事務所通信2013年2月

事務所通信

2013年2月号 『平成25年度税制改正所得税編~』

 平成25年1月24日に、平成25年度税制改正大綱が公表されました。
 基礎控除額の見直し、税率構造の見直し、相続時精算課税制度の適用要件の見直し、小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の見直し、教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置など相続税・贈与税に関する改正に注目が集まっていますが、所得税にもあまり取り上げられていませんが影響の大きい改正があります。
 そこで、今回は、『平成25年度税制改正~所得税編~』について書きたいと思います。

1.所得税の最高税率の見直し(H27/1~)
 現行の所得税の税率構造に加えて、課税所得4,000万円超について45%の税率が設けられます。

 課税所得金額   現行税率   現行控除額   改正案税率   改正案控除額 
 ~195万円   5%   0円   5%   0円 
 195万円~330万円   10%   97,500円   10%   97,500円 
 330万円~695万円   20%   427,500円   20%   427,500円 
 695万円~900万円   23%   636,000円   23%   636,000円 
 900万円~1,800万円   33%   1,536,000円   33%   1,536,000円 
 1,800万円~4,000万円   40%   2,796,000円   40%   2,796,000円 
 4,000万円~   40%   2,796,000円   45%   4,796,000円 

 課税所得金額が4,000万円超の場合、増税となりますが、この影響を受ける方はごく僅かでしょう。

2.株式等に係る譲渡所得等の分離課税の改組
 株式等に係る譲渡所得等の分離課税について、上場株式等に係る譲渡所得等と非上場株式等に係る譲渡所得等を別々の分離課税制度とした上で、
 イ.特定公社債等及び上場株式等に係る譲渡所得等の分離課税
 ロ.一般公社債等及び非上場株式等に係る譲渡所得等の分離課税
とに改組されます。
 M&Aなどの際に、非上場株式の譲渡益(もしくは譲渡損)が生じた場合には、上場株式の譲渡損(もしくは譲渡益)を作って節税するということが行われてきましたが、封じられるようです。

3.非課税口座(日本版ISA)を開設することができる期間の延長
 非課税口座を開設することができる期間を、現行の平成26年1月1日から平成28年12月31日までを、平成26年1月1日から平成35年12月31日までとします。
 3年間だったのが、10年間になります。

4.上場株式等の配当等及び譲渡所得等の軽減税率の廃止
 上場株式等の配当等及び譲渡所得等に係る10%軽減税率(所得税7%、住民税3%)は、平成25年12月31日をもって廃止されます。
 優遇されていましたが、20%となります。金額は限定されますが、一方で、3.の日本版ISAが設けられます。

5.同族会社が発行した社債の利子でその同族会社の役員等が支払を受けるものの改正
 一般公社債等の利子等については、20%源泉分離課税を維持します。
 ただし、同族会社が発行した社債の利子でその同族会社の役員等が支払を受けるものは、総合課税の対象とします。
 貸付金の利息は雑所得として最高50%の税率、私募債の利息は20%の源泉分離課税であることを利用した節税が行われていましたが、封じられます。

6.住宅借入金等の所得税額の特別控除の適用期限の延長
 住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除について適用期限(平成25年12月31日)を平成29年12月31日まで4年延長するとともに、以下の措置を講じます。
イ.一般の住宅の場合

 居住年   借入限度額   控除率   各年の控除限度額   最大控除額 
 平成26年1月~3月   2千万円   1.0%   20万円   200万円 
 平成26年4月~平成29年12月   4千万円   1.0%   40万円   400万円 

ロ.認定住宅の場合

 居住年   借入限度額   控除率   各年の控除限度額   最大控除額 
 平成26年1月~3月   3千万円   1.0%   30万円   300万円 
 平成26年4月~平成29年12月   5千万円   1.0%   50万円   500万円 

 4年延長され、控除額も大きくなります。

7.相続財産に係る株式をその発行した非上場会社に譲渡した場合のみなし配当課税の特例の適用範囲の拡大(H27/1~)
 相続財産に係る株式をその発行した非上場会社に譲渡した場合のみなし配当課税の特例の適用対象者の範囲に、相続税法等において相続または遺贈により非上場株式を取得したものとみなされる個人を加えます。
 思いもよらず高額となるみなし配当ではなく、20%の税率で済む非上場株式の譲渡所得とされる特例の適用範囲が拡大されるということです。

8.最後に
 新聞や雑誌などでも相続税・贈与税の増税は頻繁に取り上げられていますが、所得税もこっそりと改正されているという感があります。
 特に、2.の上場株式と非上場株式の譲渡益と譲渡損の通算によって節税を図ること、5.の貸付金を私募債に変えることによって所得区分を変え税率差を利用して節税を図ることは、税理士として当然のアドバイスとして行われてきたものです。
 こういった改正が行われたりしますので、税制改正をウォッチし、一度行われた節税対策も定期的に見直す必要がありますね。

2013年2月27日 國村 年

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