事務所通信2015年10月

事務所通信

2015年10月号 『相続税の申告がすぐにできない?』

 今年は、おかげさまで相続税の申告業務のご依頼をたくさんいただきました。
 実際に相続税や贈与税の申告や試算などの業務を行っていると、すぐには正確な税額を算出できないケースに出くわすことが多々あります。
 そこで、今回は、『相続税の申告がすぐにできない?』について書きたいと思います。

1.相続税の申告がすぐにできないケース
 相続税の申告がすぐにできないケースとしては、以下のようなものが挙げられます。

 ①   不動産をお持ちの方で、その年の前半にお亡くなりになったケース 
 ②   非上場株式をお持ちの方で、その年の前半にお亡くなりになったケース 
 ③   相続税の申告書の様式が変わった年の前半にお亡くなりになったケース 

2. 不動産をお持ちの方で、その年の前半にお亡くなりになったケース
 基本的に、土地はお亡くなりになった年の『路線価』もしくは『固定資産税評価額』、家屋はお亡くなりになった年の『固定資産税評価額』をベースに評価を行います。
今年もそうでしたが、ここ数年、『路線価』は7月1日に国税庁から公表されています。
 また、『固定資産税評価額』は、お住まいの場所によって異なりますが、市町村(東京都23区内については特例で東京都)から5月頃に納税通知書が送られてきます(4月1日以降であれば市役所で縦覧できます)。

3. 非上場株式をお持ちの方で、その年の前半にお亡くなりになったケース
 非上場株式は、相続などで株式を取得した株主が、その株式を発行した会社の経営支配力を持っている同族株主か、それ以外の株主等かの区分によるのですが、純資産価額方式または類似業種比準方式というものによって評価するケースがあります。
 類似業種比準方式の場合、類似業種の株価・配当金額・利益金額・簿価純資産金額を用いて計算するのですが、これらは国税庁から公表されます。
 ただし、これらはすぐに公表されるわけではなく、例えば今年だと、1・2月分が6月1日、3・4月分が6月11日、5・6月分が8月14日、7・8月分が10月13日付けで発表されています(ホームページに公表されるのはこれから10日前後のち)。

4. 相続税の申告書の様式が変わった年の前半にお亡くなりになったケース
 今年がそうだったのですが、今年から相続税法が改正になり、相続税の申告書の様式が変わりました。
 この様式は、『路線価』と同じ7月1日に国税庁のホームページに掲載されました。
 税理士は申告用のソフトを使っていることが多いと思いますが、ベンダーの新様式への対応はここから数か月後になります。
 ちなみに、僕がNTTデータの『相続税の達人』を使っていますが、平成27年度版がリリースされたのは8月22日でした。

5.最後に
 心理的に早めに相続税の申告・納税をしたいと思っても、その年の前半にお亡くなりになると、路線価や固定資産税評価額や類似業種の株価などが分かるのが数か月後になるケースもあり、相続税の申告書の様式がまだ出ておらず、できないケースがあります。
 国税庁などには、もっと素早い対応をしてもらいたいですね。

2015年10月29日 國村 年

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