水準が新たに記載されています。
ちなみに、動産担保は評価額の70%、売掛金担保は80%となっています。

4.動産担保の具体例
 動産担保の具体例としては、例えば、鹿児島銀行は、牛と豚が担保の融資残高は約170億円にのぼるそうです。
 また、みちのく銀行は、1万トンのリンゴを担保に約4億円の融資をしているようです。また、これ以外にも、米や日本酒、冷凍ホタテを担保にした融資を積極的に手掛けているようです。
 さらに、動産担保融資は地方の話しだけではなく、三菱東京UFJ銀行など9行が、東京の銀座に店を構える中古ブランド品販売店のブランド品を担保に30億円の融資枠を設定しているようです。

5.最後に
 本来、金融機関は、不動産担保をとったり、保証人をつけるのではなく、将来のキャッシュ・フローを担保に融資をすべきだと思いますが、残念ながら、それを見極めることができていないのが現状です。
 金融機関は融資をビジネスとしているのに、非常に疑問を感じます。
 その点、動産担保融資は、将来的にキャッシュ・フローを生むはずのものを担保に融資するわけですから、少しは進歩したということでしょうか。
 早く将来のキャッシュ・フローを担保に融資する時代が来て欲しいものですね。

2013年5月21日 國村 年

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