事務所通信2015年7月

事務所通信

2015年7月号 『不適切会計とは?』

 2011年7月1日に國村公認会計士事務所を開業してから、早いもので既に4年経ち、今月1日から5年目を迎えました。
 これもひとえに皆さまのおかげです。
 今後とも、よろしくお願いいたします。
 最近、東芝の『不適切会計』が新聞紙上等を賑わせていますが、個人的には、『不適切会計』という言葉にすごく違和感を抱いています。
 そこで、今回は、『不適切会計とは?』について書きたいと思います。

1.不適切会計とは?
 日本公認会計士協会の監査・保証実務委員会研究報告第25号「不適切な会計処理が発覚した場合の監査人の留意事項」によると、不適切な会計処理の定義を「意図的であるか否かにかかわらず、財務諸表作成時に入手可能な情報を使用しなかったことによる、又はこれを誤用したことによる誤り」と定義しています。

2.新聞社による使用状況
 THE PAGEというサイトに、東芝が決算の利益を水増していた問題をどんな言葉で表現するかについて調査しています。
 2015年7月24日時点では、以下のようになっています。

    現在の表現   表現の変更   変更時期 
 朝日   不正決算  不適切会計から変更   7/21朝刊 
 毎日   不正会計  7/17朝刊 
 産経   利益水増し問題  7/22朝刊 
 読売   不適切会計   変更せず   
 日経   不適切会計   

3.東芝の状況
 通常の第三者委員会報告書と異なり、東芝からの委嘱を受けて、東芝のためだけに行われているなど色々と批判の多い第三者委員会報告書ですが、これによると、直接的な原因は、経営トップらの関与を含めた組織的な関与、間接的な原因は、コーポレートにおける内部統制が機能していなかったことなどが挙げられています。
 これを読むと、どう考えても、『不適切会計』とは言えないと思うのですが、いまだに、読売と日経は『不適切会計』という言葉を使っているのはなぜなのでしょうか?
 また、第三者委員会報告書の中で、個人的にすごく気になるところもありました。
 会計監査人である新日本監査法人に対する責任が記載されていないということです。
 巧妙な手法を使って粉飾したとしても、監査法人の責任がまったくないわけではありませんし、報道によると、売上を上回る利益を計上した月があったように言われていますので、まったくおかしなところがなかったというわけではないでしょう。

4.最後に
 過去にも、新日本監査法人はオリンパスなどの会計監査を担当していて処分を受けなかったわけですが、今回も東芝は上場廃止にならず、新日本監査法人も処分を受けないようなことが言われたりています。
 そうなると、企業側に粉飾をしてバレても上場廃止にはならないのであれば、赤字や債務超過を避けるために粉飾しようと思ったり、監査法人は粉飾を見逃しても処分されないということになると、会計監査制度というものがそもそも必要なのかという議論になるのではないかと危惧しています。
 今回は、『適切な』処分をして欲しいですね。

2015年7月28日 國村 年

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